Liebesträume(14) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

演奏が始まってからずっと

 

設楽は全く動くことなく

 

 

怖いくらいのまなざしでピアノを弾く真尋を見つめていた。

 

 

 

別にここへ来る義理も

 

 

 

何もなかったのに。

 

 

 

ぼんやりとそう思う。

 

 

 

 

ウィーンでくすぶっていた頃のことは

 

 

 

本当は今の輝かしい地位を得た自分には忘れたい過去のこと。

 

 

 

思い出したりすることなんか

 

 

 

避けて生きてきた気がする。

 

 

 

思い出したくなんか。

 

 

 

 

自分の膝に置いた手に思わず力が入った。

 

 

 

 

 

それぞれが

 

 

 

 

それぞれの想いを抱き

 

 

そのピアノを聴き入って。

 

 

 

そして

 

 

 

真尋は最後にあの

 

 

『展覧会の絵 キエフの大門』

 

 

を演奏した。

 

 

 

 

彼のピアノを聴きに行くようになってから

 

 

 

 

どんどん変わっていったあの人を

 

 

止められるはずもなかった。

 

 

 

梓はどんな可能性を今考えたとしても

 

 

 

きっとこの現在に繋がっていた、と思った。

 

 

 

こらえきれずバッグからハンカチを取り出して両目に押し当てた。

 

 

 

 

おかあさん・・・

 

 

 

 

奏はそんな母の背中を見て

 

 

 

その涙がなんなのか。

 

 

推し量っていた。

 

 

 

思い出に浸るためだけのピアノじゃなかった。

 

 

 

ああ

 

 

これでよかったのだ

 

 

と、改めて思うことができたという安堵感が梓の心を巡った。

 

 

 

 

最後の音が落ちた時。

 

 

 

 

一瞬の静寂のあと

 

 

一番最初に拍手をしたのは

 

 

設楽だった。

 

 

 

その後にそこにいたみんなが精いっぱいの拍手を送った。

 

 

 

真尋はようやくいつものような底抜けに明るい笑顔を見せた。

 

 

 

そして

 

 

 

 

一番前の席に座った設楽に自然にスッと握手を求めた。

 

 

 

 

少し驚いたような顔をした彼だったが

 

 

 

すぐに自分の右手を出した。

 

 

 

あのころは

 

 

 

こうやって向き合う事なんかなかった二人。

 

 

 

音楽は人々の記憶で

 

 

 

つながる。

 

 

全ての思いを乗せて、真尋はピアノを弾き終えました…

 

 


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