「カムカムエヴリバディ」 第42回
第９週「１９６２」
初めてのデートとトランペットを吹く宇宙人
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＜映画「棗黍之丞 女狐乱れ桜」＞
（桃山剣之介が演じるところの･･･）
黍之丞） 暗闇でしか、見えぬものがある。
暗闇でしか、聴こえぬ歌がある。
黍之丞） 黍之丞（きびのじょう）、見参！
侍） 斬れ～！
侍） てや～！
侍） や～！
侍） うお～！
侍） くそっ！
（黍之丞の睨みに怯む侍たち）
侍） や～！
侍） や～！
侍） あ～！
侍） うわ･･･。
（黍之丞の鮮やかな刀さばき）
（残る侍は一人）
侍） があっ！ くっ･･･くっ･･･。
（斬られても、立ち向かう侍）
侍） とりゃ～！
（顔面を切られ絶命）
（刀を納める黍之丞）
平助） 何やもうひとつやったなあ。
西山） え～？
割引券で見てて、何言うねん。
平助） そうかて、先に「三十郎」
見てしもたからなあ。
西山） かあ～！
和子） 「椿三十郎」、
あれ面白かったなあ。
平助） あないなもん見せられたら、
モモケンの殺陣がうそくそう見えるで。
（O・ヘンリーを読みながら
店番をしているるい）
西山） ようそんな殺生なこと･･･。
戦前からさんざんモモケンに楽しま
せてもろといて。タワシ五十郎が。
平助） 何やタワシ五十郎て。
タワシはお前やろ。
西山） お前はワタシや。
平助） うまい！
（足音）
るい） あっ、いらっしゃいませ。
片桐） こんにちは。
るい） こんにちは。
（片桐と目が合い、
ドギマギしてしまうるい）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
西山） モモケンはやなあ･･･。うん？
（店を指さす和子）
（店の方を見る西山と平助）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
るい） これ、お預かりしとったシャツです。
片桐） いつもありがとう。
今日はこれ、お願いします。
るい） はい。
（背広を受け取るるい）
片桐） 今日もO・ヘンリー？
るい） あ･･･はい。なかなか、
読み終わら
んもんじゃから。
片桐） ああ、数が多いからなあ。
るい） ちょっとずつ、楽しみょうります。
片桐） 面白いのはあった？
るい） 私のお気に入りは、「善女のパン」です。
片桐） 「善女のパン」？
どんな話やったかな･･･。
るい） パン屋の女主人の、ミス・マーサのお話
です。いつも、安（やし）い、古（ふり）いパンだ
け買うお客さんのことが、気になっとるんです。
「貧しい画家らしい彼は、もっといいパンを買
いたくても、買えないんだわ。でも、包みにパ
イやマフィンを忍ばせたりしたら、彼のプライド
を傷つける。ある日、ミス・マーサはとっさに思
いついて･･･。男性のパンに、こっそりと、バタ
ーを塗りました。
（るいのイメージの中では、ミス・マーサ役
はるい。貧しい画家役は片桐）
るい） ミス・マーサはその日、ずっとドキド
キして過ごします。男性がパンをかじって、
自分の、ちょっとしたいたずらに気付いた
瞬間のことを想像して･･･。彼は驚いて、
それから、バターを塗った人のことを、考
えてくれるかしらって。でも･･･。
（るいのイメージ）
男性） このおせっかいの老いぼれ猫！
お前のせいで何もかもが台なしだ！
るい） 彼は建築の製図を描いている人で、
古いパンは、食べるんじゃなくて、その消
しゴムとして使われてたんです。３か月か
けて描いた製図が、最後の最後に、バタ
ーのせいで台なしになった。そう聞かされ
たミス・マーサは、青い水玉のブラウスを
脱ぎ、また、古いサージに着替えました。
おしまい。
（拍手をする片桐）
るい） あっ、いやじゃ私･･･
一人で、入り込んでしもうて。
片桐） ハハッ、いや面白いなあ。
るい） はい。本当におもしれえお話で。
片桐） あっ、いや、
そうやなくて、あなたが。
るい） えっ？
片桐） そんな皮肉な話を、お気に入りやて
言えるあなたが、面白いと僕は思います。
（こっそり見ている和子たち）
片桐） せやけど、ミス・マーサはその
客に訴えられるかもしれんなあ。
るい） えっ？
片桐） 損害賠償請求をされる
可能性はある。
るい） フフッ、そねん感想を持つたあ、
片桐さんの方が、よっぽどおもしれえわ。
片桐） ハハハッ、そうか？
そしたら、これ。
るい） ちょうど頂きます。
片桐） ありがとう。
るい） ありがとうございました。
（丁寧に頭を下げ、
手提げ金庫にお金をしまうるい）
（ふと、居間を見る）
（目をそらし、
麦茶を飲む和子と平助と西山）
（預かった背広のポケットの中を
確かめるるい）
るい） いけん。ポケットに何か、
入ったままじゃ･･･。
（取り出したるいの手が止まる）
和子） 何か、大事なもんか？
るい） あ･･･い･･･いいえ･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜＞
（るいの手に、
映画「椿三十郎」のチケット）
（裏に、「るいさんへ こんどの日曜の昼、
よかったらご一緒しませんか。片桐」と
書かれている）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
和子） るいちゃん。
洗濯ものここ置いとくよ。
（部屋の戸を開ける和子）
（姿見の前でワンピースを着たるい）
るい） あっ！ お･･･おばさん･･･。
和子） それ、最初に、ここ着た時
着とったワンピースやな。
（淡い虹色のワンピース）
和子） デートか？
（俯くるい）
和子） やっと出番が来たなあ！
るい） 春もんじゃけど、ええじゃろうか？
和子） 大丈夫、薄手やから、着られる。
（和子もうれしそう）
和子） アッハッ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜日曜日＞
るい） 本当に、これでええじゃろうか。
和子） 大丈夫。かいらしいかいらしい。
るい） じゃけど･･･。
和子） 忘れもんないか？
お財布、ハンカチ、ちり紙。
るい） あっ、ハンカチ、ゆうべ洗うて･･･。
平助） こっちや。
（アイロンをかけ、びしっと畳む平助）
平助） 楽しんどいで。
（差し出されたハンカチを受け取るるい）
るい） ありがとうございます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（るいが小走りにやってくる）
（映画館の前に片桐）
（片桐の前へ行き、お辞儀をするるい）
片桐） よかった。
ミス・マーサのバターみたいに、
全部ぶち壊しにしてしもうたら、
どないしょうかと思った。
るい） フフフッ、フフッ。
（微笑み合い、映画館に入っていく２人）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（満員の客席に並んで座り、
スクリーンを見つめている、るいと片桐）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜表＞
片桐） あ～何やまだ頭が
ぼ～っとしてるわ。
るい） 私もです。始まってすぐ、
物語に引き込まれてしもうて･･･。
片桐） そうそう。あの最初のシーン。
三十郎はああ見えて論理的で、
弁護士やったら優秀やったやろなあ
と思うて見てたわ。
るい） 本当に、
お仕事熱心なんですね。
片桐） まだ･･･時間ええかな？
るい） えっ･･･。
片桐） よかったら、もうちょっと、
話がしたいなあと思て。
るい） 私も･･･私も、もっとお話が
してえです、片桐さんと。
片桐） そしたら、どうしよう･･･。
せっかくやから、食事でもしようか。
あっ、近くにおいしいレストランが
あるんやけど。
るい） うれしいです。
是非、連れてってください。
（風の音）
（ワンピースの裾を、
両手で押さえるるい）
（風に煽られた前髪も押さえる）
（恐る恐る、顔を上げるるい）
（強ばった顔でるいのおでこの
傷を見ている片桐）
片桐） あっ･･･え～っと、何やった･･･。
そうやレストランや。すぐ近くやねん。
大学の先輩に教えてもろた店で、
何でもおいしいんや。オムライスも、
ビーフシチューも･･･。
るい） すみません。
やっぱり、帰ります。
今日は、ありがとうございました。
さようなら。
（俯いたままお辞儀をし、道を行くるい）
（小走りから駆け足になり、前髪を
手で押さえ、人混みの中を走る）
（つまづいて転ぶるい）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
るいは、惨めでした。
勝手に浮かれて。
たたき落とされて。
自分は、
ミス・マーサよりも惨めだと、
思いました。
（ぼんやり座ったるいの前に、紅茶）
（店内が暗くなる）
（キョロキョロするるい）
（ライトに照らされるステージ）
（拍手）
（５人編成のジャズバンド）
（中央で、トランペットを吹く、
紫のスーツに、リーゼントヘアの
スタイリッシュな男）
そのトランペッターは、
るいがひそかに、宇宙人、
と名付けた、謎の男でした。
Rui discovered the trumpet player
was the mysterious man she'd
secretly named the "alien".
（フロアのテーブル席には、白いスーツの
すかした男や、熱いまなざしでトランペッ
ターを見つめる、オシャレな女もいる）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
桃山剣之介の映画の看板から ↓
「棗黍之丞 女狐乱れ桜」
女には裏がある。
悪党には欲がある。
今宵も黍之丞見参！
暗闇でしか、見えぬものがある。
暗闇でしか、聴こえぬ歌がある。
黍之丞、見参！
セリフはなかなかいい感じなんだけど～ｗ
桃山剣之介ネタは最後に繋がるのかもね。
片桐との嬉し恥ずかし初デートは映画鑑賞。
王道のデートだね。このあとお食事でもと続
くはずだったのに･･･。いたずらな風が、るい
の前髪を揺らし、額の傷痕を見られてしまう。
こう来るか～。そしてやっぱり動揺しちゃうの
か～。るいもね～傷を治してもらえたのに･･･。
親の因果は子に報い、選択を間違えるDNA
は健在だ。このDNAは次世代まで続くのか？
そしていよいよトランペッター宇宙人が登場。
トランペットといえば、もしかして･･･あの子？
あの人につながる人なのかしら？ と期待♪
皆様、あけまして、おめでとうございます！！
「カムカムは」３日から始まりますね。今年も
どうぞよろしくお付き合いくださいますように。
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