休み時間のたびにスマホを取り出して連絡を確認した。
授業が終わって部活に向かう前に確認すると。
『勝ったで。』
第一報は父からのLINEだった。
「え・・」
ひなたは小さな声を上げた。
『堂々と。 素晴らしい演奏やった。 自信も感じられるような余裕もあって。 優勝者の名前がコールされてもいつもみたいに恥ずかしそうに笑顔をみせるだけで、泣くこともない。 ほんまに立派やったで、』
続いて送られていた文面にじわじわと喜びが押し寄せる。
「部活行かねえの?」
そんなひなたの姿に不審がって佑真が声をかけてきた。
「佑真・・」
「え?」
「カナが。 優勝したよ・・」
そうつぶやくように言ったとたん涙がぽろぽろとこぼれてきた。
「マジ??」
佑真は思わずひなたのスマホを覗き込んだ。
ひなたは顔に手を当てて
「優勝、した・・」
もう一度そう言って涙をこぼした。
嬉しくて泣いているだけじゃないことが佑真にも伝わる。
それでも
「・・よかったな。 うん。 よかった。 な? よかったんだろ?」
佑真はわざと明るく言った。
ひなたは黙って何度も頷いた。
奏と出会って今日までのことを一瞬のうちに思い出していた。
たった3年前彼は世に出ることもなくただただピアノを弾き続ける毎日で。
きっと一生こうして生きるって思っていただろうに。
彼が何よりも大切にしてきたピアノ。
それで日本の頂点に立った。
**************************************
奏は校門を出て一度振り返った。
頑張ってこの学校に合格した時のことを思い出していた。
合格した時に泣いて喜んでくれたさくらのことも。
奏が決めたことなんだから。
いや、奏が決めなくちゃいけないことだよ。
これから歩いていく道は奏しかわからないんだから。
学校を辞めることをさくらに電話で伝えると、明るい声でそう言ってくれた。
もともとさくらに師事することになったのもこの学校に受かるためだった。
それを思うとその日々は無意味じゃなかったと思える。
「・・ありがとう、」
校舎に向かって小さくつぶやいた。
そして。奏は頂点に立ちます。そこからまた全てが動き出し・・
↑↑↑↑↑
読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!
で過去のお話を再掲しております。こちらもよろしくお願いします。