Take a chance(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

スクリャービン エチュードOp.8-12 が

 

ホール中をその波で飲み込んでいくかのように。

 

志藤はジッと動かず

 

腕組みをして真っすぐにステージの奏を見つめていた。

 

ffの部分は嵐のように

 

ppの部分は凪いだ海の表面のように

 

彼の身体からその音が出てくるようだった。

 

 

志藤が奏に関わるようになって初めてのコンクール。

 

さくらは正直、奏が毎日変わって行くような気がした。

 

何が、というのはうまく説明できないけれど

 

スゴ腕の演出家のように、役者の演技の余計な部分をそぎ落とし、最後はピッカピカに磨きあげていく。

 

 

一度志藤が

 

真尋はいちいち反抗するし、そんなに器用な方じゃなかったから

 

仕上がるまで、まあ時間かかったけど。

 

奏は素直やからみるみる仕上がっていく

 

 

と言っていた。

 

さくらはそれをしみじみと感じ入っていた。

 

 

つづくシューベルトの即興曲D899

 

『悲愴』よりも静かに進行する曲だけにメリハリが難しい。

 

クレッシェンドで盛り上がっていき、自然とデクレッシェンドで静かに戻る。

 

その表現も15歳とは思えなかった。

 

会場も奏の演奏にシンと水を打ったような静けさになった。

 

 

「彼。 仙台国際で審査員奨励賞だったよね、」

 

「・・そう、ですね。 中2の時に毎朝コンクールに出るまで全く無名でしたよ。 海外で学んでいたわけではないようです。」

 

「見た目も。 ピアノも。 存在感がすごいな、」

 

「・・彼。 設楽啓輔の『義理の息子』らしいですよ、」

 

「え、本当ですか?」

 

「詳しいことはわからないのですが、彼の母親が設楽と『再婚』したとか。 設楽が結婚したことも公に発表されてないですからね・・」

 

 

審査員席だけが

 

ややザワついていた。

 

 

演奏を終えるとまるでコンサートのように拍手が沸いた。

 

奏はニッコリ笑って姿勢よくお辞儀をした。

 

 

 

「いちいち。 派手なんだよな、」

 

その後、控室でスマホをいじっていた時に話しかけられて顔を上げた。

 

清永蒼太がつまらなそうな顔で腕組みをして立っている。

 

「あ・・、ども、」

 

あの『恐竜博』以来だった。

 

「来る時、エントランスで女性ファンと一緒に写真撮ってたろ、」

 

「え? ああ。 ・・なんか。 一緒に写真撮って下さいって言われたので、」

 

物理的にそういう奏に

 

「まだまだ無冠なのに、ファンがついてるとか? なんか腹立つんですけど、」

 

一方的につっかかられて

 

奏は小さくため息をついた。

 

 

そしてジャパコンの3次予選が始まりました・・

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