「ブギウギ」 第111回
第23週「マミーのマミーや」
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（座敷に祭壇）
男性） ええ顔で写っとる。
松吉） ええ写真じゃろ。
ワシが撮ったんですわ。
兄貴にも・・・。ワシも笑顔の
写真撮ってもろたんじゃ。
100回ぐらい撮り直しました。
ヒデオ） 100回聞いたそれもう。
松吉） 100回も・・・。
ヒデオ） 100回聞いたから戻ろう。
（喪服姿で愛子と
座っているスズ子）
（杖をつき、
年老いたキヌがやってくる）
（回想）
（キヌの家を訪ねたあの日）
（キヌとスズ子の目が合う）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜海岸の松林）
スズ子） 来てくださって、
ホンマに、ありがとうございます。
キヌ） 梅吉さんには、がいにお世話
になったけん・・・。息子たちも、
よう、写真撮ってもろたし。
かわいがってもらいました。
（キヌの息子たちと遊ぶ愛子）
スズ子） あの時の・・・。
キヌ） はい。
もう、15年も前ですか・・・。
スズ子） お二人とも、
立派になられて・・・。
あの・・・その、足は・・・。
キヌ） ああ・・・大したことないんや。
畑仕事でちょっと、ケガして・・・。
やけど、息子たちもよう面倒見て
くれますけん。
（遊ぶ声）
スズ子） お幸せ・・・そうですね。
キヌ） はい。こうして、また、
スズ子さんとお会いできて、
ウチは、ホンマに、幸せ者やけん。
スズ子） よかったです。
兄） 母ちゃん、そろそろ、行こうか。
弟） 畑仕事に戻らんと。
キヌ） そやね。ほんだら・・・。
スズ子） はい。
兄） あの・・・俺、大ファンなんです。
母ちゃんが、知り合いやなんて、
びっくりしました。
弟） なあ。母ちゃんもやるやん！
スズ子） お母さんを、大事にな。
兄） はい。じゃあ、行こうか。
弟） うん。失礼します。
兄） じゃあな。
弟） またね。
スズ子） ほな、また・・・。
（スズ子を振り返るキヌ）
スズ子） また、会いましょね。
キヌ） はい。また・・・。
（杖をつき、歩き出すキヌ）
愛子） おのおじさんたち
遊んでくれたよ。
スズ子） よかったなあ。
愛子） あのおばあちゃんは誰？
マミーのおともだち？
スズ子） そうやな・・・。
マミーの・・・マミーのな・・・。
（キヌの背中を目で追うスズ子）
愛子） 何？
（愛子の目の高さに
しゃがむスズ子）
スズ子） マミーの、マミーや。
愛子） マミーの・・・マミーなん？
スズ子） そうや。
愛子の、おばあちゃんや。
（足を止めたキヌの頬に
涙がこぼれる）
（スズ子を振り返り、
頭を下げるキヌ）
（微笑むスズ子）
兄） 行こうか。
（息子たちに支えられ、
去っていくキヌ）
（愛子を抱き寄せ、
キヌを見つめるスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜＞
スズ子） 愛子。愛子！
（ため息）どないしたんや？
愛子） おじいちゃん
どこ行ったんやろ。
（布団のない離れ）
スズ子） おじいちゃんはな、
もうのうなってしもたんや。
せやけどな、きっと。
（頭の上に、手を伸ばす）
スズ子） この辺で、愛子のこと、
ずっと見てるで。
愛子） この辺？
おじいちゃんおるん？
（手を伸ばす愛子）
スズ子） そうや。ここや！
愛子） おじいちゃん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜朝＞
スズ子） ホンマに、
ありがとうございました。
近いうちに、また、
香川に帰ってきます。
今度は、歌いに来ますで！
（拍手と笑い声）
ヒデオ） まさに、郷土の星やな。
タカ） ホンマに、ワテらの自慢や。
スズ子） おおきに。
ユキ） いつかホンマに
必ず歌いに来てね。
スズ子） おおきに。
ほれ、愛子、いつまで
カメなでてんねん。
愛子） この子、ウチと
離れとうないみたい。
スズ子） また会いに来たらええがな。
なあ？ 叔父さん、この子、かわいが
ってあげてな。
松吉） ああ。ワシにとっては、
兄貴みたいなもんやからな。
愛ちゃん、いつでも会いに来てな。
毎週来てくれてもええで。
ユキ） 来れるかいな。
松吉） そや。ええもんやるわ。
これな、兄貴が、死んでしまう前に、
現像してくれ言われとったんやけど、
間に合わなんだけど。
（梅吉が撮った、愛子とカメ）
スズ子） へえ・・・ええ写真やねえ。
ほれ、愛子、カメやで。
この写真飾ったらええがな。なあ？
（ちょっと納得のいかない愛子）
スズ子） ほな、行こか。
松吉） 「気ぃ付けてな」て、
カメも言うとるわ。
（笑い声）
スズ子） ほな、失礼します。
松吉） 気ぃ付けてな。
ヒデオ） 元気でな。
スズ子） またね。バイバイって。
松吉） 元気でな～！
スズ子） ありがとう！
皆さん元気でな～！
（ず～っとカメを見ている愛子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜スズ子の家＞
スズ子） はい。
お母ちゃんの横やで。
（梅吉の写真を置く）
スズ子） どうぞ、
見守っていてくださいね。
え～っと、チ～ンはと・・・。
大野） お茶っこどうぞ。
スズ子） ありがとうございます。
大野） カメかわいいなあ。
愛子） せやけど、やっぱり
写真より本物がええわ。
大野） そりゃそんだ。
スズ子） 大野さん大野さん、
チーン知りませんか？ チーン。
大野） まだどこさが置きっ放しで
すか。必ずそこさ置いてけへって、
何回しゃべったら分かるんだべ。
スズ子） すんまへんなあ。
どこやどこや？
チーン鳴らせへんがな・・・。
愛子、チーンの棒知らへんか？
（自分と一緒に写った、
カメを見つめている愛子）
大野） どこさ・・・。ないなあ。
（引き出しの中に、
布の包みを見つけるスズ子）
（包みの中に、金の懐中時計）
（回想）
キヌ） 菊三郎さんの形見や。
ずっと、あんたにあげたい
思うとったんよ。
大野） 何だべ？ それ。
スズ子） 愛子、カメの代わり
やないけどな、この時計を、
あんたにあげるわ。
この時計はな、こないだ会うた、
おばあちゃんにもろたもんや。
愛子） あのおばちゃん？
スズ子） そうや。大切にしてや。
愛子） （頷く）
かいらしい時計や。
スズ子） 愛子が持ってるのが、
一番ええ気がするわ。
愛子） うん。
スズ子） うん。
チーンどこや？
大野） はっ、チーンだ！
スズ子） チーン。
大野） チーン、チーン・・・。
スズ子） 愛子、チーン。
ほら、はい。え～っと、チーン・・・。
タケシ） こんちは！
スズ子） は～い！
ター坊上がってや。
タケシ） いや仕事詰まってますよ。
予想外に香川が長引いちゃった
から。何してんですか？
スズ子） チーン捜してんねん。
チーン。
タケシ） またなくしたんですか！？
スズ子） 愛子、愛子！
愛子も捜してえな。
どこやった？ チーン。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
生みの親、キヌとの再会。スズ子も愛子
を産んで、母親の気持ちが分かるように
なったんだろうね。産んだ子どもを愛しく
思わないはずがないというか・・・。血が
繋がっていなくても繋がる関係、血が繋
がっているからこそ、繋がっている関係。
義理と人情、愛情、友情、いろんな感情
があるからね。みんな、それぞれに大切。
愛情は、いくら増えたっていいよね。愛し
いものが増えるのは、悪くない。愛子が、
梅吉の姿を探すのが、よかった。おじい
ちゃんはおるよ。きっと近くで見守ってる。
「ニィ～」って・・・クシャクシャの笑顔で！
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