Stem(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「いやあ、おれは。 税理士には向いてないと思うよ。 たまたま事務所の手伝いしてただけで。」

 

成もジョッキのビールを飲みほした。

 

「音楽が・・お好きだったからですか、」

 

柚はそっとつぶやくように言った。

 

「・・うん。 そうかなあ。 前の音楽事務所辞めた後も・・結局、音楽の仕事しかしたくないなって思ってたところもあるし。 学校の先生の資格も持ってるんだけどー・・。 できればピアノの仕事がいいかなって思って。 おれも・・社長もそうなんだけど。 やっぱ一流の演奏家を目指してたんであって。 でもそんなのほんの一握りの人間しかなれない。 自分はそうなれなかったから・・そういう人とかかわりたいっていうのかな。 才能がある人を何とか支えていきたいって気持ちはあるよ、」

 

成は自分で言って、設楽といた日々を思い出す。

 

少なくともあの頃はさくらと自分の向くベクトルは同じだった。

 

そして、彼女が今、奏に対して同じような熱量で接していることにやっぱり自分は惹かれたのかもしれない。

 

「高遠くん、ですか?」

 

柚は言った。

 

「社長は奏くんと出会って、子供たちへのピアノ指導の夢をさらに抱いて。 会社興して。 そしてピアノレッスンだけじゃなくて、クラシック音楽を世間の人たち一人でも多く触れてほしいって思いは一緒かな、」

 

成はビールのお代わりをジョッキを掲げて頼んだ。

 

「篠宮社長と二人三脚なんですね、」

 

柚の言葉に

 

「や、あの人と二人三脚は無理かな・・。 めっちゃ自分勝手で人のペースとか考えないし。 二人三脚しても絶対三歩で一緒にコケちゃうタイプ、」

 

そう返して笑った。

 

柚も笑ってしまった。

 

そのあともピアノの話や音楽の話や神崎事務所の話で盛り上がった。

 

 

聞き上手で、品性があって

 

教養もあって、趣味の話も合う

 

 

成は柚と会話をしながらも、彼女への好印象が止められなかった。

 

「あ、そうだ、」

 

思い出して自分のカバンから封筒を取り出した。

 

「今度。 ウチの会社が企画したクラシックのミニコンサートがあるんですよ。 子供たちにたくさん来てもらえるようにチケット代もギリギリ安くして。普段のクラシックコンサートは小さな子供が行かれないのもありますから。 楽しく音楽に触れられるような・・。 でもアーティストさんたちは一流の人たちを招いてます。 良かったらいらっしゃいませんか。」

 

彼女にチケットを差し出した。

 

「え・・でも、」

 

遠慮をする彼女に

 

「お世話になる『先生』ですから。 都合がよければ。」

 

笑顔を向けた。

 

 

彼女と話してみるともうその好印象を止められない成。 思わずイベントのチケットを彼女に渡してしまいますが・・

 

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斯波と萌香のその後のお話です。短編になってます。毎朝7時ごろ更新していますのでよろしくお願いします!

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『My sweet home~恋のカタチ。9』--mint  green--

 

 

 

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