Departure(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「え、旅行?」

 

学校から帰ると支度を始めていた奏に母の梓はきょとんとした顔をして聞いた。

 

「あ・・うん。 友達と、」

 

母の顔は見れなかった。

 

梓は少し考えた後

 

「そう。 体調崩さないようにね・・」

 

それだけ伝えた。

 

 

ピアノ漬けの毎日で旅行に行くような濃密な友人関係がないことを

 

離れて暮らしている母はわからないだろう、と思っていた。

 

それ以上詮索されなかったので、そのままスルーしようとすると

 

「・・そういうお友達は。 大切にね。 何よりも大切にするのよ、」

 

そう静かに言って母は微笑んだ。

 

「あ・・うん。」

 

その意味がわからずあいまいに頷いた。

 

 

 

「は? 旅行?」

 

ひなたが父にそれを告げられたのは出かける前日の土曜日の晩だった。

 

本当に何かと鋭い父に言い出すのには勇気がいった。

 

「うん・・チアの友達のおじいちゃんの別荘で。2年生10人で合宿・・」

 

ひとり遅い夕食を採る父の表情を何となくうかがってしまった。

 

しばしの沈黙。

 

そして。

 

「どこ?」

 

場所をいきなり聞かれてドキっとした。

 

「え、箱根・・」

 

そう答えると特に表情を変えることもなく

 

「ふーん、」

 

と流された。

 

自然だ!

 

ひなたは逆に驚いた。

 

「・・女子10人て。 もめそうやな~~、あー、ヤダヤダ。」

 

続けてそういう父に

 

「いや、みんな仲良しだよ? ほんと・・」

 

そう言って

 

 

よし! 自然に流せた!

 

 

 

 

「うん。 だいじょぶだった。 ちょっと緊張したけどね、」

 

ひなたはすぐに二階の納戸に行って奏に連絡をした。

 

「そう、」

 

奏もホッとした。

 

「じゃあ。 明日。 午前中部活終わったら一回家に帰るから。 また出る時LINEするね、」

 

もう楽しみ以外何物でもなかった。

 

「うん、」

 

奏もだんだんと楽しみになって来た。

 

 

 

 

そんな二人だったが。

 

 

 

「は・・。 39度2分・・?」

 

ゆうこは朝になって体温計を見て驚いた。

 

「へ・・? 熱・・?」

 

ひなたは真っ赤な顔で苦しそうに言った。

 

「熱どころか。 すっごい熱よ!」

 

ゆうこはやや慌てた。

 

「・・マジ・・?」

 

そして目を潤ませて母を見た・・

 

 

 

 

「は? インフル?」

 

志藤は思わず電話の声を張った。

 

「いちおう薬はもらってきたから、」

 

ゆうこはひなたを病院に連れて行ったあと夫に電話をした。

 

「・・そっか、」

 

志藤は小さな声でつぶやいた。

 

アリバイづくりも完璧、というところでまさかのひなたが・・

 

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