Serenade(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・・この間。 たくさんのことが変わっていったんやな、」


静香はつぶやいた。



「父は亡くなったが、母は健在で。 再婚したらどうやって・・・ずっと勧められて。 でも、もうぼくは結婚はする気はなかったから。 どうしても・・ずっと静香のことが心の奥底にあって。 どうしているのかって・・いつも気になっていた。」



津村は言葉に力を込めた。



「祐ちゃんは。 まだ若いねんから。 これからまだまだ家庭を持って・・・お母さんはきっと跡取りの心配をしてはるんやろ。 『椿屋』みたいなおっきな店、継いでくれる子供がおらへんと困ってしまうやろし、」



「静香・・・」



「もう祐ちゃんのことは思い出にしたいねん。 萌香も・・・こうしてダンナもいるし。 子供もいる。 あたしが心配することはもうひとつもない。 だからもう・・・謝ったり後悔したりはしないでほしい。」



しっかりとした口調で


彼にキッパリと言った。



そして



「もう、帰るわ。 あたしもこうして祐ちゃんに言いたいこと言えて。 良かった。」


静香は素早く帰り支度を始めて


もう逃げ出したいように席を立った。



「静香、」


津村は立ち上がった。



「・・ほんまに。 会えてよかった。 ありがと、」


彼女は少女のような笑顔でそう言って部屋を出て行ってしまった。



「お母さん、」


萌香は慌てて母を追いかけた。



個室を出たところで母の前に回り込んで


「ほんまにええのん? このまま・・・また別れても、」


津村を母に会わせたくないと思っていたのに


いざ、こうなってみると


あまりに母が彼に対してあっさりとしていて、慌ててしまう。



「・・ええもなにも。 終わったことやん。 あんたを父親のない子供にしてしまったことは申し訳ないけど。 あたしとあの人では、もう何も起こらん。 どうにもならん。 あの頃はまだあたしも子供で、好きな人との間にどうにもならへんもんがあるなんて思いもせえへんかった。 祐ちゃんのせいであたしがあんなことになったとも思ってへんし、恨んでもない。 ・・ほんまにもう思い出やん、」


母は萌香から目をそらしながら一気にそう言った。



当時の母がどれだけのつらい思いをしたのか


萌香にさえもわからないことで


母の本当の気持ちも


すぐには理解できなかった。



「・・・じゃあ、」


母は萌香の脇をすり抜けて行ってしまった。




斯波はうな垂れる津村を気遣いながら


「・・・・また、やり直したいって・・思っていますか。」


ポツリとそう言った。


「え・・・・」


ぼうっとしながら彼は斯波に視線をやった。



「津村さんはそう思っているんじゃないかと・・思えて。」



彼はズバリと言われて狼狽したように



「・・それは・・・」


言葉が続かなかった。



「萌香は。 おれに自分の過去を必死に隠していました。 自分の過去を思って・・・おれとはつきあえないって、思っていたようです。 正直・・・ショックでしたけど。 本当のことを知ったときは。 でも・・・。 いくら考えても考えても。 おれは彼女しか考えられなかった。 自分が好きになったのは自分が知っている彼女だけでしたから。それは裏も表もないと思いましたから。」



無口な斯波が


澱みなく津村に語りかけた。




萌香の母は津村とのことは過去にしたいようですが・・・



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