Liebesträume(12) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

妊娠したことを告げずに彼と別れて

 

学校もやめて日本に帰った。

 

 

 

 

どうしても父親の名前を言わないのであれば

 

 

 

 

ここから出て行け

 

 

 

昔気質で頑固な父は

 

 

 

子供の父親の名前を頑なに告げることを拒んだ私にそう言った。

 

 

 

親に勘当されても

 

 

 

あの人のことは口にしないと決めた。

 

 

ひとりでこの子を育てると決めた。

 

 

 

まだ

 

 

 

21だった。

 

 

 

知り合いのつてだけで静岡までやってきて

 

 

 

周囲の人に助けられながら子供を産んで

 

 

必死に育てた。

 

 

お世話になっていたレストランのオーナーの家にピアノがあって

 

 

オーナーの娘さんやその友達に休みの日にはピアノを教えた。

 

 

赤ん坊のころからそんな中にいた奏は自然とピアノの前に座るようになっていた。

 

 

 

奏がピアノを弾いてくれるのがうれしくて。

 

 

 

もう二度と会わないであろうあの人にその影を重ねて

 

 

いつしか

 

 

こんなにも成長するだなんてその頃は想像もできなかった。

 

 

どんどんとピアノがうまくなっていく奏を見るうちに

 

 

怖い気持ちが沸いてきて

 

 

どうしよう

 

 

と思っても、後戻りできなかった。

 

 

 

曲は続いて

 

 

 

ベートーベンの『悲愴』の第二楽章に突然入った。

 

 

 

たった

 

 

 

15年ほど前のことなのに

 

 

 

世紀を超えたくらいの時間に感じる。

 

 

 

 

 

うまくなったなァ。

 

 

 

 

 

 

志藤は理屈抜きにつくづく真尋のピアノを聴いてそう思う。

 

 

 

 

 

プロのピアニストに今さら思う事でもないが

 

 

 

真尋に初めて出会った頃のことを思いだしてしまう。

 

 

特別うまいってわけでもなかったのに

 

 

心を奪われて

 

 

もう

 

 

なにが、とかそういうことではない『何か』が自分を突き動かすような力があった。

 

 

 

普段の真尋から想像がつかないほどの経験があっただろうけど

 

 

 

自分が彼と出会う前からの真尋が目に浮かぶ。

 

 

もう真尋は立派にピアニストとして世界でも通用するようになって

 

 

自分の力なんかこれっぽっちも必要としないのだから

 

 

 

もう手放す時かもしれない

 

 

 

 

と何度思ったことだろう。

 

 

 

だけど

 

 

何の因果か

 

 

ここまできて。

 

 

 

志藤は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

そして志藤も真尋のこれまでのことを思い出し…

 

 

 

 


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