大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第21回~櫻の園 | 日々のダダ漏れ

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大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第21回~櫻の園

 

 

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志ん生) 大正9年、悲願の金メダルに惜しくも

 手の届かなかった我らが韋駄天。まあ、16位

 だから、惜しくもねえんですがね。

 

**********

 

(足元に槍が刺さる)

四三) ばばっ!

女性) (独)

四三) うん?

女性) オッケー?

四三) ああ…大丈夫。

(短パン姿の体格のいい女性が槍を抜き、

 牧場のような広場に戻っていく)

四三) おなご?

 

**********

 

(袖なしのシャツに短パン姿で走る女性)

四三) お~。

(ブレザー姿で、馬に乗った女性)

(槍を投げる女性)

(子どもを抱き、ボールを蹴る女性)

四三) ハハハ…。

(カバンからカメラを取り出す四三)

四三) あ~…エクスキューズミー?

 キャン アイ テイク ア フォト?

 ピクチャー オーケー?

女性) ヤー。

四三) ダンケシェン。

(槍を構える女性)

四三) スリー ツー ワン…。

(シャッター音)

四三) あ~よかです。オーケー。ダンケシェン。

 アー ユー アン アスリート?

女性) (独)いいえ、少し学校で投げ方を

 教わりました。

四三) シュ…?

女性) シューレ。

四三) シューラン? 

女性) ンン…スクール。

四三) あ~スクール。スクールで?

女性) ヤー ヤー。

四三) そぎゃんですか。

女性) (独) どこから来ましたか?

四三) うん?

女性) ホエア ユアー ホーム?

四三) ホーム?

女性) ホーム。

四三) あ~! ジャパン。

女性) ジャパン?

四三) あっ、ちょっと、ちょっと待って。

(日の丸のユニフォームを広げる四三)

四三) ドゥー ユー ノウ マラソン?

 スッスッハッハッ…。

女性) マラソン?

四三) マラソン。ヤー ヤー ヤー。

 オリンピック、マラソンランナー。

女性) (独)本当に!? アントワープに

 出たの? え、本当に! みんな来て!

 オリンピックに出たんだって! マラソンで。 

 すごいじゃない!

四三) あ~アイム…16位。

 アイム シックスティーンだけん。

女性) (独)16歳!? うそでしょ!

四三) 何? ああ…。

女性) (独) 彼女の亭主は、

 ベルリンオリンピックを目指していたの。

四三) ん?

女性) (英)彼女の亭主は、ベルリン

 オリンピックを目指していたの。

四三) えっ? そぎゃんね。

女性) (独)でも中止になって、戦争に

 駆り出され、この槍は、夫の形見です。

女性) (英)彼女の亭主は、

 戦争で死んでしまった。

(帽子を脱ぎ、女性を見つめる四三)

(涙をぬぐう女性)

(仲間の女性が槍を掴む

女性) (独)ドイツは敗戦国で、

 アントワープは不参加だし、槍でも

 投げなきゃやってられないわよ。

女性) (独)そうよ、ちょっとどいて!

 くさったれ~!

(渾身の力で槍を投げる女性)

女性) くそったれ~!

女性) どうぞ、あなたもやってみて。

四三) えっ、おるも? いやいや…。いやいや…。

(槍を持たされる四三)

(全身で槍を投げる、地面につんのめる四三)

四三) アハハハハ!

(四三と一緒に両手を掲げる女性たち)

 

**********

 

大正9年(1920) 秋

 

<ミルクホール>

シマ) 女性が?

四三) うん。こぎゃん格好で、槍ば投げよった。

 野口君より、よう飛んどった。どぎゃんね?

シマ) 髪増えましたね。

四三) あ~…あっ、おる? ハハハ、そう。

 う~ん、伸そうと思うばってん…

 増えるばっかで、いっちょん伸びん。

シマ) 素敵です。

四三) またまた…。

(ドイツ人女性の写真を見るシマ)

シマ) こんな凜々しい姿で運動できたら、

 爽快でしょうね。

四三) あ~…あっ、それね? うん。いやいや

 いや、俺も、たまがったばい。敗戦国ドイツ

 のベルリンの広場で、女子が体育ばしよる。

 赤子ばおぶったまんま、ボールば追いかけ

 る母親もおった。母は強か。おなごは強か。

 不屈の闘志もこっから生まれる。ドイツは立

 ち直る。女子はもう立ち直っとる。そう…女子

 ばい。おなごの番たい。シマちゃん。

シマ) えっ?

(そばに置いた槍を握る四三)

四三) おなごの体育ば俺はやる。

 だけん、まだ間に合うと。

シマ) 間に合う? 何が? 何に?

四三) シマちゃんが、オリンピックに。

シマ) 私が?

(ドアベル)

シマ) あっ…。

店員) いらっしゃいませ。

(四三の後ろに男性)

四三) うん。まだ、走っとっとでしょ? ねっ?

 いや~俺も、どうせやるなら、本腰で、次の

 オリンピックに、女子の選手ば、送り込むぐ

 らい…。えっ、誰?

シマ) あっ、あの…日本橋の、百貨店に

 お勤めの増野さんです。二階堂先生の

 代理で、お見合いをしたんです。それが

 ご縁で、時々…。

四三)  あ~そう、そぎゃんね…へっ?

増野) マラソンの金栗さん、ですよね?

 おうわさはシマさんから聞いてます。

 お会いできて、光栄です。

(握手をする2人)

四三) あっ…どうも。

シマ) 奥様には、もうお会いになられました?

 

**********

 

(正明を抱いたスヤが播磨屋の表で

 近所の子どもたちと遊んでいる)

スヤ) おとうちゃん…。

四三) スヤ…。

スヤ) おとうちゃんばい!

四三) おい…何しよると?

スヤ) 待っとりました。

四三) 俺ば?

スヤ) はい! よいしょ。

 辛作さ~ん、うちん人帰ってきた~!

四三) ばっ…たまがったばい。

(泣きそうになりながら、新しい看板に目がとまる)

四三) 「ハリマヤ製作所」?

 はっ…ああ…はあ~。

ちょう) 金栗さん!

 まあ、心配したのよ~。便りもよこさず。

辛作) お帰り! お帰り! 何だいその頭。

四三) すいませんでした! 皆様の、

 期待に応えられんかったけん。

辛作) バカ野郎! 誰もあんたを責める

 人間なんかいやしねえよ。うちだって…

 なあ勝蔵?

勝蔵) ひあ! ハリマヤ製作所になりました!

四三) あ~製作所。もう大きゅうなって。

辛作) ちょっとな。ハハハ…。

ちょう) あがってあがって。荷物…。

四三) あっ、ありがとう。

辛作)  かばんかばん、ほらほら…。

 

**********

 

<2階の部屋>

スヤ) 悔いのなかですか?

四三) うん。

 俺ももう、30だけん…吹っ切れた。

 引退たい。4年後のパリは、後輩に

 託すばい。スヤに…金メダルば、

 見せられんかったばってんが。

スヤ) だけん言うとるでしょうが。無事

 に帰ってきてくれたら、何も要らんて。

 これば食べたら、お義母さんに電報ば

 打ちまっしょう。それから荷造りばして、

 熊本に帰りまっしょう。

四三) それが、スヤ…。

 

(回想)

治五郎) 女子スポーツか…。

四三) はい。女子の、体育の普及は、

 国力増進への近道と考えます。

 

スヤ) おなごの体育?

四三)うん。例えば、スヤは、

 自転車に乗りよったじゃなかね。

スヤ) 自転車もスポーツかね?

四三) うん! オリンピックの、競技にもなっとる、

 立派なスポーツばい。スヤが、自転車で、足腰

 ば鍛えたけん、ほれ、正明は、病気もせんで、

 すくすく育っとる。

スヤ) そぎゃんね。

四三) 女子が、体育に関心ば持ち、実践

 すっと、体ん丈夫か子の生まれる。なっ? 

 人は健康に、国は豊かになるったい。

スヤ) ふ~ん。

四三) うん。

(スヤに見つめられ、目をそらす四三)

四三) それを…嘉納先生に、

 相談ばしたら、東京の…。

 

(回想)

治五郎) 竹早の第二高女がよかろう。

 竹早で、革命を起こしてみたまえ。

四三) はい!

 

スヤ) そんなら、熊本には帰らんとね?

四三) すまん。

スヤ) 熊本にも女学校はあるばってん、

 熊本ではでけんとね?

四三) いや、でけんことは…なかばってんが。

スヤ) 4年置きにこぎゃん話ばしとるばってん、

 4年にいっぺんだけ言わせてくれんですか?

 一緒に暮らせる日ば夢みて、それば心ん支

 えに日々生きとります。マラソンの金栗、駅伝

 の金栗、次は女子スポーツの金栗ですか。

 池部なのに! たまには池部四三にもなって

 くれんですか!? こぎゃんこつ言いたくなか

 ばってん、考えてしまいます。こん人は、熊本

 に帰るとが嫌で、そん口実に、駅伝…。

四三) 熊本にはそのうち帰るけん!

(正明の泣き声)

四三) ばってん…それは今じゃなか。

(トランクに荷物を詰めるスヤ)

スヤ) 分かりました。うちは明日にでも…。

四三) おってくれ! 

(背中からスヤを抱きしめる四三)

四三) お義母さんには、俺から話すけん。

 お前はそばにおってくれ。

(正明の泣き声)

スヤ) 正坊、ちょっと待っとって。

(振り向いたスヤを抱きとめる四三)

四三) 東京で、一緒に暮らそう。

スヤ) はい。

(抱きしめた腕に力を込める四三)

(潤んだ瞳で微笑むスヤ)

 

**********

 

志ん生) おいおい…お~い! おっ…あっ、

 くそっ。何だか違うドラマみてえでしたな。

 今日の「いだてん」は、ラブストーリー

 仕立てで、お送りいたします。

 

**********

 

<浜名湾>

 

志ん生) 河童衆も、アントワープの

 敗北と、向き合っていたようで…。

 

政治) フンッ!

庄吉) 日本泳法がオリンピックで通用せん

 て、どういうことだいやぁ!? 内田君!

小野田) 詳しく教えて下さい。

政治) クロールですか!?

庄吉) クロール?

内田) ああ。両足で水面を打ち付け、

 両腕を猛烈に振り回す。

(言われたようにやってみる一同)

内田) 見てくれは悪いが、

 とにかくスピードが違う。

政治) 呼吸は? 顔を水につけた

 まんまじゃ、 長く泳げんら!

男性) そうでぇそうでぇそうに決まって…。

内田) それがやつら、

 実に器用に首をひねって、息をするんだ。

 僕と斎藤さんが、

 練習用プールで泳ぎ始めると…。

 

(回想・アントワープオリンピック練習用プール)

外国人選手) おい! あれ、あれ見てみろよ。

 顔を水につけずに、ずっとこっちを見ながら、

 変な動きをしてるんだよ。

外国人選手) あれは選手なのか?

外国人選手) まるでタコのようだ。

 

内田) 大爆笑だよ。結果は最下位。

 分かるか? まーちゃん。俺たちは、日本泳法

 を捨てなくちゃ駄目だ。クロール。クロールじゃ

 なくちゃ…駄目なんだよまーちゃん。

 

**********

 

(ふんどし一丁の政治)

孝蔵) 泳いじゃいけないんじゃないのかい?

政治) チクショー! 

 何がクロールだ~! うわ~!

孝蔵) あっ…おいおい…。

(櫓から水面を見る孝蔵)

政治) なにがクロールだ…なにが…。

孝蔵) 大丈夫じゃねえか。

政治) チクショー!

(政治が脱いだ制服のポケットから

 財布を抜き取る孝蔵)

孝蔵) 東京にけえれるな。

 

志ん生) 財布を拾った孝蔵君、夢に

 なっちゃう前に、列車に飛び乗った。

 

**********

 

<浅草・十二階界隈の屋台>

孝蔵) 酒もらうよ。

店主) はいよ。

孝蔵) うん?おっ、 突き出しに黒豆か。

 おやじさんも通だねえ。

清さん) 孝ちゃん昔っから好きだったもんな。

孝蔵) おっ…清公に小梅じゃねえか!

清さん) お帰り、孝ちゃん!

小梅) お帰り。

清さん) 俥儲かんなくて、やめて所帯持った。

孝蔵) 小梅と? いや…えっ? 何だそりゃ!

 えっえっ…そりゃちょっとおかしいんじゃ

 ねえのかい? だってよ…俺はおめえに、

 間男の濡れ衣着せられて東京にいられ

 なくなったんだぜ?

小梅) すまなかったよ。だけどさ、いろんな男

 と恋に落ちたけど、こんだけ近くにいて何も

 なかったのは清公だけなのよ。フフフ…。

孝蔵) 俺も何もなかったよな? 俺も何にもな

 かったのに指詰められそうになってたよな?

小梅) 何もないのに世話焼いてくれるって

 ことは、何かあったらもっと世話焼いてくれ

 んじゃないかって思ったの。フフフフ。

清さん) あっ、ワニラ食うかい? 懐かしいだ

 ろ? あの、食ってる間ワン公がにらんで…。

孝蔵) 知ってるよ、それは。

小梅) 今じゃ私の方がぞっこんなんだから、

 分かんないもんよね~。

(包丁を構える清さん)

孝蔵) 何だよ…。

清さん) 間男がにらんでら。

(屋台の向こうに美川)

孝蔵) 間ニラだな。

小梅) しつかこねこん男は! いつまっでん

 そぎゃん、負け犬んごたる目して立っとっ

 たっちゃどぎゃんもこぎゃんもならんけん!

 さっさと熊本に帰りなっせ!

(美川を見据え、つぶやく小梅)

小梅) (小声で)たっしゃでね。

一同) お~!

小梅) 次来たら、刺すけんね!

美川) コンチクショー!

(走り去る美川)

孝蔵) あれ誰だい? おい…おいあれ誰だい?

小梅) さあね~。

清さん) 見たことあんな。

孝蔵) 何か見たことあんな…。

清さん) 俺多分会ってるんだよな。

孝蔵) 俺も何か会った気がすんだよな。

 

**********

 

志ん生) とにかく私は、三遊亭円菊って

 名前で、二ツ目から再出発しました。

 

孝蔵) 「え~これからもひとつ夫婦同様に

 おつきあいを願います」。「せんぎょく、せ

 んだいにいってこれを学ばざれば、きん

 たらんと欲す」。「これかい? 分かんねえ

 言葉ってのは。えっ? え~何てったの?

 今。えっ、金太郎干す? へへへ、そんな

 こと干されても困っちゃう」。

 

**********

 

大正10年(1921)年4月

<東京府立第二高等女学校>

 

五りん) 片や韋駄天金栗さんは、竹早町に

 ある、東京府立第二高等女学校、通称竹

 早(たけはや)へ赴任いたします。あっ、こ

 こからは私、五りんが務めさせて頂きます。

知恵) 五りん!

五りん) 竹早といえば当時、お茶の水と並

 ぶ名門女学校。女学生は、いい嫁、賢い

 母になるために厳しくしつけられました。

 

校長) お~これはこれは金栗先生!

 よく来て下さいました。いや~うちもね、

 お茶の水を見習って、体育に力を入れ

 なくてはならんと、話しておったんですよ。

四三) お~。

校長) ねっ? シマちゃん先生。

シマ) はい。

校長) よろしく、たのみますよ!

四三) はい!

 

**********

 

四三) シマちゃん先生と、同じ職場で働く

 ことになるとは、照れくさかね。あっ…。

シマ) 校長はああ言ってましたけど、実際は 

 たま~にいけ好かない男性教授が、人気

 取りのためにテニスを教えに来る程度で、

 体育と呼べる指導はいまだできてません。

四三) ふ~ん。

女学生) ごきげんよう。

シマ) ごきげんよう。

四三) ごきげんよう。

 ほう~そら腕が鳴るばい。行ってきます。

 

**********

 

<教室>

(席に着いた女学生が、一斉に見る)

 

お…女の園ばい。

 

五りん) むせかえるような独特なムードに、

 四三は、気後れしました。

 …が、何事も初めが肝心。

 

四三) こんにちは! おい…返事はどうした? 

 お嬢さん方。こんにちは!

学生たち) (小声で)こんにちは。

四三) か~声の小さかね~。えっ?

 うん? さては便秘か? うん?

 グッド モーニング!

学生たち) グッド モーニング。

四三) グーテンモルゲン! フフッ、ドイツ語

 ばい。ばってん、生まれは、熊本だけん。

(黒板に名前を書く四三)

四三) 金栗四三っちゅうもんばい。

 「かなぐり」じゃなかよ、「かなくり」たい。

白石) フフフフ…。

四三) ねっ、覚えとって下さい。

 担当は、地理と、歴史。ばってん…おるは

 体育ばやりに来た。これば見てくれ。

 

五りん) よしよし、出足は好調。気をよく

 した四三さん、一気に攻め込みます。

 

四三) ストックホルム、ベルリン、アントワープ。

 女子体育の状況ば見て、日本の女学生が

 こと、体育方面には、甚だしく後れ、劣ってい

 ること、非常に残念に思う。

(黒板に張り出された外国の女子選手の写真)

四三) 強健な肉体!

学生たち) 強健な肉体。

四三) うん!  それこそが、ほう…最高の美で

 ある。最も美しい。たくましく、凜々しか姿にな

 ってもらう! うん。え~早速、今日の放課後

 から、トレーニングば行う。あっ、強制はせん

 けん。来たいもんだけ、来たらよか。

 

**********

 

<放課後>

(白い体操着姿の四三が槍を手に

 校庭に立っている)

 

**********

 

<授業2日目>

四三) 女子体育の後れ。これは、欧米人と、

 日本人の、肉体的相違を抜きには語れん。

(裸の絵を見た女子生徒の悲鳴)

四三) 骨盤の、バ~ンとして、カモシカんご

 たる脚のスラ~ッとして、いかにも運動向き

 ばい。日本の女子はいかん。薄っぺらか胸、

 平べったかケツ、鶏ガラんごたる貧相な下

 半身! メリハリんなか~。魅力んなか~。

 ボリューム…そう、ボリュームばい! 運動

 ばして、ボリュームばつけんと。よかか?

 ボリュームばい。ボリューム!

 

**********

 

<播磨屋>

シマ) 年頃の娘に対して

 なんてこと言うんですか!

四三) すいません。

スヤ) そんな、スケベな人ではなかった

 ばってんが、欧米など回って、変わって

 しまったとでしょうか?

四三) な~んもスケベな気持ちじゃなかね。

シマ) 可児先生も、ひっどいもんでしたからね。

 

(回想)

可児) 骨盤がバ~ン、臀部がデ~ン。

 これが女。レディー。何も、恥じることはない!

 

四三) 違うて! おるはただ真剣に、日本から

 世界に通用する女子選手ば輩出しようて。

スヤ) そるがいかんとじゃなかね?

四三) 何が? 黙っとれスヤ。

スヤ) 何事も押しつけがましかとは

 女子は好かんけん。ねえシマさん?

シマ) はい暑苦しいです。

四三) あ~あ…あ~もう難しか~。

 男は…ハハッ、ケツば、蹴り上げとったら、

 勝手に走ったけんが…。なあ? もう、なあ?

 女子ん気持ちはいっちょん分からん。

 あっ、こん前言うとった、いけ好かん、

 テニスのコーチば…人気取りの。

 紹介してもらおうかね。

 

**********

 

四三) …永井先生でしたか。

永井) 女子高で、教鞭をとった先輩として、

 一つ君に助言しよう、

四三) あっ…はい。

永井) まず、服装がいかん。自分の一番

 気に入っとる服を着て、香水をつけなさい。

四三) 香水ですか?

 ばってん、男がそぎゃんもん…。

(香水をかける音)

永井) エチケットだよ。西洋では、常識だ。

(香水をかける音)

四三) あっ…。

永井) 女子の反応が、変わるぞ~。

(香水をかける音)

四三) あっ…。

 

**********

 

(オリンピックのユニフォームに着替えた

 四三が、永井にもらった香水を口の中

 にまで吹きかけている)

四三) ハハハハハ! とりゃ~!

(槍を投げる四三)

四三) グッドイブニング!

 やらんね? 槍ば投げてみんか?

 

**********

 

村田富江) 金栗先生って、

 なかなかのあぶさんよね。

 

五りん) あぶさんってえのは、当時の女学

 生の隠語です。アブノーマルのあぶさん。

 つまり、変わり者という意味です。

 

梶原) あぶさんっていうより、田紳(でんしん)

 じゃありませんこと?

 

五りん) 田紳は、田舎紳士の略。

 野暮くさい先生のこと。

 

溝口) シマ先生とバウだってうわさご存じ?

 

五りん) バウってのは熱烈に思い合うことで…。

 

梶原) シマ先生が、あんなスコドン

 相手にしますかしら?

 

五りん) スコドンは、少し鈍くさい人という

 意味で、あ~もう追いつかない!

 

村田) あ~もう見ていられませんわ!

 ご忠告しませんと。

梶原) ご忠告?

白石) 出た、富江さんのご忠告!

 

**********

 

四三) おっ? 1、2、3…4人か。グッドイブニング!

村田) もう、おやめになって下さい! みっともない。

四三) えっと…君は…。

村田) 村田富江です。先生はこの竹早が他校

 から何と呼ばれているかご存じでしょうか?

四三) 知らん。何て、呼ばれとるとね?

村田) シャンナイスクールです。

 

五りん) シャンは「美人」。シャンがない、

 つまり美人がいない学校という意味です。

 

四三) あ~そっで、シャン、ナイ!  アハ~

 これは一本取られたばい! 美人がおらん

 けん、シャンナイ。ハハ…。すまん。

梶原) 美人はおります。

四三) あっ…そぎゃんたい。うん。

 みんな、それぞれ、魅力のあるとばい。

村田) お世辞は結構です。ただでさえその

 ようにけなされておりますのに、運動など

 したら、色は黒くなる、手足は太くなる。嫁

 のもらい手がなくなります!

四三) 村田…。君らもそぎゃんね。

 さっさと嫁に行きたかとね。

溝口) 卒業までいるだなんて

 真っ平ごめんです。

梶原) 中退して結婚が理想ですの。

村田) ですから、体育もスポーツも必要ご

 ざいません。学校の外など走った暁には、

 いい笑いものになるだけです。

梶原) 先生方だって、スポーツの

 推奨などしておりませんわ。

溝口) 親もそう。かけっこさせるために

 竹早に通わせたわけではないとか。

村田) ですから先生、勤め先を間違えたと

 思って、諦め下さいまし。

四三) そうね…よう分かった

村田) では、ごきげんよう。

3人) ごきげんよう。

四三) 待たんね!

(4人に駆け寄る四三)

四三) (小声で)いっしょんだけ、

 先生の頼みば、聞いてくれんかね?

梶原) 何でしょうか?

四三) いっぺんだけ、投げてくれ。

梶原) 嫌よばかばかしい!

四三) し~っ。みんなが見とるばい。なっ?

 シマちゃん先生も見とる。なっ? このまま、

 諸君が教室に戻ったら、俺の、面目が、

 丸潰れたい。頼む。形だけでよか。

 1投ずつでよかけん。

梶原) どうなさいます?

白石) 無理! 私無理! 無理無理無理無理…。

溝口) 私も無理よ!

四三) オ…オリンピック選手ばい、これでも。

 頼む。俺の顔ば立ててくれ。頼む!

(前に倒れそうなくらい頭を下げる四三)

村田) 本当に1回ずつですか?

四三) もちろん。もう二度と無理強いはせんけん。

村田) 分かりました。

3人) えっ?

村田) 溝口さん、お先になさって。

溝口) そんな…。梶原さんこそお先にいかが?

梶原) 嫌よ。白石さんお先になさって。

白石) 無理! 無理無理無理無理無理無理…!

(仕方なく槍を手に取る梶原)

梶原) どのように?

四三) どぎゃんでんよか。

 自分の、好きなごつ、投げてみい。

 さあさあ…うん。ここから、投げてみい。

(両手で槍を握り、頭上に掲げ、一気に投げる梶原)

梶原) んっ!

四三) アハハハハ! よかよか~! まさか…

 両手で、投げるとは思わんかったばってん。

 次は…。溝口、ほれ。

溝口) それでは失礼して。

(槍をかまえる溝口)

溝口) こうでいいのかしら?

四三) うん、よかよか。

溝口) よっ。

(歓声)

生徒) すご~い!

四三) 飛んだ飛んだ~!

(まんざらでもない溝口)

生徒) 溝口さ~ん、溝口さ~ん。すてきでしたわ!

梶原) もう一度。今度は片手でいいかしら?

四三) もちろんたい。

 おい、梶原が、もういっぺん、投げるってぞ。

一同) 梶原さ~ん!

シマ) 頑張って!

梶原) んっ!

四三) お~アハハ! すごかね!

梶原) 溝口さんより飛びました。

四三) あれね、着物の、袖が、なかなら

 もっと飛んだね。さあ、村田、村田。

(羽織を脱ぐ富江)

(駆けつけるシマ)

(髪を束ねたリボンを解き、たすき掛けにする富江)

四三) 何か、叫んでみなっせ。

村田) 叫ぶ?

四三) ヨーロッパの女子も、何か叫んどった。

 野口君も、確か、「うりゃ~!」とか何とか。

 腹から、声ば出すと…んっ! 勢いのついて、

 飛ぶかもしれんけん。なっ? 何でんよかよ。

 うん。「お嫁に行きた~い」でん…。

 まあまあ、無理に、叫ばんでん…。

(槍を構え、踏み出す富江)

村田) くそったれ~! うお~!

(拍手と歓声)

生徒) すごい! すごいすごい…!

四三) 村田~! すごか~!

シマ) 村田さん、お見事!

四三) ねっ、どぎゃんね? どぎゃんね?

 気持ちよかね? ねっ、ねっ、ねっ?

村田) 先生!

四三) うん?

村田) 香水強すぎ!

四三) えっ?

村田) 臭い!

四三) えっえっえっえっ? 臭か? 臭かと?

(四三から一斉に離れる生徒たち)

四三) これ臭かと? 何ねな~。

 ほれほれ待たんか…。

 いや、ばってん…ばってんね、ばってんね、

 諸君らは、もう、皆、美しく、可憐な少女ばい。

 な~んがシャンナイスクールか。言いたか

 やつには言わせときゃよか。おるに言わせ

 れば、オールシャンばい! お世辞じゃなか

 よ、うん。日に焼けて、お日様ん下で、体ば

 動かして汗ばかいたら、もっと、もっと、もっ

 と、もっともっともっと、もっともっと、シャン

 になっとばい!

 

**********

 

(走り高跳びをする生徒たち)

四三) もっと声ば出して…さあいけ。

白石) おりゃ!

四三) あ~惜しか!

シマ) もっと脚を高く上げる。

村田) それ~!

四三) あ~アハハ。

梶原) や~!

四三) お~アハハ!

梶原) やった~!

四三) もっと出してみんか?

梶原) はい。

四三) うん!

 

**********

 

<ハリマヤ製作所>

辛作) よ~し、出来たぜ。

(裾を内側に巻き込んだ、提灯型の

 短い袴と、半袖のシャツを着たシマ)

四三) おっ…おお~! よかよか! 

 辛作さん。ありゃシャンばい。

辛作) 竹早の「T」が効いてるだろ?

四三) あっ、そっで!

辛作) ああ。

勝蔵) はい! どうぞ…どうぞ…。

辛作) ほれ。

勝蔵) どうぞ…どうぞ…。

シマ) あなたたちも着てみなさい。

村田) 嫌です。こんなの着て歩いたら、

 一巻の終わりですわ。

溝口) そうよ! だって足が

 ほとんど出てるんですもの。

梶原) 万歳したら、おなかが見えて

 しまいますわ。お嫁に行けません。

シマ) 嫁になんかいかなきゃいい~!

辛作) いやいや、そこまでは責任負えねえよ。

シマ) さっさと着替えて! 走るわよ!

四三) 早う。

辛作) ほらほらほらほら。

(体操着姿で飛び出していくシマ)

辛作) 嫁には行った方がいいと思うぜ?

白石) はい。

 

**********

 

(永井とテニスする体操着の富江)

村田) くそったれ!

 くそったれ! 

永井) あ~!

村田) よし!

四三) 村田~!

永井) 口を慎め! このじゃじゃ馬!

 

**********

 

<講道館>

治五郎) ハハハハハ…じゃじゃ馬か。

 大いに結構じゃないか。ハハッ。

 私の方はね、神宮競技場の、

 工事再開に、こぎ着けたところだ!

(競技場の模型を見せる治五郎)

四三) ばっ! おお…!

治五郎) へへへ…。

四三) そぎゃんですか!

治五郎) ああ!

(模型を見る四三とシマ)

四三) あれ? こ…これおる? 

 プラカードば持っとる。

シマ) あっ、女子の選手もいますね

治五郎) うん、思い切って置いてみたが…。

 いいね! 華やかになる。ハハハハ。

(女子選手の人形を手に取り、見つめるシマ)

 

**********

 

<ミルクホール>

シマ) これ。お返しします。

(見合い写真)

増野) 残念だな。

 両親も君を気に入っていたのに。

シマ) 今は…まだ…家庭緒入る気持ちには

 なれないんです。学校もようやく面白くなっ

 てきて…走るのも。

増野) 陸上ですか?

シマ) 女子の陸上は、オリンピックの、正式

 種目にもまだなってません。この先、永久

 に認められないかもしれない。でも、諦め

 たくないんです。だって、私まだ何も成し遂

 げてないから。

増野) 結婚して、子どもを産んだ人は、

 出場できないものですか?

シマ) オリンピックですか?

増野) あっ…無理か。

シマ) 無理、ではないけど…。

増野) だったら…出ましょうよ。うん。

 子ども連れて応援に行きます。

シマ) やめなくていいんですか?

増野) えっ? ああ…やめてくれって言うと

 思ってました? 続けて下さい。仕事も…

 走るのも。結婚のために何も犠牲にして

 ほしくないんです。もうそんな時代じゃない。

(シマの手を握る増野)

シマ) ありがとうございます。

 

五りん) く~っ…いたんですね~こんな物

 分かりのいい男が戦前に。この時代、しょ

 …職業婦人という言葉が、生まれますが、

 シマさんは、まさに、そのはしりで…。

(はなをすする音)

五りん) いや…すいません。もう今まで噺

 に出てくる男はみんな、飲む打つ買う走る

 ばっかりでしたから、もう。

知恵) やだ~。

 

**********

 

大正10年(1921)夏

 

<写真館>

スヤ) あっ、アハハ…。

四三) あっ、ば~…。

(ドレス姿のシマとタキシード姿の増野)

スヤ) きれいか~。

四三) ねえ。ば~…。アハハ…。

スヤ) 2人ともよう似合うとるばい。

増野・シマ) ありがとうございます

カメラマン) …で、仲人さん、両脇に。

四三・スヤ) はい。

シマ) 脚出してもお嫁にいけました。

四三) おめでとう。

シマ) ありがとうございます。

増野) えっ、何?

シマ) フフフ…。

四三) ううん。

スヤ) ちゃんとつかまえとかんと、

 マラソン選手は逃げ足の速かけん。

増野) はい。

四三) うん? 何? 

スヤ) 何も。

カメラマン) 仲人さん、あのね、逆。位置逆です。

スヤ) あっ…すみまっせん。

四三) 何? 何ね、何ね?

スヤ) 何ね?

四三) (増野に)何…。何て言われた?

増野) うん? あっ、ううん、何でも。

カメラマン) ではではでは…ちょっとこう、

 未来を、未来を意識して。

増野) 未来だって。

シマ) み…未来…。

増野) ちょっと待って。

(シマのベールを直す増野)

シマ) ありがとうございます。

カメラマン) はい…やっぱ明日にしましょう。

増野) 明日?

カメラマン) やっぱあさってにしましょう。

 ねっ? あさって。あさって、はい。

 まいります。

(写真を撮る音)

 

**********

 

五りん) めでたいって言えば、飲む打つ

 買うの師匠もね、このころめでたいこと

 があったと。え~大正11年は…。

 あっ! 結婚してますね。

 

小梅) どう? フフフ…。

(見合い写真を見る孝蔵)

孝蔵) はあ?

 

**********

 

あぶさん、田紳、バウ、スコドン、シャン…w

いつの時代も若い子は自分たちの言葉を使

いたがるものなんだなあと。自分たちだけが

若いつもり新しいつもりでいるのが若者…w

歴史は繰り返す。新しいようで古いし、古い

ようで新しい。人間は面白いとしみじみ思う。

櫻の園とシマの結婚。萌える回でありました。



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