「あ、たーくん!」
ななみは白川家の居間で本を読んでいたが、外から戻った拓馬に気づいて嬉しそうに立ち上がった。
「おう。 ななみ。 なんか背え伸びたなあ。」
拓馬も嬉しそうにななみの頭を撫でた。
「でも、まだクラスで一番チビなの・・・。 このまえもよその人に『小学校3年生?』とか言われて・・・。 もうすぐ6年生なのに、」
ななみはちょっと膨れた。
「女の子はちっこいのがカワイイって。」
「え~? そうかな~・・・。」
「そうそう。 おれはちっちゃいななみが好きだから、」
拓馬の笑顔にななみの表情は花が咲いたように明るくなった。
「今日は? こんな時間にどうしたの?」
拓馬は時計を見て言った。
もう夕方の6時を指している。
「塾から帰って来たの。 このまえおばあちゃんちにカーデガンを忘れちゃったから取りに寄ったの、」
「塾? ななみ、塾なんかに行ってるの?」
そこに母がやって来た。
「ななみはさあ、学校も休みがちでしょう? 近所に個人塾があるからってこの前から通うことにしたんだって、」
「あー、そうなんだ・・。 でも、塾なんか行ったらまた遅くなったりするだろ? 大丈夫なのか?」
「うん。 ここのところあんまり発作も起きなくなったから、」
ななみは屈託なく笑った。
志藤家の次女・ななみは生まれた時から喘息で身体も弱く
学校も休みがちだった。
1年に1度は激しい発作で入院をしたりして
今もみんなを心配させていた。
「でもね。 ななみはすっごくデキがいいんですって! その塾の先生もびっくりしててね。 私立中学を受験してみたらって言ってくれて、」
母は自分の娘でもあるまいにやや自慢げにそう言った。
「へ~~~、すげえじゃん。」
そこに長男・和馬の妻である優花子が拓馬にお茶を持ってきた。
「でも。 ななみちゃんは遠くの学校に通ったりするのも大変だからって・・・ゆうこさんたちは考えてないようなんだけど。 お義母さんの自慢なんですよね~、」
と、母を見て笑った。
「ま。 兄妹たちの中でもゆうこはデキが良かったからねー。 幸太郎ちゃんだって国立大学出てるし。 ひなたはほんっと勉強できないってゆうこも嘆いてたけど、ななみはしっかり親の血を引いてるね、」
「バババカ・・・・」
拓馬は頬杖をついて呆れて言った。
「じゃあ、帰るね。」
ななみはカーデガンを持って立ちあがった。
「あ、おれ送ってくよ。」
拓馬も立ちあがる。
「え、いいよ・・・すぐそこなのに。」
「暗いから。 危ないだろ、」
「じゃあついでにモーリスの散歩の頼むね。 今日は莉子ちゃんも部活で遅いって言ってたから、」
母に余計な用事を言い遣って、ちょっと迷惑そうに眉間にしわを寄せた。
「しょーがねえなあ・・・・。」
と、そこにあったリードを手にすると、いきなりどこからかモーリスがすっ飛んできて拓馬に縋りついて尻尾を振った。
「おまえは・・・エスパーか?」
拓馬の言葉にみんな笑った。
現在の白川家です。 part4の頃よりだいぶ変わっちゃってますけども。
ゆうこの母は長男・和馬夫婦と一緒に住むようになりました・・・
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