わりと空気が読めない子みたいだった。
泉川の下がりっぱなしのテンションに全く気付かないように
天真爛漫にゴルフを続けていた。
「え~~、どーしよう・・」
「この距離なら7番くらいでいいんじゃない? 寄せて行く気持ちで、」
二人が会話をしながらゴルフをする姿を父親たちは満足そうに見ていた。
・・ったく忌々しい・・
それは重々承知していたが、仕方なくこの日だけ我慢しようと思い堪えた。
ようやくラウンドを終えて、
これで帰れる・・・
と思ったのもつかの間。
「じゃあ。 我々はこれから『大事な話』があって、ホテルのレストランに行くから。 おまえ、綾香さんを送ってさしあげなさい。」
父から思わぬことを言われた。
「は????」
思わず二度見してしまった。
「悪いねえ。 ほんと世間知らずで、貴彦くんみたいに仕事をバリバリしてる人には本当に退屈な娘だと思うけど、」
木下弁護士からも言われて
「や・・・あの、」
もう断ることもできなかった。
目の前には夢見るようなウルウルした目で泉川を見つめる綾香の姿が・・・
愛車のジャガーの助手席に彼女を乗せて車を走らせた。
「すみません・・なんか・・・ご迷惑だったんじゃ、」
さすがに綾香はおそるおそる泉川に言った。
「・・いえ。 別に。 どうせ車ですし・・・」
何だかそんな彼女にイラっとしてしまった。
「だいたい。 今日のゴルフだって父から誰と一緒とかそういうのは一切なくて。 来てみたら見合いまがいのことになってて。 ハメられたって感じだし、」
思わずブスっとしてそう言った。
「ぼくは結婚なんか考えてるわけじゃないし。 今は別に女性とそういう気持ちでつきあう気持ちもない。 新しい部署に移って仕事を頑張りたいし、まだまだいろんなこともしてみたい。 父や母は家庭を持って一人前って気持ちがあるみたいでぼくが独身なことが世間体が悪いと思っているだけなんです。 あなただってそんなやっつけの気持ちで結婚なんかしたくないでしょう、」
いつもの調子でよく回る口でそう言った。
そして横の彼女を信号待ちの間にふっと見て
驚いた。
ついついイラついて綾香にグチってしまう泉川でしたが・・・
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