「梓さんが・・。 香港へ?」
さくらは目をぱちくりした。
「今まで先生に任せきりで。 本当に・・申し訳ありませんでした。 私もどこまでお役に立てるかわかりませんが。 啓輔さんも理解してくれています。 ミオには申し訳ないと思いますが、奏がもう少し大人になるまで。 私も頑張らせて下さい。」
梓は深々とさくらにお辞儀をした。
「え、」
「奏にも黙って来てしまいました。 あの子も気を遣いすぎなので。 もう突然やって来た方がいいんじゃないかって、」
それには
「奏くんのお母さんなら。 申し分ないんじゃないか。 安心して任せられる、」
小野塚も明るい声で歩み寄ってきた。
「奏くんもお母さんなら、きっと安心ですよ。」
小和もさくらを励ますように言った。
「・・でも、」
「あ、あと。 使ったもので申し訳ないんですけど。 少し早いでしょうか。 いろいろと赤ちゃんグッズも。 ミオがもう使えなくなってしまったものも・・。 勝手ですが送る手配をしてしまいました。 なんか。 先生に赤ちゃんができたって聞いて。 あたし、自分のことのように嬉しくて。 うれしくて、」
梓の笑顔に
さくらはまたほろっときてしまった。
「あ~~~、もうまた泣く、」
小野塚は慌ててティッシュを差し出した。
「・・だって。 なんか・・。 梓さんからそんな風に言われて。 うれしくて、」
シクシク、どころかワンワン泣き出した彼女にみんな少し呆れて笑った。
喜んで、いいんだ。
初めてそう思えた。
しかし。
「え、どういうこと?」
この日、ずっと北都邸でピアノを弾いていた奏は突然現れた母にもう驚くばかりだった。
「だから。 香港へは。 私がついていきます。」
「いや。 ミオ置いてきて。 それでおれについてくるって? いや、そんな子供じゃないし!」
「子供とか。 そういうことじゃなくて。 海外のコンクールなんて初めてだし。 あなた一人じゃやっぱり心配って先生の気持ちはわかるから。私も心配だし。 ミオは大丈夫。 ほら、NYで会ったエマ。 覚えてる? 彼女があずかってくれるって言うから。 啓輔さんもぜひ行ってあげてほしいって。」
「そんなの。 かわいそうだよ、」
「かわいそうとか。 そういうことじゃなくて。 私。 奏に何一つお母さんらしいことしてあげられなくて。 いつもいつも先生や志藤さんに甘えて。 ずっと気にしてた。 もちろん奏はこれから大人になれば・・私のことなんか必要なくなるってわかってるけど。 でも。 私が。 奏にしてあげたいの。」
奏はそういう母に
「ミオには淋しい思いをさせないでって。 言ったじゃん。 少しの間でも・・やっぱり小さなミオを置いてなんて、」
反発するように横を向いてしまった。
「先生も。 安心して下さったわ。 本当にあなたのことが心配だったみたいで。 来てよかったって・・、」
横を向いた奏を追いかけるように回り込んだ。
幼い妹を置いて自分のためにやって来た母に奏は不満そうですが・・
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