Only one love(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

有吏はその空気に


「あっ! す、すみません!!」

適当な発言をしたことを後悔した。



しかし

「そうか。 ファンクラブか・・」

斯波は何か光を見つけたような気がした。


「『北都フィルオーケストラ会員』なんてカタいよな。 もっと楽団員たちの紹介とかもクローズアップして。 いい演奏家たちはたくさんいるんだから、会報ももっともっとくだけた感じで。 そーだな。 携帯サイトのファンクラブとかもいいよな。 末端を増やすこともできるし。 会費を払えない中学生や高校生たちも気軽に参加できるような・・。 今までインターネットのサイトはあったけど。」


斯波はどんどんアイデイアが浮かんできた。




「そうですね。 今や若い人たちは携帯ですから。 ワンセグなんかも普及して・・もっと手軽に公演なんかの映像をダウンロードしてもらえるような感じもいいですね、」

玉田も目を輝かせた。



斯波は有吏を見て

「おまえ、こーゆーの詳しい? ファンクラブとかの。」

と言った。


「え・・まあ、高校生くらいのときはいくつか掛け持ちで入ったりしてたりとかも・・」


「資料。 集めて。 んで。 ファンクラブに正式な名前も付けたい。」



「はい!」

有吏は笑顔で頷いた。



「そう。 なんだか楽しそうね。」


家に帰って萌香にその話をした。

部署が変わってから、会社ではゆっくり話もできなくなりこうして家で仕事の話をすることが増えた。




「うん。 なんかやっぱ・・年の差なのか。 おれや玉田では思いつかないようなことだったかなあって、」

斯波はふっと笑った。


「そうね。 今は携帯やパソコンが普及していろんな宣伝の仕方があるもの。」


「新しいファンクラブが出来上がったら・・・瀬能に任せてみようかと思って。」


「え、ほんまに?」


「やっぱ感性がおれらと違うし。 今うちの会員の一番多い年齢層は30代。  もっと若い子たちにも気軽にクラシックを聴いて欲しいし。」


「きっと張り切って頑張るわね。」

萌香はクスっと笑った。




「そーいや。 風邪、治ったかな。」

斯波はボソっと言った。


「え?」


「瀬能のねーちゃん。 この前熱出して仕事休んでたから。」


「ホンマ? なら食事とか持っていったのに、」


「萌にうつったら大変だろ・・。 なんか。 無理しちゃってさ。 ・・志藤さんに彼女の新しい仕事、つてつけてもらってるんだけど。」


「え、」


「もう年齢的にキャバクラは苦しいって本人も言ってたし。 かといって借金返さないとだし。」


「そう、」



「必死でさ。 弟のために・・・」

ため息をつく斯波の横顔を萌香はジッと見た。




「え? なに?」

少しぎょっとした。



そして何も言われてもないのに

「別に何でもないから! ただ! まだ・・若いのに自分のことを構わずに必死にやってっから・・」

言い訳をしてしまった。



萌香はそんな斯波にクスっと笑って、

「何も言うてへんのに、」

と言うと、斯波は気まずそうに口を噤んだ。




「あたしも。 あの人たちのことは心から応援してあげたい気持ちです。 特にあゆみさんは本当に苦労をしてきたでしょうから。 瀬能くんがお姉さんを守ってあげられるようになるくらいまでは、何か助けてあげられたらなって。 ほんと思いますから。 隣も1年じゃなくて、落ち着くまでもっともっといてもらってもいいと思ってる、」

萌香は優しくそう言った。


「萌・・」

そっと彼女の肩を抱き寄せて、もう片方の手で彼女のおなかに手をやった。



「もう時々動くのがわかるの。 ああ、元気なんだなあって。 嬉しくて、」

萌香は彼に寄り添うように静かにそう言った。




つらい思いを乗り越えて

結ばれたおれたちは


同じようにつらい思いを乗り越えようとしている人間を

何とか助けてやりたいって

お互いに自然にそう思える。



「ありがと・・・。」

斯波は萌香を抱きしめた。




2日ほど寝込んで、あゆみはようやく仕事に復帰できそうだった。

午前中、洗濯をしていると携帯が鳴る。


「あ、カンナちゃん? おれ。 北都の志藤やけど~~~、」


「え、あ・・・。はあ、」

もちろん覚えていた。


「今日さあ、ちょっと時間ある? ほんのちょっとでええねん。」


あの人懐っこい声で強引にそう言った。


斯波は事業部のことも、隣の瀬能姉弟のことも気にかけます・・


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