Points and lines(5) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

志藤の存在に気付いた彼女は

 

「あ、初めまして。 私、このイベントの企画会社に勤めております、坂口しのぶと申します。」

 

と名刺を手渡した。

 

「あ・・っと、 北都エンターテイメントの志藤です、」

 

志藤も内ポケットから名刺を取り出して彼女に手渡す。

 

「あの・・。 この人はお母さんの友達で・・。」

 

奏は何と説明していいかわからない様子で口ごもる。

 

彼女の名刺を見ると、静岡県浜松市となっている。

 

「浜松・・」

 

「お母さんが。 浜松に来ることになった・・手助け?って言うんですかね。 そのきっかけになった友達の、人です。」

 

奏の説明にハッとした。

 

 

奏の母・梓は妊娠をしてひとり日本に戻ってきたものの

 

お腹の赤ん坊の父親の名前を頑なに明かさなかったことで父親から勘当され

 

友人のツテで浜松に住むことになった、という話は聞いた。

 

 

「私と梓は東京の音高の同級生で。 親友でした。 私は地元が浜松だったので、こっちの音大に進んだんですけど・・。」

 

すると奏はコソっと

 

「・・この志藤さんは。 ぼくらの事情を知っている人なので・・」

 

と彼女に囁いた。

 

「あ、そうなんですか。 とにかく梓は行くあてもなくて本当に困っていたので・・。 市内で叔父がレストランを手広くやっていたものですから、彼女を紹介して。 そこで住み込みで働けるように頼みました。 叔父も叔母も彼女の境遇を知って、協力してくれて・・」

 

「そう、なんですか・・」

 

「今回、ピアノ部門での優勝者の清永さんが出られないということで。 私、ホントに個人的なんですけど高遠奏くんはどうかって社長に推して。 出てもらうことにしました。 陰ながらずっと奏のことは応援していたので・・」

 

しのぶは懐かしむような笑顔で奏を見やった。

 

「そうだったんだ・・。 ありがとうございます、」

 

奏は深々と頭を下げた。

 

「ホント。 大人っぽくなったね・・」

 

そう言われて恥ずかしそうにうつむいた。

 

 

志藤も浜松にいた頃の奏のことは一切知らず

 

とにかく母子二人、細々と頑張って生きてきたことは想像ついたけれど

 

その時の話はひなたもあまり聞いたことがない、と言っていた。

 

それを知るこの彼女の出現に少し戸惑っているようにも思えた。

 

「これからリハ? 頑張ってね。」

 

しのぶは奏の背中をぽんと叩いた。

 

「ハイ、」

 

「じゃあ、」

 

そう言って立ち去ってしまった。

 

 

奏はしのぶの後姿をずっと見送っていた。

 

 

奏母子が浜松で暮らしていた頃にお世話になった母の友人・しのぶと出逢い、奏の記憶は一気に巻き戻ります・・

 

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