「舞いあがれ！」 第103回
第22週「冒険のはじまり」
小堺さんだけの問題やないからです
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＜うめづ＞
小堺） 会社畳も思てな。
舞） え？
小堺） もう、ひし形金網ではやって
いけへんねん。50年歯ぁ食いしば
って、工場守ってきたおやじには
悪いけど、ここまでや。
（小堺を見つめる舞）
小堺） ちっちゃい頃から、おやじの
工場入り浸っててな、金網が編ま
れていくとこ、飽きんと見てた。
針金を、機械で編むだけや。
簡単やと思うやろ？ ちゃうねん。
きれいに編むには職人の技術が
要んねん。うちの工場の職人な、
みんな腕ようてな、ええひし形
金網作りよんねん。
せやけどしゃあない。
もうこらえきれへんわ…。
（めぐみを思い出す舞）
（回想）
めぐみ） IWAKURAを、
畳むことに決めました。
本当に、申し訳ございません。
舞） 工場畳むまで、
まだ時間ありますよね？
小堺） 何？
舞） いくつか、考えてみたんです。
（スケッチブックに5種類のイラスト）
舞） 金網で、
新しい商品、作りませんか？
小堺） どれもうちでは作られへん。
舞） やってみな分からない
やないですか。
小堺） 無理やて。
（店に飾った模型飛行機を
手に取る舞）
舞） これ、7社の力が合わさって、
作ったものなんです。うちのねじも
使ってますけど、的場さんのとこの、
板金技術と落合さんのとこのレー
ザー加工があって、初めて、作れ
たものなんです。小堺さん。
東大阪の町工場と協力し合えれば、
いろんなものが作れます。
挑戦してみませんか？
小堺） そら…できるもんやったら、
作ってみたかったよ。これとか。
曽根） ハンモックか。ええなぁ！
小堺） 金網ができても支柱が無理や。
舞） 支柱作れるとこ、私が探します。
小堺） 商品出来たかて、どないして
売んねんな。うちの取引先は、フェ
ンスしか買い取ってくれへんぞ。
舞） 取引先も、探します！
小堺） あんた何でそこまですんねん。
舞） 小堺さんだけの問題
やないからです。
曽根） 小堺。
小堺） 分かった。
（舞を見る小堺）
小堺） お前逃げんなよ！
舞） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜デラシネ＞
大樹） こんにちは。
貴司） いらっしゃい。
（中学校の制服姿の大樹）
貴司） 最近陽菜ちゃん、
来えへんな。
大樹） うん。カラオケとか、
ゲーセンで忙しいんちゃう？
貴司） そうなんや。
大樹） うん。よいしょ…。
（金魚鉢の中の金魚を見る大樹）
貴司） 陽菜ちゃんは、楽しそう？
大樹） う～ん…そう見えるけど、
楽しいんかは知らん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
３週間をかけて、金網の
ハンモックが形になりました。
的場） 思ったより、
寝心地よさそうやん。
舞） はい。素材は、結構しっかりし
てるんですけど、編み上げるから、
適度な弾力が生まれて、ハンモッ
クにぴったりやと思いました。
穂積） 営業に雇い。
章） うちの営業取られたら
困んで。
（笑い声）
めぐみ） いや～斬新やな。
舞） はい。触ってみてください。
章） ええやん。
めぐみ） ああええやん。
章） 支柱は的場さんとこ？
的場） はい！
（小堺を見るめぐみ）
めぐみ） うちにも、できること
あったら言うてくださいね。
小堺） はい。
（頭を下げる小堺）
小堺） みんな…
おおきに、ありがとう。
的場） 礼は要りませんよ。小堺さん
のためだけちゃいますしね。
曽根） そやで。商品売れたら、
うちにも儲け、あんねんから。
（笑い声）
章） いや～金網のハンモックって
よう思いついたな。
舞） はい。あとは買うてくれるとこ、
探してきます。
小堺） これ、っと寝心地
ようなるか考えるわ。
舞） ありがとうございます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜カフェ・ノーサイド＞
店員） いらっしゃいませ。
舞） こんばんは。
すいません。
御園） ううん。
舞） 外回り長引いてしもて。
御園） こっちこそ急に
呼び出してごめんね。
舞） 全然。
ありがとうございます。
御園） フフ…いつも楽しそうに
飛び回ってていいね。
舞） ああいや…。御園さんこそ、
いろんなことに興味持って、
フットワークも軽くて、新聞記者
ってお仕事が、ぴったりですよ。
御園） そう…だったんだけどねぇ。
舞） 何かあったんですか？
御園） まあ飲んで。
異動になんのよ。
舞） え？
御園） 営業部に行って
らっしゃ～いって。
舞） それって、記者じゃなくなる
ってことですか？
御園） まあね。
（ワインを飲む御園）
御園） ああ…。
アハハ…やけ酒じゃないよ、
景気づけの一杯。これからの
生き方を考えるチャンスを
もらったわけだしね。
舞） これからの生き方…。
御園） 取材して、記事を書いてっ
て楽しいんだけどさ、時々思う
んだよね。私は、誰かが頑張っ
てるのをのぞきに行ってるだけ
かもって。
舞） いや…大事なことを記事にし
て、たくさんの人に知ってもらう
って、すごい仕事やと思います。
御園） ありがとう。
舞ちゃんたち見てたらね、
父のこと思い出しちゃった。
ものづくりが好きだったのに、
工場やめなきゃいけなくなって、
つらかっただろうなって。
そろそろ私も、何かを頑張って
る側になりたいなって気持ちも、
あるんだよね。アハハハ…何も
決めてないけど。
舞） 可能性、
いっぱい、ありますね。
御園） そうなの！ 飲もう！
舞） はい！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA＞
渥美） よかなぁこれ、
寝心地よさそうで。
舞） 職人さんが、網目を
工夫してくれはりました。
渥美） へえ～すごいなぁ、はあ…。
（ハンモックを眺める渥美）
渥美） 欲しいなぁ…けどな、うちに
買っても、置くとこないからな…。
舞） 皆さん、そうおっしゃるんです。
渥美） もしかしたら、河内大学が
興味持ってくれるかも。
舞） え？
渥美） あそこな、
来年リノベーションすんねんて。
校舎の中も、外も新しくしてな、
そこに地元の産業取り入れたい
って言って、この間もオープンフ
ァクトリーのこと聞きに来たのよ。
舞） 地元の産業…。
渥美） うん。せやから、東大阪の技術
で作ったもんを、是非使ってほしいっ
て、売り込んだら、話聞いてくれるん
じゃないかな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA・事務所＞
山田） あっ、お嬢さん、
河内大学さん来られました。
舞） ああ、ありがとうございます。
山田） は～い。
すごいなぁ、また別の大学やて。
次から次へとようやるわぁ。
藤沢） ぱっと見関係なさそうやけど、
案外IWAKURAの役に立つかも。
山田） どういう意味？
藤沢） これ見てみ。
山田） 何？
藤沢） インターンの申し込み。
ほら、こないだのオープンファクト
リーで、手伝ってくれた学生さん
やねんけど…。
山田） うん。
藤沢） 「オープンファクトリーに関わ
って、製造業に興味が湧きました」、
やって。
山田） へえ～意外なとこに
響くもんやな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
女性） 思ったより、くつろげますね。
小堺） はい。
男性） 意外に、おしゃれですしね。
小堺） はい。
（緊張している小堺）
小堺） 色を変えて編むこともできます。
舞） これ、ほかの町工場の皆さんと、
力を合わせて作ったものなんです。
河内大学さんのある、ここ東大阪で、
こんな品質のええもんが作られてる
って、学生の皆さんにも、知っていた
だきたいと思うてます。地元の高い
技術を知って、ものづくりの可能性を、
感じていただきたいんです。
女性） これ、いいんじゃないですか？
産官学連携の、
コンセプトに合いますし。
男性） そうですねぇ…。
小堺） お願いします！
みんなの力借りて、
ええハンモック出来たんです。
支柱も金具も丈夫です。
ちょっとでも寝心地が、ようなる
ようにみんなで知恵絞って…。
これ、網目の形も、縦長に改良
しました。
男性） 分かりました。ひとまず
持ち帰って検討します。
舞） 金網って…面白いんです。
安全を守れるのは、形を変えて、
ショックを吸収できるからなんで
すよ。頑丈やけど、しなやかで、
ただの壁とは違うんやなって、
私にも、発見がありました。どうか、
前向きに、ご検討ください。
（頭を下げる舞）
小堺） お願いします。
（頭を下げる小堺）
男性） 金網って、どれぐらいの
大きさまで作れますか？
男性） なんぼでも、注文に応じて
作らしてもらいます。
男性） そうですか。
来年立て直される、文芸学部の
校舎、外壁をカラフルな金網で
覆うのはどうでしょう？
男性） ふだん気にも留めない金網
に発見があるかも…ですか？
男性） はい。
小堺さん、12階建て、高さは50メー
トルの、壁を飾る金網、作れますか？
男性） 採用になるかは分かりません
が、できるかどうかの確認です。
いかがですか？
小堺） やります。やらしてください！
（頭を下げる小堺）
（舞も頭を下げる）
舞） よろしくお願いします！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
小さな町工場が大手に対抗していくためには、
スクラム組んで、助け合っていかないとね～。
小堺さんだけの問題じゃない。明日は我が身。
情けは人のためならず。めぐりめぐって、自分
を助けることになることは、たくさんあるから…。
みんながWin-Winの関係でいられたらいいね。
そろそろ私も、何かを頑張って
る側になりたいなって気持ちも、
あるんだよね。アハハハ…
何も決めてないけど。
なるほど。応援するのもいいけれど、自分が
頑張る側になるっていうのも悪くないかもね。
デラシネに来なくなった陽菜ちゃんが、その
時間を楽しんでいるのか気にする貴司くん。
非常にデリケートな背景を繊細に描いてる
なあと思う。かつて、自分の居場所となって
くれたデラシネ。場所があればいいだけじゃ
ないからね。そこにいる「人」、が何より大事。
かつての八木さんのように、そこに貴司くん
がいることが、絶対の安心感になっている。
デラシネはそのままあってほしい。でも、奥
のほそ道貴司バージョンも…見たいのよね。
○○だけの問題じゃない問題…多すぎ～。
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