先にリハビリを終えたひなたは一足先に帰って行った。
丹波はなんとなく落ち込む中、リハビリを続けた。
少しずつではあるけれど、手首の可動域は広がっている。
確かにそれは実感できた。
選考会まであと10日。
病院の出口の自動ドアを出ると
ひなたが数人の高校の制服を着た男女の友人らしき人間に囲まれて、スマホをお互い見合いながら笑っているところに出くわした。
・・・若いなあ。
ほんの3年くらい前なのに、きゃぴきゃぴと笑いあう彼らをなんとなく見つめてしまった。
「えー、すごい! 新しいユニ、めっちゃカッコイイ!」
「でしょ? 色も明るくなったし。 さっきみんなで初めて着てみたの。」
「茉依ちゃん、ちょっと腕太くなったんじゃない? ヤバいよ、」
「上半身も鍛えてるからだよー。 失礼な、」
「宮園も下半身ヤバくね?」
「これも! 鍛えてるの!」
やっぱりひなたばかりが視界に入ってきてしまう。
嬉しそうに友達と笑いあう彼女が。
「じゃ、ひなたも頑張ってね! ひなたのユニもあるんだから。」
「うん。」
「杖、取れたなら。 少しずつ進んでるだろうから。 焦るなよ、」
「・・うん、」
友達とは病院の門の前でバイバイをして別れた。
友達の後ろ姿が見えなくなるまでひなたは見送った。
丹波はそーっと彼女の後ろから近付いた。
そして。
ひなたがジャケットの袖口でそっと顔を拭う仕草をしたのが見えた。
・・・え、
丹波は思わず立ち止まってしまった。
少しだけ背中が震えて。
泣いてる・・?
そのまま近づけないままいると、ふっとひなたが後ろを振り返った。
「あ・・」
目に一杯涙を溜めた彼女が。
ズギューーーーーーン!!
心臓が何かに撃ち抜かれたように。
丹波は思わず自分の胸を抑えた。
「た、タンタン・・。 も、終わったの?」
ひなたは慌ててまた背を向けてタオルで顔を拭った。
「か、花粉かな・・。 なんか、目が・・」
何も言っていないのに言い訳をする彼女がもういじらしいどころじゃなくて。
いつもいつも明るくて前向きな彼女しか知らなかった。
2度も手術をして、部活にも出れず。
黙々とリハビリを続け。
ああやって友達と会って、嬉しい気持ちと寂しい気持ちが入り混じっていることが
テレパシーのように伝わってきてしまった。
「さ、寒いね。 なんか・・あったかいものでも飲んでいかない?」
何も言ってあげられることがなくて。
そんな風に誘ってしまった。
「え、」
ひなたが少し驚いたように振り返ったので
「や・・! ご、ごめん。 今日・・そんな寒くないか。」
慌てて打ち消した。
「・・あたし。 キャラメルフラペチーノのホットが好きなんです・・」
ひなたはぽつりと言った。
いつも明るいひなたの涙を見てしまった丹波。 彼女に心射抜かれて・・
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