Star gather(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「すっごい迫力がありましたねー。 あたし、クラシックコンサートは初めてだったんですけど。」



コンサートを終えて、ゆうこは興奮冷めやらぬようにホールを出た。


「生で聴くと、格別ですよね。 身体に音が伝わってくる、」

真太郎も笑顔だった。



そして時計を見て、

「少し、なにか食べていきましょう。 おなかが空いて・・」


そういう真太郎に

「あ・・ハイ。」

ゆうこはまたドキンとした。




ランチは一緒に採ることはあったが、夜の食事は初めてだった。




それもまた

デートっぽい雰囲気で、ゆうこは一人舞い上がる。




「白川さんは・・どーゆー食事が好きなんですか?」

改まって訊かれて、


「・・・な、何でも。 何でも好きです、あたしは。」

元気に答えてしまって、自分で赤面した。



「そういえば・・ずうっと前に白川さんの家に行かせてもらった時。 お母さんの料理、すごく美味しかったですもんね。 ああいう美味しい料理を食べて育った人は好き嫌いなんかなさそうですよね。」

真太郎はふっと微笑む。



「いえ。ほんっと・・・もう、普通のお母さんの料理ですから・・」


「ウチの母は料理が全然ダメですから。 ぼくはずっとお手伝いさんの料理で育ったようなもので。 たまに母が作るともう・・大変なことになってしまって。」


「大変なこと?」


「仕度に3時間くらいかかるんです。」



ゆうこは思わず吹き出してしまった。



「もうおなかが空いて、どこかに食べに行きたくなるんですけど。 父はそれでもじーっと待つんです。 料理ができあがるまで、ずっと。」


「・・社長が、」

ゆうこは意外そうにそう言った。


「やっとできあがってもね。 正直、美味しくなくて。 それでも・・父は黙って全部食べます。 いっつも・・すごいなあって。」




いつもいつも

怖い顔で仕事をしている北都からは想像がつかない。



「奥さまのことを、大切にしてらっしゃるんでしょうね。」


「・・まあ、」

真太郎は照れて笑った。





「和食でよかったんですか?」

二人は和食のダイニングの店に入った。



ほんのちょっと

和食が好きだ、と言ったらあっさりと和食にしよう、ということになってしまった。

大学生の若い男性には物足りないんじゃないか、とゆうこは気軽に言ってしまったことを後悔した。



「ぼくも和食は好きですから。 一人だったら絶対に食べないし、」




こうやってさりげなく

気を遣ってくれる。


彼のそういうところも

好きだった。




ゆうこはそこにおいてあった箸置きを見て、

「わあ。 かわいい!」

思わず手に取った。


さやいんげんをモチーフにした陶器製のものだった。


「白川さんが好きそうですね、」

真太郎も笑った。


「・・和食器も大好きなんです。 地味だけど、こうやって中にワンポイント絵が入っていたりだとか・・。そーゆーのがグっとくるっていうか。」

ゆうこは食器を手にとって、嬉しそうに言った。



「すごく・・感受性が強いんですね、」


「え?」


「人が気づかないところにも、きちんと感動できるって言うか。 ・・きっと父はあなたのそういうところが気に入って秘書にしたのかもしれませんね、」


「・・そんな、」

恥ずかしくなってうつむいた。



「それも、才能です。」

真太郎は本当に優しくそう言った。




「白川さんは飲めるんだから。 飲んでください。」

真太郎はゆうこのグラスにビールを注いだ。


「や、ほんっと・・ひとりで飲むなんて、恥ずかしいし・・あたしもそんなには、」

ゆうこがどぎまぎした。




ほんとは

日本酒5合くらいは・・ぜんぜん平気なんだけど。


24の女子としては。

それもどーかと思うので。




「じゃあ、ぼくもちょっとだけ。」

真太郎は自分のグラスにビールを注いだ。




本当に

こうやって

向かい合っているだけで。

ずっとこのまま時間が止まってしまえばいいのに。




ゆうこは思った。




どうにもならないとわかっていても、ゆうこはつかの間の幸せを満喫していました。

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