昼休みの社内はなんとなく人の密度が低かった。
制服姿がウロウロしていると、色んな人が行き交う芸能社とはいえちょっと目立つ。
「芸能部は4階だよ、」
事業部から出てきた結城は、違和感満載の彼女にそう声をかけた。、
「あ・・えっと。 芸能部じゃなくって・・」
それに返していると、
「あれ？ ひなた？」
南が通りかかった。
「あ、みーちゃん、」
ひなたは小さく手を振った。
「何してんの、」
「今日、終業式だったの。 パパがいたらランチごちそうしてもらおうかなーって、」
「パパ？」
結城は首を傾げた。
「この前、葦切さんとさくらちゃんの結婚パーティーにいたやん。志藤ちゃんちの娘。」
南が紹介した。
「え、そうでした？ なんかあの時、仮装パーティーになっちゃってカオスだったから・・、あ、車いすで来てたっけ？」
結城は記憶を手繰り寄せた。
「こんにちわ。 えっと。 事業部の人・・ですか？」
物おじしないひなたは初対面の結城にも笑顔で聞いた。
「・・うん。 え、てっきり。 タレントの子かと思って、」
結城はまじまじとひなたを見た。
「めっちゃカワイイやろ？ 志藤ちゃんの自慢の娘なの。 ねー、」
「ねー、」
二人は顔を見合わせて笑った。
「志藤ちゃん、今日はずっと外出でいないよ。」
南は思い出してそう言った。
「えー？ そうなの？ 最近は少しエラくなってあんまり外出もないって言ってたのに、」
その時
「何とかなんない？ ちょっとだけだから、」
事業部から玉田と夏希が出てきた。
「ほんっと。 申し訳ないんですけど、無理ですよ～。 昨日までレックスに詰めっぱなしで、デスクワークがてんこ盛りなんですよお・・」
「真緒さんも外出になっちゃったし、ほんっと困ってるんだよ・・。 ユーリも他の仕事あるし、」
玉田が夏希を拝み倒していた。
「どしたの？」
南が声をかけた。
「今日からオケの練習。 押し迫ってるんで1週間詰めに入ってるんですよ・・。 食事もケータリング用意してるんですけど。 その時に世話をしてくれる学生のバイトの子がインフルになっちゃって急に来れなくなって。 しかも。 今日から神宮寺さんも午後に来ることになってて・・」
玉田が困り果てた様子で言った。
「あたしも助けてあげたいのはヤマヤマなんですけど！ ほんっと仕事たまっちゃって・・。 斯波さんにも怒られちゃうし、」
夏希も困り果てていた。
「今日の今日でバイト調達も難しいでしょう。 加瀬さん、なんとかしてやったら、」
結城もそう言ったが
「え～～～？」
夏希は壁に顔を押し当ててまだ抵抗していた。
その時
「それ。 食事の時のお手伝いだけでいいんですか？ あたし、やりましょうか。」
ひなたが言った。
「え？ あ? ひなたちゃん？」
玉田がようやくひなたに気づいた。
「そのくらいなら。 あたしでもできそう、」
「あんた脚、だいじょぶなん？」
南は心配したが、
「もう杖なくてもだいじょぶだし。 無理しなければ少し歩いた方がいいってお医者さんが。 部活も当分休むことになっちゃったし。 明日から春休みだし、大丈夫です、」
救いの手が現れて、
「ほんと？ やってくれる？ 助かる～～～」
玉田は大きな息をついた。
終業式。ひなたはふらっと事業部にやってきましたがそこで意外な展開に・・
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