Points and lines(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

時は。

 

春休みに入る2週間ほど前。

 

「は、京都?」

 

さくらは顔を上げた。

 

「うん。 主催者側から奏に出てくれませんか、って。」

 

志藤はメールをプリントアウトした紙をさくらに差し出した。

 

京都で行われる

 

京都国際音楽祭

 

というイベントだった。

 

「は? 今? こんなに押し迫って? なんで?」

 

「この主催者の企画会社はジャパコンの主催に噛んでる。 海外から有名アーティスト呼んで来たり、日本国内の有名アーティストを招いたり。 もう今年で15回目かな。 まあ・・ピアノコンクールの優勝者の清永がスケジュールを理由に出演を断って来たみたいで。 他の演奏者も都合つかなかったんやろ。 で、奏にって。」

 

「はあ? 清永に断られたってんで奏に?」

 

さくらはあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「しゃあないやろ。 奏は本選最下位やったし・・。 出られるだけラッキーって思わな。」

 

「そうだけど! みんなに断られてってのがさ・・、」

 

「でも。 ジャパコン関係者がたくさん来る。 ここで顔を売ることは悪いことやない。 もちろん去年本選に残ってる奏のことはみんなわかってるけど。 こっちサイドでコネクション作りたいやん?」

 

志藤はにやっと笑った。

 

「・・こっちサイド・・?」

 

「さくらちゃんは遠出は控えた方がいいから。 おれがついていく、」

 

「志藤さんが?」

 

「おれも現場から離れて久しいし、関係者もずいぶん顔ぶれが変わってしまって。 こういうのはな、裏方のコネクションが大事やし、」

 

「なにその『裏事情』っぽい感じ・・」

 

「コンクールって。 そういうもんやろ? 奏は仕事のオファーを控えてるし、あんまりこういう外界との繋がりもないし。 いい機会やと思うで、」

 

「志藤さん、仕事の方大丈夫なの? 本来の仕事、」

 

「常務の権限でいくらでもどうにでもできる。 おれは『社命』で奏を任されてるんやで? そのくらい・・」

 

志藤はややふんぞり返って言った。

 

「ホントはあたしが行くところなのに・・」

 

「妊娠初期は無理はアカンて。 ま、ここはおれに任せといて。」

 

 

志藤は非常にイキイキとしていた。

 

常務取締役になり、こういう現場の仕事がほとんどなくなってきた、ということは前にボヤいていた。

 

会社の頭脳として必要な人ではあるけれど

 

こうやって音楽の現場が何より好きなんだな、というのはさくらにも伝わってきた。

 

奏のため、が一番なのだろうけれど

 

実際、自分が楽しいんじゃ、と思うのだがそれを言うとめちゃくちゃ反論されそうなので

 

さくらは黙っていた。

 

 

さて、2週間前ほどに話は遡ります。京都の国際音楽祭に奏が招待されたことからお話が始まります…

 

 

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