「虎に翼」 第78回
第16週「女やもめに花が咲く？」
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高瀬） クソジジイ～！
寅子） 高瀬さん！ 高瀬さん！
高瀬） ほっといてくれ！
一同） おお～！
（川に流される寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
深田） 前代未聞だて高瀬君！
ん～ね、よりにもよってなんで
森口さんに。
高瀬） 言いたくありません。
深田） 言いたくねえって君ね！
ん？ ん？
寅子） 無理に話さなくていいわ。
きっとひどいことを言われたの
よね？ ずっと耐えてきた高瀬
さんがあんなにお怒りになるん
だから。
高瀬） だからもういいですから！
よそ者（もん）のくせに、こっち側
のふりをしなくて！
深田） 何だ君そんげ口のきき方
して！ 支部長は、君のことを
思ってだね！
高瀬） 懸命になさろうとしてるこ
とは分かります。お優しい方な
んだろなとも思います。ですろも、
波風を立てず、「立つ鳥跡を濁
さず」でお願いしたい！
深田） すいません支部長！
小野） そらろも、深田さんらって、
高瀬君とおんなじ気持ちじゃ
ねんですか。
深田） そ、そ･･･そんげこと･･･。
（全身生乾きの寅子）
寅子） 高瀬さん、皆さん、ありが
とう。思っていらっしゃることを、
お話ししてくださった方が、黙っ
ていられるよりずっといい。高瀬
さんのことは、私からも森口さん
にお話ししてみます。
深田） ありがとうございます。
寅子） では。
（庶務室を出る寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（廊下をゆく半泣きの寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（居間の座卓でノートを開いた優未）
寅子） ただいま。
（戸が開く音）
優未） お帰りなさい。
今日は誰も来なかったよ。
寅子） お母さんがお魚屋さんと
八百屋さんに断ったの。だから
今日からまた、お母さんのご飯
になっちゃうけど、ごめんね。
優未） 分かった。
寅子） あっ、ハハハ、
お風呂沸かすね。
優未） あっ、私やります。
寅子） あら、ありがとう。
（優未を目で追う寅子）
（座卓の上を見る）
（ページを閉じて、教科書
の下に隠したノート）
（ためらいながらノートを手に取る）
（数字の44の4を、8とか9に見せる
ために、何度も練習した跡がある）
（回想）
直明） 優未が、算数で31点を
取ってきたことがあった。でも
優未は、31点を、84点に偽装
して、お姉ちゃんに見せた。
（回想）
直治） 優未頑張ったでしょ？
寅子） 間違えた部分はきちん
と復習して勉強するのよ。
そうしたら次は100点だから。
優未） はいっ！
寅子） うん。フフ。
（優未が戻ってくる）
（ノートをひったくる優未）
（寅子に背を向けて座る）
寅子） もしかして今日、
テストが返ってきた？
優未） 知ってたんだ。私が、
テストの点数うそついたこと。
寅子） うん･･･。
（向き直る寅子）
寅子） 優未。
ごめんなさい。
優未） 何でお母さんが謝るの？
寅子） うそはよくないけど、
でも、うそをつかせたのは、
お母さんだから。
優未） ごめんなさい。
（寅子の前に44点のテストを出す）
優未） 毎日頑張って勉強しても、
おうちではできても、テストの
時になると、ぎゅるぎゅるって
なる･･･。どうせ、なたおなか
痛くなる。
寅子） アハ･･･。
お父さんに似ちゃったか。ハハハ。
お父さんもね、緊張するとすぐ
おなか痛くなっちゃうの。
ぎゅるぎゅる～って。
優未） 本当に！？ ほかには？
ほかにはどんな駄目なところが
あったの？
寅子） 駄目なところって･･･。
優未） だって、花江さんも兄ちゃん
たちも、いい人とか、優しいとかし
か言わなかったんだもん。
ねえどんな人だったの？
寅子） どんな人？
そうね･･･。え～･･･。
（泣きそうになる寅子）
寅子） ご飯の支度があるから、
また今度話しましょう。
優未） はい。
（スンッの顔になる優未）
（台所に立つ寅子）
（44点のテストをランドセル
にしまう優未）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
寅子は、戸惑っていました。
いざ話そうとすると、優未に
優三のことをどうやって、何
を話せばいいか分からない。
（優未を抱いた寅子と並んだ、
優三の写真）
きっと、これこそが花江の言う、
「トラちゃんにしかしてあげられ
ないこと」、なのに･･･。
（回想）
（出征の日の泣き笑いの優三）
（初めて優三とくっついて寝た日）
（縁側で写真を撮った、
結婚の日の二人）
（おなかがギュルギュルの、
切羽詰まった優三）
（どんな時も笑顔がいっぱい
あった、優三のいた日々）
なぜだろう。
胸が詰まって、話せない。
（布団をかぶる寅子）
（寅子の泣き声）
（背を向けて眠っている優未）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜朝＞
（寅子に抱かれた自分と、優三の
写った写真をじっと見ている優未）
寅子） 優未。夕ごはん、
何か食べたいものある？
優未） お母さんが食べたい
ものでいいよ。
（ランドセルを背に、玄関におりる）
優未） 行ってきます。
寅子） 行ってらっしゃい。
（一人になる寅子）
寅子） あ～ん～何かもう、
仕事行きたくない～！
（大の字に寝転ぶ）
寅子） あ～･･･行きたくない～！
行きたくない～！ うう～っ！
（ジタバタあばれる寅子）
（戻ってくる優未）
寅子） ハハ～ハハ～。
行きたくない～！
行きたくない～！
（優未に気付く寅子）
寅子） どうしたの？
優未） 忘れ物。
（全部見ていたはずの優未）
（巾着袋を取り、玄関に戻る）
優未） 行ってきます。
寅子） 行ってらっしゃい。
（糸が切れたように、
また倒れる寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（庶務室をのぞく寅子）
寅子） おはようございます。
3人） おはようございます。
寅子） あの、今日、高瀬さんは？
小野） 具合（ぐえい）が悪（わり）い
そうで、お休みです。
寅子） そうですか。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜支部長室＞
寅子） 交通事件の集計です。
ご足労おかけしてすみません。
航一） いえ、長岡支部に寄る、
つい･･･。
（寅子を見る航一）
寅子） あの･･･。
航一） ゆうべ、泣きましたか？
（ノック）
寅子） はい。あっ･･･。
次郎） 失礼いたしま～す。
星判事、これ、お昼にいかが
かな～と思いまして。
（寅子に疑いの目を向ける航一）
次郎） ああ、ああ、小せえ町です
から、ふだんと違うことがあれば
す～ぐ耳に入ります。
（テーブルに置く次郎）
次郎） これ、私がひいきにしてる
料理屋の、お弁当なんですが、
これがもうなかなかうんめんです。
大急ぎで作らせました。
航一） 申し訳ないですが、
受け取れません。
次郎） もう、そうかたいこと
おっしゃらずに。
航一） 裁判官とは、
そういう仕事ですので。
次郎） ええ～。
せっかく作らせたんですけどね。
無駄になっちもうなあ。
（モジモジ動こうとしない次郎）
寅子） あっ、じゃあ、お代を
お支払いさせてください。
次郎） えっ？
寅子） あっ･･･。
お重は私が帰りに洗って
お返ししますので。
そうすれば、料理が無駄に
なりませんので。
召し上がりませんか？
どうでしょう？
（目は笑っていない笑顔の航一）
寅子） な･･･ならば、私が持って
帰ります。料理を無駄にはした
くありませんから。
次郎） やい～やしかたない。
そうしましょう。
寅子） では。
次郎） では。
（寅子が立ち上がった
椅子に次郎が座る）
次郎） いや～驚いてしまいます
よね。まさか書記官があんげこ
とをねえ。森口さんもおっしゃっ
ておられましたよ。よかれと思
って活を入れただけらてにって。
寅子） 活？
（回想）
森口） しっかりしねと、次男坊も
心配（しんぺえ）で、成仏しねろ。
次男坊のことは、よ～く覚えとる。
小せえ頃から心優しく、頼もしい
子やったがな。具合の悪いおめ
さん担いで、何度も医者に走って
いったねっか。年寄りにも、いっ
つも親切で、ハハ、祭りの日には、
いっつも見事な歌･･･。
高瀬） 黙れ～！
次郎） 最近の若者（わ～けもん）
は、どこで堪忍袋の緒が切れる
かさっぱり分かりませんな。
まあ、兄のおかげで、大ごとに
ならずに済んだということらて。
（椅子の肘置きをたたく音）
（次郎を見据える寅子）
航一） 思い出にできるほど、お兄
さんの死を受け入れられていな
かったんでしょうね。
次郎） えっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
超簡単感想で♪
優未のテストの点数があまりにも
低いのが不思議だったんだよね。
なるほど、ぎゅるぎゅるDNAだった
か～。緊張しいが似ちゃったかｗ
思い出にできるほど、お兄
さんの死を受け入れられて
いなかったんでしょうね。
なるほど。なるほど君は鋭いね～。
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