「ブギウギ」 第23回
第５週「ほんまの家族や」
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昭和12年（1937）
スズ子が、香川から戻って
きて、３年が経ちました。
梅丸少女歌劇団は、
スズ子たちの代が中心となり、
ますます人気を集めています。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜楽屋＞
スズ子） な～んや、納得いかへん。
和希） 何？
スズ子） ワテがソロで歌って、
秋山のタップが始まると、何や、
全部持っていかれてる感じすんねん。
ワテの歌、秋山のタップのために
歌ってるんちゃうで。
和希） そらそうや。
誰もそんなふうに思てないがな。
スズ子） そやろか？
林部長、ワテに秋山の引き立て役
させよう思うたんちゃうか？
和希） あんたらの歌と踊りを二本柱
にしよう思うたんやろ。お客さんも
喜んではるし、大当たりやがな。
スズ子） せやけど、
和希ちゃんは、悔しないんか？
前は、もっと、悔しがっとったで。
和希） せやけどな、今は役割いう
もんが分かるねん。うちらがおっ
てこそ、リリーや秋山も輝けるん
やがな。
スズ子） ほら、
やっぱり引き立て役やん！
和希） スズ子はホンマ野心家やなあ。
スズ子） 野心？
和希） もっともっと目立ちたいんやろ？
スズ子） う～ん・・・目立ちたいいうか、
何や、うまいこと言えへんのやけど・・・。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
はな湯は、相変わらずの
にぎわいです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ラジオ） ♪「窓を開ければ 港が見える」
梅吉） またこの歌や。
最近ようかかるけど、何や好かんわ。
スズ子） 待って。
梅吉） 何や。
ラジオ） ♪「メリケン波止場の 灯が見える」
易者） 僕もこの歌あきまへん。
何か辛気くそうなりますわ」
梅吉） お前が言うなや。
アサ） ええ声や思うけどなあ。
スズ子） ホンマや・・・。
ラジオ） ♪「夜風潮風 恋風のせて
今日の出船は どこへ行く」
よう分からんけど・・・
何でかビリビリきた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（蓄音機にレコードをかけ、
歌詞カードを見るスズ子）
スズ子） 「別れのブルース」、
茨田（いばらだ）りつ子。
何や・・・怖い顔やなあ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
梅吉） そら考え過ぎやろ。
「別れのブルース」聴いとるから
って何でワシらと別れるねん。
ツヤ） あの子、ホンマのこと知って
しもたんちゃうかって・・・。
梅吉） 何やホンマのことって。
ツヤ） あの子が、香川から帰って
きてから、何や、ちょっとだけ
ギクシャクしてる気ぃして・・・。
梅吉） 気にしすぎて。
何年前の話や、香川行ったん。
あいつも年頃やしな、よう分からん
歌聴いてたそがれたいんちゃうか。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
そんなある日のこと、
大和礼子と股野義夫が、
久しぶりに、公演を見に来ました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜本日貸切の洋食屋・フクロウ＞
股野の泣き落としのような
プロポーズにより、
２人は結婚し、今、夫婦で、踊り
とピアノの教室を開いています。
大和） 福来さん。
スズ子） あっ！
大和） とってもよかった！
あなたの歌もすごくよかった。
力もらったわ。
スズ子） ありがとうございました。
おなか、だいぶ大きなりましたね。
大和） もう来月だしね。それより、
私の言ったとおりでしょ。
スズ子） え・・・。
大和） あなたの歌、
武器になったわね。
スズ子） そう・・・ですか？
大和） 何？ どうしたの？
スズ子） いえ・・・。
大和） 秋山さんの踊りに負け
ちゃってると思ってるんでしょ、
あなたの歌が。
スズ子） 別に、そんなこと・・・。
大和） 秋山さんもおんなじこと
言ったわよ、さっき。
スズ子） え・・・。
大和） 自分の踊りがあなたの歌
に負けちゃってるみたいだって。
スズ子） 秋山が・・・。
大和） 相変わらずね、あなたたちは。
そうやって切磋琢磨していくのね。
羨ましいわ。
スズ子） 秋山の、踊りに負けてる気ぃ
するいうんも、確かなんですけど、
そんなことやない気ぃもするんです。
大和） 何？
スズ子） うまいこと、言えへんのです
けど・・・別に秋山より目立ちたい、
いうわけやなくて・・・。何て言うか、
歌も踊りも楽しいんでっけど、こんな
もんやないやろ、いうんか・・・。
大和） そっか・・・。あなたはもっと遠く
を見てるのね。物足りなくなっちゃっ
てるんじゃない？ 今の自分に。でも、
どうしていいのか分からない。
秋山） それです！ ウチも別に、福来
さんの歌に勝ちたいとかそういうん
やないんです。もっと・・・もっとやれ
るいうか・・・。
スズ子） そやねん！ ワテ、もっと、
やれるんちゃうかって。
それや！ そんな気分や！
秋山） 何か、
まだまだこんなもんやないって・・・。
スズ子） 物足りんのやろ？
秋山） 「ああ～」ってなります。
スズ子） ・・・なるなあ！
大和） すごいわね、あなたたちは。
答えにはならないだろけど・・・
私ね、この子が、生まれたら、私の
何かが変わりそうな気がするの。
それは、踊りとかそういうことも
含めて。自分がどう変わるのか、
すっごく楽しみ。何か生活の変化
が、歌や踊りに表れることってあ
ると思うの。股野君もね、最近
ピアノがやわらかくなったのよ。
スズ子） 赤ん坊をつくれ
っちゅうことですか？
大和） あははははははっ！
相変わらず面白いわね、福来さん。
スズ子） へっ、へへへ・・・。
大和） 違う。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ワテは、
何か自分を変えようと、
試行錯誤した。
（左右、長さの違うつけまつげ）
リリー） えっ！？ うわっ！ まつげ長っ！
スズ子） こっちが２センチで、
こっちが３センチやねん。
どっちがええ？
リリー） う～ん、３センチ！
スズ子） ホンマ？
リリー） うん。
あっ、あんたら、ちょっと見てみ！
すごいで！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
梅丸の東京支社から、
スズ子たちの公演に、
視察が来ました。
（黒塗りの車から降りる、
オシャレな男と普通の男）
林） おお～！ よう来たな、辛島！
おま・・・お前、全然変わって
へんやないかい！
辛島） どうもご無沙汰してました。
林さんこそ、全然変わってませんよ。
林） 毎日、これ飲んどるさかいな。
飲むか？
辛島） いや、結構です。
吐いちゃうんで。
林） な～んや。
辛島） あの、こちら、東京の演出家の、
松永さん。松永財閥の・・・。
松永） 初めまして、松永です。
ご機嫌よう。
林） 聞いてまっせ。パリと、ロンドンに
留学してはったんでしょ？
松永） ああ。
まあ、世界漫遊ですけどね。
林） ああ！ どうぞどうぞ！
松永） まだ戻ったばかりで、
日本語が不慣れで・・・。ソーリー。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
チャンスはありそうだとは思ったけれど、
泣き落としが効いたとは・・・。股野～ど
んな魔法を、泣き落としを使ったんだｗ
とはいえお似合いの2人というか、幸せ
そうでよかった。2人で踊りとピアノの教
室をやっているというのもめっちゃ良き。
何か生活の変化が、
歌や踊りに表れること
ってあると思うの。
自分を変えたい。変化が欲しい。そん
なスズ子の前に、東京から視察が・・・。
チャンスでっせ～！ 前髪を掴むのだ！
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