「スカーレット」 第150回（最終回）
第25週 「炎は消えない」
炎は消えない
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直子） 海やぁ～！
信作） おっ、ほんまや！ 海やぁ！
百合子、海やでえ、ハハハ…。
（琵琶湖のほとりに集まる武志たちと喜美子）
喜美子） 武志。
武志） おう。
喜美子） 日本一の湖や。
武志） うん。
喜美子） よう見とけぇ、
こっちの心も大きなるで。
大輔） 皆さん！ 一緒に写真撮りましょ。
よ～し、ほないくでぇ。はいチーズ！
（シャッター音）
大輔） はいオッケー。
信作） 撮れた？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
４月、武志は、桜と桃と交わした、
ピアノの発表会を見に行くという
約束を果たすことができました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（工房で作品を作る武志）
（喜美子も作品を作っている）
（武志を見る喜美子）
（作品作りに没頭している武志）
（再び手を動かす喜美子）
（手を洗い、喜美子の作品を見る武志）
武志） お～ほほっ。すごいな。
う～ん…。
（手を洗い、武志の前に立つ喜美子）
喜美子） ギュ～したろか。
武志） えっ。
喜美子） ギュ～したる。
武志） えっ…。
喜美子） ギュ～してええ？
武志） お母ちゃん。
喜美子） うん。
武志） ええに決まってるやん。
喜美子） ほな。
武志） あっ、いや待って、うそうそうそうそ！
やっぱ取り消しや。うそ、うそや。
喜美子） 何で！？
武志） いや、もう年やで、気恥ずかしい。
喜美子） ええ言うたやん。
武志） いや～…。そ…いや…。
（武志を抱き締める喜美子）
武志） あっ…あ～もう。
喜美子） ギュ～！
武志） うわ～！ 苦しいうお～！
喜美子） ハハハ…ギュ～！
武志） い～やもう分かったて。
喜美子） アッハッハッ。
武志） 幸せや。
喜美子） えっ。
武志） 幸せやで。
喜美子） 幸せか？
武志） 幸せや。
喜美子） 幸せやなあ…。
武志） ありがとう。
何？ 何何？
喜美子） ギュ～！
武志） 何で…もう苦しいってもう！
喜美子） 幸せやなあ武志！
武志） もうやり過ぎやでもう！
喜美子） 幸せや～！ ギュ～！
武志） いや～！ 無理無理無理無理！
喜美子） おなら出せやおなら。
武志） おなら出るてほんまに。
喜美子） 出せ出せ～。
武志） 何で…何でよもう、苦しいわ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
２年後・春
武志は、26歳の誕生日を前にして、
旅立ちました。
＜工房＞
喜美子） どうぞ。
大崎） ああ。
喜美子） あれが、武志の作品です。
大崎） あ～これか…。
喜美子） 手に取って見てやって下さい。
大崎） いいんですか？
喜美子） どうぞ。
大崎） へえ～。
わあ～きれいですね。
武志は作品を残しました。
武志の作品は、生きています。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
喜美子） 先生の、クールいう
イメージですけど…。
大崎） ええ。
喜美子） こういうのはどうや
思うんですけどね。
大崎） ああ～はい。
喜美子） うちが、
このお皿を、入れますんで、
出したら、それをかけて下さい。
大崎） あ、いや…
意味がよく分からないんですけど…。
喜美子～ あ～釉薬が入ってるんですこれ。
大崎） ああ…あっ、これ…。
喜美子） ああ！ 出したら…。
大崎） すいませんすいませんすいません。
喜美子） それを、ここに向かって、
かけてくれれば。
大崎） えっえっ、かけるとどうなるんです？
喜美子） そやし模様になるんです。
大崎） あっ、そういうことなんだ。
喜美子） 先生のイメージで。
大崎） はい。
喜美子） ほな。
大崎） ああ、緊張するな。
喜美子） ハハッ。
大崎） あっ、ちょっと、待って。
亡くなる３日前に、握手をしたんです。
集中治療室で…。
目を、少～し開けた時があって…。手が、
こう動いたんで、大丈夫だよって、握って
あげたら、握り返してくれたんです。
意外にも、力強くて…おおっすごいなって。
こっちも、両手で、武志君の手を、
そっと、握り返して…握手したんです。
（手の平を広げて見せる大崎）
喜美子） フフ…。
大崎） フフッ。
じゃあ、始めましょうか。
喜美子） はい。
大崎） うん。お願いします。
喜美子） よ～し、ほないくでぇ。
（器に釉薬をかける喜美子）
喜美子） はい！
大崎） はい。こうですよね。
喜美子） おうおうおう。
ええええええええ。
大崎） ああ…いいですか。
喜美子） ほんで振ります振ります。
大崎） はい…。
喜美子） 振って下さい振って下さい。
ええやんええやんええやん！
大崎） えっ、合ってますか？
喜美子） ええ！
大崎） こうですか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（紅葉の色づいた庭）
（居間で、喜美子が一人食事をしている）
八郎） おう。
喜美子） おう。
八郎） 何食べた？
喜美子） たぬきそば。
八郎） おうええな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（縁側でみかんを食べる喜美子と八郎）
喜美子） 長崎何しに行くん。
八郎） 僕も挑戦することにした。
江戸時代の、卵殻手（らんかくで）の
研究されてる方がいてはんねん。
喜美子） らんかくで…。
八郎） うん。卵の殻みたいに、
軽うてうっすい磁器。
それをやってみたい。
喜美子） ふ～ん。ええな。
八郎） 名古屋引き払て、今度は長崎や。
喜美子） あんな…。
八郎） うん？
喜美子） うち武志に…
死なさへん言うてしもた。
絶対死なさへん。
お母ちゃんが生かしたる言うた…。
エゴやな。うちの悪いとこや。
なんとかしたかった…
なんとかしてやりたい思うてた。
そんなん無理やのにな。
八郎） うん…。
あんな、武志に、お義父さんと
あかまつで飲んだ話した。
喜美子） いつ？
八郎） 武志が産まれた日。
喜美子） うん…。
八郎） うれしゅうてなぁ、
武志が産まれたんがうれしゅうて…。
おしぼり、つまみにして食べる
とこまでいったで。
（笑い声）
喜美子） 武志何て？
八郎） うん？ 聞いて笑うてた。
喜美子） フッ。
八郎） ほんで…
「お母ちゃんに言うといてほしい。
俺を産んでくれてありがとう。
ああやっぱ言わんでええ。
言わんでええ言わんでええ！
気恥ずかしい、なしなしなし！
取り消しや！」。言うてしもうた。
喜美子） 聞いてしもた。
八郎） ハハハ…。
喜美子） ありがとう。
八郎） また会って話しよな？
喜美子） うん。
次会う時は、陶芸家、十代田八郎か。
八郎） せや！
すぐ挫折して帰ってくるかも。
喜美子） 帰ってくんな。
八郎） ハハハハ…。
喜美子） 一生懸命やってこい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜古い家並みが続く坂道＞
（武志と真奈が歩いた道を、
喜美子が一人歩いている）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
百合子） ほんで、信作さん、おにいさん
に会いに長崎に遊びに行くぅ言うてん。
照子） ふん。
百合子） 一人でやで？
照子） えっ、ほな百合ちゃんかて
好きなことやったらええやん。
百合子） うちは、子どもらの世話して
お義父さんお義母さんとサニーやって、
ほんでな？
照子） うん。
百合子） 次はおかあさんコーラスやんねん。
照子） おっ、ええなあ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜かわはら工房＞
（作品を作っている喜美子）
照子） 家庭菜園照子でとぅ～。
百合子） 百合子でとぅ～。
住田） いらっしゃ～い。
照子） ああこんにちは。
住田） こんにちは。
百合子） 見て～立派なん出来たでえ。
喜美子） うわっ、ほんまに。
百合子） ほら上手になったやろ。
喜美子） 立派やん。
百合子） 赤カブも出来たしな。
喜美子） うわっ、うまいこと出来たな。
照子） 百合ちゃんのカブうっまいでぇ、甘い…。
喜美子） うん、これうまいやろうなあ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜工房＞
（一人作品を作る喜美子）
（器の表面に車輪の模様を刻んでいく）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（穴窯の前に飾られた小さな
狸の置物とお守りのかけら）
（窯のふたを開ける）
（炎を見据え、薪を投げ込む喜美子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すごいな。すごいな。すごいな、「スカーレット」！
「スカーレット」は最後まで「スカーレット」だった。
「スカーレット」らしい最終回だった。ありがとう！
役者に礼。脚本に礼。関わった全ての人に礼！
冒頭の「よう見とけぇ、こっちの心も大きなるで」
の台詞は、初回に常治が喜美子に言った台詞。
喜美子の中に、常治はずっと生きてるんだなぁ。
常治） ああ。よう見とけ。
こっちの心も大きなんでぇ。
喜美子） 心が？ 大きいなるん？
常治） ああ。琵琶湖いうてな、
何ちゅうたかて日本一の湖やからな！
喜美子のギュ～は、八郎が家を出て行った後、
ちび武志をギュ～っとした時を、思い出させる。
喜美子） ギュ～してええ？
武志） ええに決まってるやん！
喜美子） ギュ～！
武志） うわ～！ やり過ぎや～！
喜美子） ギュ～！
武志） おならが出る～！
う～やり過ぎや～！
喜美子） アハハッ。
常治もおならしてたっけ。ホント…おならで泣か
されるなんてね。みんなが、心の中に生きてる。
武志） 幸せや。
喜美子） えっ。
武志） 幸せやで。
喜美子） 幸せか？
武志） 幸せや。
喜美子） 幸せやなあ…。
武志） ありがとう。
視聴者も…いや、私も幸せだったよ。ありがとう。
心の息子だったよ武志。ありがとう…ありがとう。
「絶対に死なせへん」と言った自分のエゴを、悪
いところだと反省する喜美子に、年月を感じた。
エゴでも、武志にとっては、心強かったと思うよ。
八郎） ほんで…
「お母ちゃんに言うといてほしい。
俺を産んでくれてありがとう。
ああやっぱ言わんでええ。
言わんでええ言わんでええ！
気恥ずかしい、なしなしなし！
取り消しや！」。言うてしもうた。
喜美子） 聞いてしもた。
八郎） ハハハ…。
喜美子） ありがとう。
八郎） また会って話しよな？
喜美子） うん。
次会う時は、陶芸家、十代田八郎か。
八郎） せや！
すぐ挫折して帰ってくるかも。
喜美子） 帰ってくんな。
八郎） ハハハハ…。
喜美子） 一生懸命やってこい。
縁側の２人の会話に、同じ時間を共有した歴史
が感じられてね…泣いた。おしぼりをつまみって
言葉だけで…フカ先生を思い出せるんだよねえ。
重苦しかったあの日の縁側のみかんは、穏やか
に語り合えるみかんになった。長崎に行くという
八郎は、「さいなら」の別れではなく、「またな」の
旅立ちに。手をつなぎ、手を離し、そして再び…
また、時々手をつなぎ、手を離す緩やかな日々。
人にはそれぞれ、ちょうどいい距離感があって。
喜美子と八郎は、今がちょうどいいんだろうなぁ。
ええなぁ。ええなぁ。ええなぁ。それで…ええよぉ。
それぞれが知っている武志の話を、ゆっくりと…
言うてしもたり…聞いてしもたり（笑）してほしい。
炎で始まり、炎で終わった。炎は消えない。炎を
見据える喜美子は、おそろしいほど美しかった。
すごいな。すごいな。すごいな喜美子。すごいな。
（４回言ってしまった。てか、エンドレスで言う！）
脚本家さんのインタビュー記事を読んだら、いろ
いろ腑に落ちて。八郎の扱いでもやもやした方
は、ぜひ読んでほしい。ヒーローであってほしか
ったかもしれないけど…八郎はやっぱり昭和の
男で…十分頑張った人に描かれていると思う。
（八郎の扱いが可哀想だと言うのは、ある意味、
八郎に失礼だと思う。八郎はヤワじゃないよ～）
喜美子が一人道を歩いているシーンが、武志と
真奈が歩いていた道だったと、副音声を聞いて
知ってから、もう一度見直して…泣いた。もうね、
黙ってこういうのやるんだもんな～見過ごすとこ
ろだったよ。（セリフの書き起こしのおかげで気
付けたこと多し！）日々、ごはんを食べて仕事し
て、寝て起きて、恋をしたりしなかったり…泣い
たり笑ったり、何があってもそうして生きていく。
いつもと変わらない（だけど特別な）１日がこん
なにも愛おしい。この半年、本当に幸せでした。
大好きな素敵なドラマの感想が書ける幸せ…。
まるで苦行のような時期があっても、たまにこう
いう奇跡があるから…やめられないんだよねえ。
半年間、お付き合い、ありがとうございました！
コメントのお返しがものすごく遅くなってますが、
必ずお返事はしますので、お許しくださいませ。
次の「エール」でも、またお付き合い願います♪
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