「風、薫る」第98回
第20週「家族のかたち」
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(長屋の路地で、向かいのおばあ
さんと遊んでいる、登勢の子供達)
直美) こんにちは。
2人) こんにちは。
女性) こんにちは。
直美) ごめんください。
恵風看護婦会の大家です。
登勢) どうぞ。
(家の中は散らかり放題で、登勢
は隅でマッチ箱を作っている)
(部屋にあがる直美)
(咳き込み)
直美) 掃除しますね。
登勢) ああ…すみません。
**********
直美) 湿布貼りますね。
(登勢は一時も手を止めず、
マッチ箱を作っている)
直美) あれからどうですか?
眠れてますか?
反町) 変わんねえなあ。
(割れる音)
登勢) ああ…。
はあ~もう。はあ~。
(戸が開く音)
直美) あ…。
子供) 返して!
直美) こら、この前言ったで
しょ!足はそこの手拭いで
拭いて…。
子供) やだね~。
子供) おいらの!
登勢) いいかげんにしな!
反町) そんな怖え顔すんなよ。
(咳き込み)
登勢) 今日中に、あと300
作んなきゃいけないの。
(登勢のそばに座る直美)
直美) ここ折れちゃうんです
よね。昔私もやってて。
登勢) 看護婦さんも?
**********
<夜>
(咳き込み)
直美) 大丈夫です、
ゆっくり吸ってください。
**********
<朝>
反町) 看護婦さん、ありがとな。
今日は、仕事行けそうだよ。
うん。
直美) よかったです。
また来ますね。
**********
(家を出る直美)
(咳き込み)
男性) おい。
男性) おう…。
男性) 大丈夫か?
**********
<看護婦会>
しのぶ) つまり、ぜんそくなのに
掃除もままならず、部屋の空気も、
夫婦の空気も、悪いってこと?
直美) 疲れてるんだよね、きっと。
しのぶ) う~ん…。
旦那さん、毎晩せきだもんね。
直美) あ、そうなんだけど、おか
みさんも。旦那さんせきしたら、
おかみさんも起きる。昼間はずっ
と子供がいて、眠れてない。
しのぶ) 疲れてると、お互いね~。
小川の声) 失礼します。
しのぶ) はい。
直美) はい。
しのぶ) どうぞ。
直美) はい。小川さん?
小川) すみません。
約束の日ではありませんが…。
直美) あ…今は、仕事中なので。
小川) あ…。
しのぶ) あっ。私吉田病院
行ってきますね。
直美) い…行ってらっしゃい。
しのぶ) はい、
行ってまいります。
**********
(正座で向き合った、小川と直美)
(机の上にマッチ箱)
小川) 自分…
マッチが好きなんです。
直美) ん…? マッチ…。
小川) あ…。子供の頃、初めて、
家でマッチを使った時、簡単に
火がついて、魔法かと思うて…
フフッ。だけん、火打ち石とは
全く違うったい。かまどに、つ
くっ時、いつも、やらせてもろ
うて。失敗して無駄にすっと、
しこたま母に叱られて。ハハハ
ハ…。そいで、今でも好いとう
と、マッチ。
直美) フフッ。フフフフッ。
小川) ん? フフフ…。
ハハッ、面白いですか?
直美) フフ…はい。
小川さんは、好きなもの
見つけるのが上手ですね。
小川) はい、好きです。
直美さんのことが好きです。
直美) え?
小川) え?
分かってくれているものと…。
(姿勢を正す小川)
小川) 結婚してください。
仕事に打ち込む直美さんも、
だんごを食べてる、直美さんも、
好きです。
**********
<夜>
(看護婦会の事務所を出る直美)
(向かいに一ノ瀬家の明かり)
美津の声) ほら、楽しみに
してなさい。
りんの声) ホントかな?
美津の声) ホントですよ。
りんの声) フフフッ、
直美さん、遅いねえ。
美津の声) ねえ。
環の声) せっかくのカレーなのに。
美津の声) う~ん、きっとこの
香りは届いていますよ。
りんの声) 直美さん、
走って帰ってくるかも。
環の声) 直美さん子供みたい。
(笑い声)
**********
環) あっ。
直美) ただいま~。
環・美津) お帰り~。
りん) お帰りなさい。
美津) ちょうどよかったわね。
りん) うん、よし、
じゃあもらうね。
美津) あ~おなかすいた。
(脱いだ草履をそろえ直す直美)
(すげかえた鼻緒)
りん) あ、直美さん?
直美) あ…うん。
環) 今日カレーだよ。
直美) カレー? おいしそう~!
直美) フフッ、
あ~おなかすいた~。
美津) フフフフッ、よかったわ。
りん) ありがとう環。
美津) じゃあ温かいうちにね。
りん) はい。
美津) はい。
一同) いただきます。
りん) おいしい!
美津) でしょう?
直美) う~ん! おいしい!
りん) じゃあ、
環が切ったジャガイモを…。
おいしい~!
環) よかった。
直美) ジャガイモ切れたの?
環) うん!
直美) すごいね。
じゃあ私も食べよっ。
**********
<長屋>
直美) 決めました。
できることをやりましょう。
お子さんがいて内職をしていたら、
きっちり掃除はできないですし、
湯気のためにお湯を張るのも大変
なので、手拭いを濡らして、いつ
も、こうして掛けておきましょう。
これだけで空気が潤いますから。
登勢) はい、それなら。
直美) あなたたちには…。
玄関に、一枚ずつ雑巾を置いてい
きます。おうちに入る時は、どっ
ちが50回早くトントンできるか競
走しよう。こんなふうに。おいで。
よ~し、始め!
子供) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10!
子供) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10!
直美) いいよ~。
子供) 1 2 3 4 5 6…。
**********
直美) あとは、からし湿布を作れる
ように、ここに置いていきますね。
登勢) ありがとうございます。
直美) 私が看てるので、
休んでください。
反町) すまない。
直美) いえ。
**********
<井戸端>
直美) おはようございます。
女性) ああ、おはようございま
す。朝まで大変ですねえ。
直美) ああ、いえ。
(咳き込み)
直美) この辺りでせきをしてる
人が多い気がして…。
女性) 何だかねえ…。
(咳き込み)
**********
<一ノ瀬家>
りん) そうよね…。病院みたいに、
清潔にしてたら暮らせないもんね。
直美) うん。
(マッチ箱を手に取る直美)
りん) どうしたの?
直美) ああ…。
昔、マッチ工場で働いてたの。
ろくな思い出がなくて。だから、
マッチは見るのも嫌。
りん) えっ? でも今…笑ってた。
直美) そう?
りん) うん。
直美) あ…前に、マッチは、火がつ
く魔法だって言ってる人がいて…。
りん) 魔法…。
直美) 変な人って思っただけ。
(炎にほほ笑み、
かまどの火をつける直美)
**********
(部屋で宿題をしている環)
りん) 環。明日からまた、
お母さん看護に行くね。
環) うん、わかった。
お母さん、これ何と読むの?
りん) これはね、「こはるびより」。
冬の始まりの、春みたいに
暖かい日のこと。
環) シマケンさんみたい。
りん) えっ、そうかな?
環) 最近来ないの。
**********
(紙屑だらけの部屋に
寝ころんだ島田)
(折り紙トンビを飛ばす)
**********
(月明かりのもとで、
マッチ箱を見ている直美)
(回想)
小川) 結婚してください。上官の
許可も、下士官の私なら、それほ
どうるさいことは言われません。
とにかく好きな…。
直美) すみません!
(一点を見つめる直美)
(虫の声と風の音)
**********
超簡単感想で♪
ぜんそくの男性の家族が、何とか
できそうなことを、提案する直美。
何でも実際に続けられることじゃ
ないと続かないからね~。そして
小川のプロポーズを断ってしまう
直美。幸せになってもいいんだよ。
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