「彼女は・・誰よりもあなたのことを思っています。 それは間違いない。 そうやってあなたの目を覚まさせることができたのも。 南の力なんですから。」
志藤は真太郎に力強くそう言った。
「・・わかっています、」
真太郎は小さく頷いた。
南は先に『新月』に来ていた。
「ごめん。 遅くなって、」
真太郎は30分ほど遅れてやって来た。
「・・ううん、」
テーブルの上にはコップに注がれたグラスのビールだけだった。
「何か、食べないの?」
真太郎が言うと、
「あたしはいい。 ・・・話、先にしたいから。」
南はおもむろにバッグから封筒を取り出し、その中に入っている折りたたまれた紙を取り出した。
不思議そうな顔をしている真太郎の目の前にそれを広げて見せた。
「え・・・・」
目を見張った。
それは紛れもない
『離婚届』
であったから。
「今朝、それ役所で取ってきてん。 だから明日まで待ってって言ったの。」
南はなんでもないかのように言った。
真太郎は震える手でそれを見た。
もう南の名前が記されていて、判もついてあった。
「・・これは・・・」
ようやく彼女に顔を上げた。
「『離婚届』やん。 書いてあるし、」
と、指差したがそんな冗談ぽく言ってくる彼女の気持ちが全くわからなかった。
「もう、 真太郎にはあたしは必要ないねん、」
南は彼を真っ直ぐに見つめた。
真太郎は声をも震わせて
「・・・本当に・・おれ、どうかしてた。 あの彼女の家に転がり込むだなんて。 今、どうやってもあの時の気持ちが説明できない。 もう、謝っても謝りきれないって・・思うけど! でも!」
潤んだ目で南を見た。
「あたしだって。 めっちゃ考えた。 考えて、考えて。 こうすることが一番やって・・・思った。真太郎は・・どんなことがあってもあたしのところしか帰るところがないって思ってた。 真太郎がほんまに真面目にあたしのことを愛してくれて、あたししか・・いないって・・・ずっと思ってた。」
「当たり前だ! 今だって・・・今だって、南だけなのに!」
真太郎は思わずその『離婚届』を握りつぶしてしまった。
「だけど。 真太郎は・・本当につらいときに・・・あたしのところに帰ってきてくれへんかった・・・。 もうそれが全てや。 」
南はポツリとそう言った。
南は驚きの『離婚届』を真太郎につきつけます。 さあ、どうなる!???
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