Overflow(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「でも。」


拓馬はため息と一緒に声を発した。



「仕事は辞めたくないけど。 ・・・しーちゃんのことも諦めたくないんだ。」



詩織はゆっくりと彼に顔を向けた。



「両方・・・手に入れることなんか絶対にできないと思ってた。 もし、友永家に婿に入って白川の名前を捨てることも・・・親父とオフクロに顔向けできないって思ってたし。 でも・・・欲張りだよな。 おれは、両方手に入れたいって思った。 そのために、おれはもっともっと頑張る。 おれをここまでにしてくれた親のために頑張りたいし、これからはしーちゃんのためにも頑張りたい。」



彼のいつもの優しい笑顔だった。



「・・・拓馬さん、」



小さな声は風に流されそうだった。




いつの間に


陽は沈んでいた。



拓馬はジャケットのポケットから何かを取り出して、彼女に差し出した。


思わず手を出したが


その上に載せられたのは


丸い小さなグラスで作られたキャンドルだった。



戸惑っていると


拓馬はまたポケットをまさぐってマッチを取り出し、風をよけながらそれに火をつけた。



小さな灯火がゆらゆらと揺れる。



「・・・きれい、」



ほんのりとラベンダーの香りがした。



「オヤジがね、オフクロにプロポーズした時。 小さな木彫りのアヒルをプレゼントしたんだって。 もし年を取って大工をやめなくちゃならなくなったら、こうして木彫りの人形を作って浅草の仲見世に置いてもらって売るからって言ったんだって。 ・・・まあ・・おれが稼がなくても、しーちゃんは困らないかもしれないけど・・・・」



拓馬は冗談を言ったのだが


詩織はそのキャンドルを手にして


もう涙が止まらなかった。



「・・・たくさんの覚悟をした。 そうしようと思えたのは。 しーちゃんとどうしても結婚をしたかったから。 幸せになりたかったから。 おれの幸せは・・・オヤジやオフクロの幸せなんだって・・・。」



目を開けられなかった。



自分がもう子供のように無防備に泣いていることがわかって


恥ずかしかった。



「・・・今度はね。 おれからプロポーズする。 どちらかが・・・天国に行くまで。 ずっと一緒にいよう。」



父の死を覚悟しながらも


強く健気に寄り添う母のこと



自分の命を知りながらも


黙って家族を思う父。



二人のような


夫婦になりたい。




そんな思いから出た言葉だった。



「いや。 天国に行っても。 ずうっと一緒にいよう。」




そのキャンドルの炎は


小さいけれど


風にも負けずにその光を放ち続け



燃え上がる想いとは少し違うけれど


彼の気持ちそのもののような気がした。



「・・・これは。 拓馬さんが・・・作ってくれたんですね。」



詩織はようやく言葉を発することができた。



「・・うん。 子供のころ近所に住んでた美大に通うお姉ちゃんが作り方を教えてくれたんだ。 アロマオイルはとっさに考えて入れたんだけど、」



よく見ると


そのキャンドルは



桜色からラベンダー色までグラデーションになっていた。



やっぱり


彼が大好きで大好きでたまらない。




ついに今度は拓馬からのプロポーズとなりました。 そのキャンドルの灯りのように温かい言葉で・・・



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