Departure(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「このたびは。 本当におめでとう。 この学校でも在学中にジャパコンで優勝する子はいなかったから、」

 

にこやかに校長からそう言われた。

 

「ありがとうございます、」

 

奏は静かに頭を下げた。

 

「・・高遠くんのためとわかっていても。 少し寂しいわね、」

 

担任の江藤も少ししんみりした。

 

「本当にお世話になりました。 ありがとうございました、」

 

奏の隣に座った母・梓が深くお辞儀をしたので、また慌てて奏も一緒に頭を下げた。

 

「・・決勝に。 制服で出てくれたのは。 嬉しかったよ、」

 

校長は目を細めた。

 

「あ、いえ・・」

 

奏は少し照れ臭く、窓の外に目をやった。

 

秋晴れの午後。

 

 

応接室のテーブルに置かれたトロフィーと楯が西陽で誇らしげに輝く。

 

 

ジャパンピアノコンクールで史上最年少優勝を果たしたのは昨日のことで。

 

それからマスコミからの取材やなにやらで非常に忙しかった。

 

決勝に合わせて日本に来ていた母・梓がマスコミをさばいたり、身の回りの世話をして

 

また妹の美音をNYで留守番させてしまっているのは申し訳なく思ったけれど、

 

本当に助かった、と奏は思っていた。

 

そして。

 

決勝の3日前、志藤からセリシールでレッスンを受けていた時のことを思い出していた。

 

*****************************************

 

「は? 制服で??」

 

志藤は思わず聞き返してしまった。

 

「はい。 制服で。 いいです。」

 

奏は落ち着き払っていた。

 

「いや。 決勝やん・・ スーツ、色々作ってもらってたくさんあるやん・・。 制服て、」

 

「関係ないです。 スーツであろうと制服であろうと。 ・・藝高の生徒として。 コンクールの決勝に出ます、」

 

奏は迷いのない瞳でまっすぐに志藤を見た。

 

 

「やっぱり。 辞めるんか、」

 

志藤は確かめるように奏に言った。

 

「・・はい。 帰り道は作りたくないって思ってます。 先輩でも海外留学をしても籍を残していく人はいます。 せっかく入った学校だし、日本の音高の中ではトップの学校ですけど。 でも。 これからはもっともっと上だけ見て歩いて行きたいので。」

 

初めて会った頃は

 

しっかりしていても、まだまだ気弱な所もあったのに。

 

志藤はそんな風に思っていた。

 

 

このジャパコンが終わったらウィーンへの留学が決まっている。

 

出発まではもう半月くらいしかなく、慌ただしく日本を後にすることになる。

 

奏は藝高を辞めてウィーンの音楽院に行く決意をした。

 

そんな思いを抱きながらの

 

制服で決勝を弾く

 

決意をした。

 

奏はジャパコンで見事優勝、そしていよいよウィーンへと旅立とうとしています・・

 

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