「助かるとは思うんですけど。 のちのち自分で頑張らないといけないわけで。 来てもらっても、って。」
さくらは少し顔をしかめた。
「さくらさんはこれまで親御さんに頼らずに頑張ってきたと思うんですけど。 でも。 産後3週間は身体を大事にしないといけないって昔からいいます。 もちろんぼくも手伝いますけど・・ もう年末のイベントなどで出張も多くなるし、さくらさん一人では、」
葦切はコーヒーを一口飲んだ。
「無駄にこの年まで一人でやってきてないし。 幸い仕事も休めてるんですから、」
「・・・・」
葦切は腕組みをして考え込んでいた。
「南ちゃんも。 手伝いに来てくれるって言ってます。 まあ彼女も忙しいですけどー・・。 真尋さんちの子を赤ちゃんの時から見てるから~なんて言ってました、」
さくらは葦切の表情とは裏腹に明るく笑った。
「は・・育休?」
葦切は思わず声を張ってしまった。
「ウチの社でも。 夫の育休を設けることになったらしくて。 社長から葦切さんをテストケースとして取ってもらったらどうか、と。、」
斯波はいつものように淡々と言った。
「いや・・いくらなんでも。 これから年末イベントで大忙しだっていうのに。 とても、」
葦切はそんな話を切り出されて驚いた。
「正直。それは・・あります。 でもー・・ 誰かがやらないと。 続く人たちもハードルが高くなってしまいます。 ・・テストケースと言われたら、こちらでなんとかやりくりして、」
そういう斯波の顔色を窺ってしまった。
どう見ても。
忙しいのに勘弁してほしい
という顔色だった。
今はどこの部署でも人手が足りない。
事業部でも同じこと。
自分が育休を取るなんてこれっぽっちも考えていなかった。
さくらのサポートは身内に頼むしかないと思っていた。
「・・ぼくから。 社長にお話してみます。 ちょっと・・今の段階では無理なんじゃないか、と、」
葦切の言葉に斯波が一瞬ホッとした表情になったのを見逃さなかった。
「・・わかりました、」
しかし上司として自分が無理強いをすることはできない斯波は冷静に頷いた。
「いやいや。 これからはね。 男性もどんどん育休を取るべきでしょう。 あたしが真太郎に提案したんやから、」
社長室に南もやって来た。
「もう奥さんが一人で子育てするって時代でもないですし。 世の中もそういう風潮になってきてます。 もしモデルケースとして葦切さんが取ってくれたら・・来春からの導入を考えていたんですけど、」
真太郎も神妙に言った。
葦切は非常に困ってしまった。
ホクトでも「夫の育休」が提言されるようになりましたが・・
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