八神は
もう
口が開きっぱなし状態になってしまった。
「・・慎吾にもまだ言ってなくって。 なんか照れちゃって、いつ言おうかなァって・・」
美咲は照れてちょっと顔を隠すようにした。
「この幸せな場所で、みなさんにご報告しよっかなあって。 ちょっとサプライズしちゃいました、」
美咲はチラっと八神を見ると、
あまりに
驚いた顔の見本になっていた
その顔にぶっと吹き出してしまった。
「な・・なに? おまえ・・」
八神はようやく言葉を発することができた。
真尋のピアノで感動して涙を流しまくっていたが
一気に引っ込むほど
それはオドロキで。
南はまっさきに
「美咲ちゃん! おめでとー!! そっかあ・・よかったやんか~~!!」
美咲のところに駆け寄って彼女に抱きついて喜んだ。
「・・ありがとうございます。 あたしもなんだか信じられなくって、」
「あ~!! もう、うれしー!! また家族が増えるんだあ~!」
南は美咲に抱きつきながらはしゃいでしまった。
その傍らで八神はまだボーっとしていた。
え?
なに?
美咲に子供???
って
おれの子供だよな??
いちいち確認しないと
とても信じられなかった。
「ちょっと八神~! 間抜けな顔してないで喜びなさいよ~!!」
南に背中を叩かれた。
「えっ・・・って、え~~!??」
八神のリアクションにみんなは大ウケだった。
「慎吾ってば・・もっと喜んでよ。子供欲しいって言ってたくせに・・」
美咲はちょっと膨れる。
「・・って! なんでおれに言わないわけ~? ここでサプライズにする意味がわからないっ!」
彼のうろたえぶりに驚いていた周囲も笑ってしまった。
「え~、だって~。 おもしろそうだったんだもん、」
美咲はケロっとして言った。
「って、それもドッキリじゃねーだろーなあ・・・」
「ドッキリじゃないよ! ほんとに赤ちゃんができたの!」
美咲は人目も憚らず八神に抱きついた。
みんなから一斉に冷やかしの声が飛ぶ。
「ば、バカっ、」
八神は周囲を気にして真っ赤になってしまった。
「やったじゃーん! 八神~!! おまえもパパかよ~!」
真尋も飛びついてきて八神の頭を撫でた。
パパ・・・
おれが?
ほんとに?
じわじわとおなかの底がこそばゆいような
妙な嬉しさがわきあがってくる。
おれたちの
子供・・・。
「そうだよ、慎吾もパパなんだから。 ほんと頑張ってね、」
美咲はいたずらっぽく笑って八神の鼻をぎゅっとつまんだ。
朝
曇りがちだった天気は
いつの間にか
春の日差しが降り注いでいた。
庭に出て
みんなで記念撮影をした。
「あ、襟が、」
萌香は斯波のスーツの襟元を直してやった。
「八神も・・・お嫁さんもらって。 パパになって。 一安心だね~。」
南は隣に並んだ志藤にボソっと言った。
「ん~。 ま、末っ子が結婚したみたいな感じかな~。」
志藤もため息混じりに言う。
「あとは・・・。 あの二人だね、」
南はコソっと前にいる斯波と萌香を指差して志藤に耳打ちをした。
「・・あの二人かあ・・」
こいつらは
八神みたいに
一筋縄じゃあいかないやろけどなあ。
志藤はそれでも
優しい目で時折
目を合わせて見つめあう、萌香と斯波の姿を
じっと見た。
みなさま、長い間お読み頂いてありがとうございました! PartⅡ、いちおう終了です(o^-')b