南さんが言ったとおり
本当に
今まで何にもしないで
愛されてここまで来た人なんだろうなあ・・・
怜子は子供のようにカレーを頬張る泉川を見た。
「ほんと。 美味しい、」
怜子も顔をほころばせた。
「やっぱり一人で食べるよりうまいよね。」
「ええ。 高校を出て東京で一人暮らしをはじめたころは・・毎日寂しくて泣いていました、」
彼女が泣いていた、と聞くだけで胸が痛い。
「そうかあ・・・」
「でも。 慣れですけどね。」
「レイコ先生はちゃーんと勉強して、仕事して。 それでもちゃんと自分の暮らしも頑張ってたんだよねー・・・。 なんかスゴイな、」
「みんなそのくらいはしてます、」
彼女の笑顔を見て
「あ~~っと・・・。 なんか『レイコ先生』って・・ちょっと隔たり感じるかなあ・・・」
泉川はそんなことを言い出した。
「え?」
「も、ちょっと・・・。 近づいてもいい?」
いたずらっぽく笑った。
「近づくって、」
「レイコちゃん、じゃ・・ちょっと子供みたいかなあ。 も・・・『レイコ』なんてとっても呼べないし。」
また一人の世界に入っていた彼に
「なんでも・・・いいですけど、」
怜子はひきつって笑った。
「じゃあ! 『レイちゃん』でいい??」
すごい名案を思いついたようにそう言ったので
「あ・・・はあ。 家族はそう呼んでますから・・・。 別に、」
すごく冷めた言葉で返してしまった。
「え! いいの? もう、なんっか嬉しいなあ、」
気持ちのメーターが上がったのがモロわかりで、思わず笑ってしまった。
「・・構いません。 じゃあ、あたしは『貴彦さん』で、いいですか?」
と言ったとたん、泉川はスプーンを握ったままイスから転げ落ちてしまった。
「ど、どうしたんですか???」
怜子は慌てて立ち上がった。
「ん・・・も~~~~~、シアワセ・・・・・。」
座っていられないほど
『萌え』てしまった・・・。
外でのデートよりも
すごくすごく楽しくて
普通の生活の中に彼女がいることが何より嬉しい。
これが
幸せなんだなあ・・・・・
「んじゃあ。 送るね。」
泉川は彼女が洗い物を終えたのを見計らって車のキーを取り出した。
「え、」
手を拭きながら少し意外そうな顔をした。
「ちゃんと休んで。 また明日から仕事、頑張って。 おれもめっちゃ元気出たし、」
とニッコリ笑った。
もーどうしていいかわかんないほど、シアワセすぎます・・
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