翌日
父が仕事から戻家に戻ると、拓馬が居間にいた。
ぎょっとしたあと、フンといったふうに無視して彼の前を通り過ぎようとした。
「おれ。 詩織さんのお母さんとおばあちゃんに・・・つきあいを許してほしいってお願いに行った。」
拓馬はあれからまともに父と口を利くのも初めてだった。
父は足を止めた。
「・・・つきあいを許してもらった。 あとはおれが責任を持ってオヤジを説得するって言ったから。」
背中で聞いていた父は
「勝手に決めるな。 おれは・・・・何があっても絶対に許さねえからな。」
低い声で振りかえりもせずにそう言った。
「おれが彼女に対して本気だって気持ち・・・・向こうのお母さんはわかってくれた。 浮ついた気持ちなんかじゃない。 ・・・彼女と・・結婚を前提としたつきあいをしたい。」
拓馬はきちんと居住まいを正してハッキリとよく通る声で父に言った。
「・・・・こんにちわ・・・」
ゆうこが夕飯の買い物を済ませてななみとこころを連れて実家に寄った。
引き戸を閉めると同時に
「・・・・・偉そうなことを言うなっ!!!」
父の大声が聴こえて、驚いた。
こころは驚いて両手で耳をふさいでしまった。
ななみは心配そうにゆうこを見た。
「おまえはバカだと思ってたけどな。 ほんっとに大バカ野郎だ!!! あんな家の娘と結婚なんて笑わせるんじゃねえ! 」
父は初めて拓馬に振り返った。
「確かにウチとは全くつり合いなんか取れないだろうけど。 結婚は本人同士の問題だ。 おれは自分の仕事に誇りを持ってるし、恥ずかしいことなんか何一つない!」
拓馬も負けずに大声を出してしまった。
台所から母も心配そうにのぞきこんでいる。
ゆうこたちも居間に入れずに様子をうかがってしまった。
「おまえが恥ずかしくなくても!! 世間さまはそう思わねえ! だいたいあの娘との結婚って言ったら。 おまえは・・・婿養子に出るつもりか!」
父の怒りのメーターはどんどん上がって来た。
拓馬はどのみちいつかはその話をしなくてはならないと思っていたので、
「・・・もし。 彼女の家が許してくれるのなら。 そうしたいと思ってる、」
と初めてその気持ちをハッキリと口にした。
母も、そしてゆうこもハッとして顔を上げた。
「・・なんだと・・・」
父の顔がさらに怒りで震えた。
拓馬は父の前に正座をして
「・・オヤジやオフクロには申し訳ないと思うけど! でも・・・おれはどうしても彼女と一緒になりたいんだ! そのためには、おれが白川の家を出るしかない!」
必死に訴えた。
「・・おめえ・・・・。 正気か・・!!」
父は拓馬に掴みかかろうとした。
その時だった。
婿養子のことまで考えていると知った父は逆上し・・・・
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします