「カムカムエヴリバディ」 第73回
第16週「１９８３」
ミス条映コンテストに挑戦！
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ひなた） 「ミス条映コンテスト」･･･？
（映画村のひなた）
ひなた） 見つけたかも･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜大月家・夕餉の時間＞
ひなた） 見て！
（チラシを見せるひなた）
錠一郎） 「ミス条映コンテスト」？
るい） 何やの？ これ。
ひなた） 条映城のお姫様を探すんやて。
優勝したら、「黍之丞」シリーズに
出られんねん。私、応募する。
ミス条映コンテストに出る。
るい） はあ･･･。
錠一郎） それはすごいな。
るい） ジョーさん。
錠一郎） いつや？
ひなた） ちょうど夏休みや。
錠一郎） あ～それはええな。
桃太郎） お姉ちゃん女優さんになるん？
ひなた） 気ぃ早いわ桃。
まあ、これから目指すいうことやな。
フフフフ･･･。
るい） あほらし。
夢みたいなこと言うてんと、
真面目に将来のこと考えなさい。
ひなた） 私は大真面目やで。
るい） ひなた。
錠一郎） まあええやんか。
将来のことは別にして、
コンテストに出てみよいう話やろ？
ひなた） うん。
るい） あんたもう高３やで。
ひなた） そやから何？
るい） もっとほかにやるべきことが
あるでしょ。コンテストや女優やい
うて、浮かれてる時やあらへん。
ひなた） 浮かれてるんやない。
私は本気や。この募集のポスター
見た時、これやと思うた。これが今、
私のやるべきことやて！
るい） そんな偉そうなことは、回転焼き
の一つも、まともに焼けるようになって
から言いなさい。お母ちゃんは、ひなた
のために言うてんの。
（ムスッとするひなた）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（明かりもつけず、
ベッドに寝転んだひなた）
ひなた） お母ちゃん、
何で分かってくれへんのやろ。
（回想）
ひなた） 侍のように、
りんとして、弱音を吐かず、
こうと決めたことは、
命懸けでやり遂げる。
（ひなたの頭をそっと撫で、
お茶を置いて出て行く桃太郎）
（回想）
ひなた） そういうものに･･･
私は･･･なりたい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（台所で洗い物をするるい）
錠一郎） 50万やて。優勝賞金。
るい） はあ･･･まだ言うてんの？
錠一郎） ひなたなりに考えたんと違うかな？
るい） 何を？
錠一郎） 家計のこととか、いろいろ？
桃太郎もいてるし。
るい） そやからいうて、極端やわ。
コンテストに出るやなんて。
錠一郎） 僕の時は応援してくれてたやん。
コンテストに出るってなった時。
るい） あ･･･。
それとは･･･全然意味が違うわ。
錠一郎） 僕は知ってるよ。
挑戦するのって、わくわくすることやで。
（足音）
ひなた） お母ちゃん！
もういっぺん回転焼き焼かせて。
るい） えっ？
ひなた） うまいこと焼けたら、
コンテストに出させてください。
お願いします。
（頭を下げるひなた）
るい） はあ･･･。
ひなた） 生地作らんと。ええと･･･
小麦粉と、水と、小麦粉と、小麦粉と･･･。
錠一郎） 小麦粉ばっかりやないか。
ひなた） あと何やったっけ？ えっと･･･。
るい） やめなさい。材料の無駄や。
ひなた） お母ちゃん！
（大皿にかけたふきんを取るるい）
（失敗した回転焼きがてんこ盛り）
るい） 回転焼き一つにも、
その人が出るんや。
ひなた） そんな嫌み言わんでもええやん。
（アバンギャルドな形の回転焼き）
るい） この･･･ちょっとはみ出す感じ･･･
これが、ひなたなんやろね。
（そばで見ている錠一郎）
（ひなたを見るるい）
るい） やるんやったら、
本気で優勝目指しなさい。
ひなた） えっ･･･。
るい） 手抜いたりしたら、
お母ちゃん許さへんで。
（るいに飛びつくひなた）
ひなた） ハハ･･･ハハハッ、
ありがとう！ お母ちゃん！
るい） ちょっと、ひなた。
台所でバタバタするんやないの。
ひなた） ありがとう！
るい） ジョーさ～ん。
もう･･･何やの。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ひなたは、早速書類審査の
準備を始めました。
ひなた） 早うして、お父ちゃん。
（シャッター音）
錠一郎） あれ？
ひなた） もうお父ちゃん！
フィルムもったいないやんか。
錠一郎） ああ･･･
もう一回もう一回もう一回。
ひなた） 何やってんの･･･。
錠一郎） はいそのままそのまま。
はいはいはい。
吉右衛門） 写真撮影か。
どれ。私が撮って進ぜましょう。
錠一郎） ああありがとうございます。
助かります。
吉右衛門） カメラには幼少のみぎり
より親しんできたさかい。こらまた、
骨とう品みたいなカメラやな。
ハッハッ。どれ。
（アイドル風なポーズを取るひなた）
ひなた） お父ちゃん、入ったらあかん！
（シャッター音）
（ひなたの後ろでポーズを取る錠一郎）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（教室の机の上に並べたひなたの写真）
（一恵と小夜子も見る）
一恵） 何でおっちゃん一緒に写ってるん。
ひなた） 気にせんといて。
小夜子） これがええんと違う？
ひなた） う～ん･･･。
一恵） こっちの方がようない？
ひなた） これはないやろ！
一恵） 履歴書は書いたん？
ひなた） うん。
あ～あと自己紹介文も書かなあかん。
作文苦手やのに･･･。
小夜子） 私手伝ったげるえ。
ひなた) ホンマ？ ありがとう！
吉之丞） ひなた。何や、ミス条映
コンテストに応募するんやて？
ひなた） そや。
吉之丞） お前が優勝できるんは、
ミスばっかりコンテストや。
ひなた） 吉之丞！
（胸倉をつかむひなた）
ひなた） お前もう、ホンマに！
帰れ！ お前！
お前は･･･いつもホンマにお前！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夏のはじめ＞
ひなたは、
無事に書類審査を通過しました。
あとは本選を待つばかりです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（ひなたの妄想）
（ドラムロール）
司会） 発表します！
ミス映画村、条映城のお姫様に選ば
れたのは･･･エントリーナンバー７番、
大月ひなたさんです！
（拍手を歓声）
司会） おめでとうございます！
大月さんどうぞ前へお越しください。
（拍手）
男性） おめでとう。
男性） おめでとうございます。
（真っ赤なガウンとまばゆいティアラが
授けられ、トロフィーを抱くひなた）
ひなた） ありがとうございます。
夢みたいです。
ひなた） 一流の女優になれるよう
頑張ります。
一子） ひなたちゃん？
ひなた） あ･･･。
（妄想が解ける）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜茶室＞
一子） 条映の演技審査やったら、
きっと着物着せられるえ。
ひなた） はい。
（一子の特訓を受けるひなた）
一子） へり踏まんと。
（着物姿で畳の上を歩くひなた）
一子） 背筋。
手、遊んでる。
一恵） 頑張って、ひなちゃん。
一子） へり。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜・ひなたの部屋＞
ひなた） イテテテテテ･･･。
足袋って疲れるんやな･･･。
（回想）
ひなた） 侍のように、
弱音を吐かず、
こうと決めたことは、
命懸けでやり遂げる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜茶室＞
一子） お作法も覚えといて、
損はあらへんえ。
はい。お茶わんの縁で、茶しゃく
を軽う打って、お茶を払て。
（茶しゃくを縁に打つ尾と）
一子） そない大きい音
立てたらあかん！
ひなた） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
るい） どうもおおきに。
客） どうも･･･。
ﾗｼﾞｵ・磯村） 「さて皆さん。いよいよ
今日、条映太秦映画村におきまして、
ミス条映コンテストが開催されます。
『条映城のお姫様を探せ！』という
うたい文句のもと、この先、条映映画
やテレビドラマのスターになる女の子
を、発掘しようという一大イベントです。
どんなすてきなお嬢さんが選ばれま
すでしょうか。楽しみですねえ」。
（回転焼きの手を止め、店の奥へ行き、
神棚を見上げるるい）
（手を合わせ、目を閉じ、一心に祈る）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
こうして、家族や友人、
いろんな人の応援を受けて、
ひなたは、いよいよ、
本選の日を迎えました。
（映画村の大手門を入るひなた）
司会者） 皆様大変長らく
お待たせいたしました～！
ｱｼｽﾀﾝﾄ） ミス条映コンテスト･･･。
司会） 開幕です！
いや～いよいよですね。
ｱｼｽﾀﾝﾄ） はい！
司会） 一体誰が選ばれるんでしょうか。
まずは、ここまでの審査を通過いたし
ました、お姫様候補の皆さんをお呼び
する前に、審査員の皆様、ご紹介い
たしましょう。まずは株式会社条映、
八代（やしろ）将（まさる）社長です。
（拍手）
司会） 続いて、「棗 黍之丞」シリーズ
をはじめ、数々の条映テレビ時代劇
を演出しておられます、轟（とどろき）
強（つよし）監督です！
（拍手）
司会） そして数々のヒット作を世に
送り出してきました、毎宝テレビプロ
デューサー、香川雅彦さんです！
（拍手）
司会） それではいよいよ、
お姫様候補たちの登場です。
２人） 「条映城の、お姫様を探せ！」。
（拍手）
（ステージに、着物姿の候補者が13人）
（ひなたはエントリーナンバー10）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
一恵） めちゃくちゃ緊張してへん？
小夜子） 大丈夫やろか･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ｱｼｽﾀﾝﾄ） それでは、エントリーナンバー
１番のお姫様から、自己アピールをして
いただきましょう。
美奈子） 澤田美奈子、19歳です。
父が、河原町で呉服屋を営んでおり、
条映さんの衣装も担当させていただ
いております。父の仕事を横で見な
がら･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
女性） おなごたちを守るためなら、己
の命も惜しまない、と活躍されるお侍
さんたちに恋い焦がれ･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
女性） 趣味は華道、特技は日舞。
新撰組を、こよなく愛します。清く、
気高く、美しい姫を演じることが
できるのは、この･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
高山） 幼い頃憧れた女優さんたちの
ように、私も、皆さんに夢を与えられ
る女優になりたいです。今日は、よろ
しくお願いします。
（拍手）
司会） 高山さんありがとうございました。
ｱｼｽﾀﾝﾄ） ありがとうございました。
続いて、エントリーナンバー10番の
お姫様です。どうぞ。
（拍手）
（前に出て、マイクの前に立つひなた）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（客席に錠一郎と桃太郎）
（一恵と小夜子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ひなた） あ･･･大月ひなた、18歳です。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ミス条映コンテストに出るために、みんなに
特訓を受けるひなたの図。愛されてるね♪
僕は知ってるよ。
挑戦するのって、わくわくすることやで。
意外だったのは、ジョーのこの発言。わくわ
くしていたとは･･･そうだったのか、ジョーｗ
娘の写真撮影に映り込んだり、お茶目が止
まらないジョー。もうもう～ヒロインより可愛
くなってどうするのよぉ～。やることなすこと、
何もかもが可愛すぎるよジョー！ 彼が画面
に映り込むと、目が離せなくなっちゃうよ～。
そしてそんなジョーに弱いというか甘いるい
もまた、かな～りポップになってきたような。
この･･･ちょっとはみ出す感じ･･･
これが、ひなたなんやろね。
唐突に回転焼きに例えるるい。回転焼きの
焼き方に、それほどバリエーションがあると
は思えないけど･･･。そこは言わないお約束。
何にしろ、３代目ヒロインパートは明るく楽し
い世界になりそう。新しい出会いも楽しみ～。
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