「あ~~、なんかコーヒーひとつ入れるのに手間取っちゃうし、」
ようやく泉川がコーヒーを持ってテーブルに運んできたが
「・・あれ・・?」
怜子はソファにもたれかかって、スーニャを抱きしめたまま眠っていた。
疲れてるんだなあ・・・
すやすやと気持ちよさそうに眠っている彼女の寝顔を見入ってしまった。
怜子ははっと目が覚めた。
あ・・れ・・?
慌てて起きると、身体に毛布が掛かっている。
そこに
「あ、起きた? 今、買い物に行ってて。」
泉川がスーパーの袋を手にちょうど戻って来た。
「あ・・・ごめんなさい。 あたし、寝ちゃって。」
時計を見たらもう7時だった。
「いいからいいから。 もちょっと寝てて。 おれ、メシ作っちゃおうかな~~って!」
満面の笑みで言う彼に正直引いてしまった。
「えっ・・・何を?」
「カレーくらいならできそうかなって。 いちおう材料も買ってきたけど、」
怜子は立ち上がって彼が買ってきた代物を覗き込んだ。
するとローストビーフ用の高級牛肉が出てきて
「これはもったいないです・・・。 カレー用の肉でよかったのに。」
思わず言ってしまった。
「え~、なんかよくわかんなくて・・・」
その後、ダイコンまで出てきた。
「え、なんでダイコン????」
「あれ? 入ってなかったっけ? カレーに。」
大真面目に言う彼がおかしくて
「・・・あたしも手伝いますから。 一緒に作りましょう、」
笑いを堪えながらキッチンに立った。
「ええっと・・・。 あれ? メシってどうやって炊くんだっけ???」
「え、それは炊飯ジャーで・・・」
怜子はそれを探した。
そして
一度も使ってないであろう、箱に入った炊飯ジャーが見つかった。
「ゴハン、炊いたこともなかったんですねえ・・・。 で、お米は、」
少々呆れながら言うと
「は? コメ???」
泉川は固まった。
「・・・え? ないとか・・・」
怜子はそれ以上に固まった。
それから米を買いに行ったり、二人で一緒にカレーを作ったりで
なんとか食事にありつけたのは9時を回っていた。
「でも! うまそう! いっただきま~~す!」
泉川は嬉しそうに食べ始めた。
「え! マジ、めっちゃ美味い!!」
一口食べて、少々オーバーに言った。
怜子はそんな彼を優しく微笑んで見つめた。
怜子が少しでも休めるように泉川なりに努力をしています・・・
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