おはなしは前回のReveal myself(アメンバー限定記事)からの続きです。
奏と神宮寺綾の競演舞台が近づいております・・
「ねえ。 始まるよ。 見に行かない?」
「ああ、あの子ね。 見たい見たい。」
北都フィルの女性楽団員がザワついていた。
ホクトが経営するDECホールで特別公演のリハが始まった。
今回は世界的ヴァイオリニスト神宮寺綾を迎えるということで、運営側も非常に力が入ったものだった。
「・・よろしくお願いします、」
奏は客席に座る関係者たちに丁寧に何度もお辞儀をした。
そして後からやって来た綾にさらに深くお辞儀をした。
「髪型変わってるー。 この前より大人っぽくなったよね。」
「もうさ、見た目がズルいよね。 ヤバイでしょ、これは。」
志藤は後ろでヒソヒソ話す女子楽団員たちの噂話が聴こえてきて、ひとつ小さなため息をついて足を組んでものすごい険しい表情で壇上を見やっていた。
いつもは特に洒落っ気ないスタイルなのに、この日は
白Tシャツに七分袖丈のピンクの切り替えのシャツ、ネイビーのパンツを合わせてきた。
それを見て志藤はまた一層表情が険しくなった。
「そのくらい明るい色の方がいいわよ、」
日頃から普段のファッションも気を遣え、という綾は満足そうに奏に言った。
「ありがとうございます、」
奏も嬉しそうに微笑んだ。
めっちゃ見たことあるシャツ!
志藤は数日前のことを思い出していた。
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「はー、疲れた。 あ、パパ。 ただいま・・」
ひなたが塾から帰ってきた。
「・・お帰り。 いつもこんなに遅いんか、」
もう9時半を回っていた。
「数学のわかんないトコ教わってて。 今日はちょっと遅くなっちゃった、」
ひなたはピンクの七分袖丈のシャツを羽織っていた。
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柄違いのペアルック!!
志藤は奏のファッションを見て奥歯をギシギシ言わせていた。
ペアルックとか!
死語!
二人がお互いに忙しいことは百も承知。
奏はもちろん、ひなたも部活やら塾やらでそうそう会う暇もないこともわかっている。
おそろいのシャツ買う暇とか?
ある?
それ着てデートとか。
する暇はあるんか?
そんなことよりも練習に集中しなくてはならないのだが、志藤は邪念が頭を渦巻くばかりだった。
綾のヴァイオリンで「クロイツェル」が始まった。
ピンスポがそれぞれを照らす。
とりあえず
世界の神宮寺
は、何の心配もない。
志藤は後ろでピアノを弾く奏をジッと見つめていた。
芸能社に勤めているので
イケメンなんか腐るほど見ている。
イケメンでも演技が棒とか。
歌がヘタクソとか。
生意気で態度が悪いタレントもいたりする中で。
スポットライトに照らされた奏のその表情の美しさ。
造り物のようなその横顔の造形。
神宮寺氏に
色気がない
みたいなことを言われたらしいけど。
あの目。
志藤は改めて少し驚いた。
奏と神宮寺綾の競演舞台が近づきます。志藤はひなたと奏の『関係』の変化にいち早く気づき…
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