Overflow(12) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

こんなに静かに過ごした日々はなかったように思える。



拓馬からのメールを受け取ったのは


大晦日の前日の夜9時ごろだった。




『明日。 16時に浅草の水上バス乗り場に来て欲しい。』



たったこれだけの文章。



詩織は少しだけ緊張したけれど


もう


彼からどんな答えが返ってきてもいい、と覚悟はできていた。



私たちの未来は


神様しか知らない。




大晦日の水上バス乗り場は混んでいた。


詩織は細かい場所まで拓馬から連絡をもらっていなかったので、人ごみできょろきょろと彼を探した。


するとぽんと背中を叩かれた。



振り返ると拓馬が笑ってチケットを二枚かざしている。




「けっこう大晦日は混むんだよ。 夜が一番混むからね。 夕方のに乗ろうと思って。」


「・・水上バスは・・初めて乗ります、」


「ほんと? おれは子供のころからけっこう友達と乗ったりしてた。 別にどこ行くってわけでもないけど乗ってるだけで楽しかったし、」



つきあっていたころと同じようで


それでいて二人の間に微妙な距離があった。



船が出発した。


中の座席はほぼ埋まっていて、二人は外に出て立った。


夕陽が傾いて


川面がオレンジ色に輝く。



「・・寒くない?」


「大丈夫です、」


詩織は風に乱れそうな髪を押さえて笑った。



「オヤジ、昨日退院してさ、」


「え、本当ですか。 お正月はおうちで過ごせるんですね・・良かった、」


「まあ・・・そんなにも良くなってないんだけど。 オヤジが帰りたいって言うから。 また年明けに入院なんだけど、」


あまりいい状態でないことがわかり詩織は明るく言ってしまったことを後悔した。


「・・すみません、」


すぐにしょんぼりする彼女に


「いや、いいんだよ。 別に気にすることじゃない。」


拓馬は明るくそう言った。



水上バスは東京湾に向う。


スピードが加速して風が少し強くなった。



「ずうっと。 あれから・・・いろんなこと考えた、」


手すりに両肘をかけて拓馬は真っ直ぐに前を見た。



「・・・考えたけど。 どうしても、おれ・・・大工の仕事、やめらんない。」



そして詩織を見た。



「オヤジを喜ばせたい、とかじゃなく。 この仕事を一生かけて・・やっていきたいから。 これしかできない、じゃなくて。 おれが生きる道そのものだと思った。」



詩織はぎゅっと左手を胸の前で握った。



傾いた夕陽は


あっという間に沈みそうになり


空のほとんどが紫色になっていった。


拓馬は大晦日の日に詩織を呼び出します。 そして…



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