Summer break(3) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「ほらもー。 泣くなって、」

 

まだ鼻をすすっているひなたに言った。

 

「だって、家でメソメソしてたら。 パパに怒られちゃうもん、」

 

ひなたは小さな声で言った。

 

そんな風に言う彼女がちょっとだけかわいそうになって。

 

奏がホクトと正式に契約を交わして、志藤が本格的に奏のこれからのプロデュースに関与することになった。

 

奏は日本で終わらせたくない

 

彼はきっぱりそう言った。

 

娘と離ればなれになろうとも、奏がピアニストとして世界に出ていく手助けをする。

 

一流になる、ということはそんなに甘いことではない。

 

ひなたももちろんそれはわかっているけれど、やっぱり離れてしまうと寂しくて泣いたりしてしまう。

 

「でも。奏の前で泣かなかったじゃん。」

 

さくらはひなたの頭を撫でた。

 

「カナが笑顔で行かれなくなっちゃう…。 だから。 我慢した、」

 

「だいじょうぶ。 奏がどんなにひなたのことを大好きか。 あたしもわかってるから。 」

 

「・・それは。 わかってる、」

 

「わかってるんかい、」

 

少し絆されそうだったさくらはひなたの頭を小突いた。

 

 

 

「声、出てないよ! ひなた、もっと声出して!」

 

気持ちを切り替えようと思ったけれど、やっぱり少し引きずってしまっていた。

 

「ハイ!」

 

1年生で大会のサポートメンバーに選ばれたひなたはさらに厳しい練習をしていた。

 

「ほら、床に落ちた汗。 ちゃんと拭いて。 滑って転んだら怪我するから、」

 

コーチに言われてひなたはモップを持ってきて床を拭いた。

 

「んじゃあ。 フォーメーションやってこうか。」

 

集中、集中。

 

ひなたは自分に言い聞かせた。

 

部活が終わればいつもの通り、みんなでワイワイとおしゃべりをしながら帰る。

 

「いいよなー。 佑真は毎日うなぎだろ?」

 

「食わねえよ。 おれうなぎそんなに好きじゃねえもん、」

 

「えー、だって長男でしょ? いつかは継がなくちゃ、」

 

「おれはヤだ。 弟に継がせる。」

 

「とか言って。 10年後に会ったら絶対うなぎ屋やってそうだよな、」

 

ラグビー部の佑真と奨もいつも一緒だった。

 

佑真はふっと我に返り

 

「・・なんか。 影薄いぞ、」

 

うしろを歩いていたひなたに振り返った。

 

「え? あ? あたし? そお? 別にいつも通りの濃さだと思うよ、」

 

ひなたは普通にそう言ったが、佑真にはいつもと違う気がしていた。

 

「今度親父がみんなにうなぎごちそうしてくれるって言ってたから。 来週あたり来いよ。」

 

佑真がみんなに言うと

 

「うっそー! マジ太っ腹! 楽しみー!」

 

「ひなたもうなぎ好き?」

 

玲那に言われて

 

「え? なに?」

 

また上の空だった。

 

「もー。 聞いてなかったの? 佑真のお父さん、うなぎごちそうしてくれるって、」

 

「あー、そうなんだ。 うん、大好き。」

 

いつもの笑顔ではあったけれど。

 

部活に励むひなたでしたが、やっぱり奏のことが気になって…

 

 

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