大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第17回~いつも2人で | 日々のダダ漏れ

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大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第17回~いつも2人で

 

 

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大正4年6月。ベルリンオリンピック

の中止が、報じられました。

欧州戦争の長期化が、原因でした。

彼はまだ、そのことを知りません。

 

<大日本体育協会>

岸) かけたまえ。

四三) はい!

永井) あのな、金栗…。

治五郎) 思い出すな、金栗君。ストックホ

 ルムの時も君は、頑として座らなかった。

四三) あん時は、何も知らず、

 ご無礼いたしました。

治五郎) だが…今は違う。ストックホルム

 の敗北を経て、君は立派に成長した。

 レースごとに、記録を更新し、ついに、

 2時間19分! まさに、脂が乗った状態!

岸) 嘉納さん…。

治五郎) 今が旬!

岸) なぜわざわざ言いづらいムードに。

治五郎) 分かっとる。言うよ、言うから。

 黙ってなさい君は。

四三) えっ…あの、どぎゃんしたとですか?

治五郎) オリンピックは中止だ。欧州戦争

 の長期化により、無期延期! 無念!

(腰が抜けたように椅子に座る四三)

治五郎) 詳しいことは、

 分からんのだが、そういうことだ。

 

**********

 

(部屋に籠もった四三)

 

**********

 

<熊本・池部家>

(スヤを見送る幾江)

幾江) スヤ。スヤとマラソン、どっちが

 大事か聞いてみなっせ。今ならマラソ

 ンに勝てるかもしれんばい。

スヤ) うちと、マラソン…。

幾江) もう構わんけん、

 連れて帰ってこい、スヤ。

 

**********

 

<播磨屋>

清さん) う~ん、ドイツが戦争中なら、

 どっかよそでやりゃいいんじゃねえの?

シマ) オリンピックをですか?

清さん) うん。アメリカとか、支那とか。

 おっ、日本でもいいや。

辛作) できるわけねえだろ。

清さん) えっ、何でだよ。こっちから行くのと

 向こうから来るのと、何が違うんだよ。

福田) すんまっせん。金栗は、こちらに?

辛作) また来やがったよ。

 おい、野口、橋本! おい!

(2階にいた2人が下におりる)

野口) はい。

福田) あっ、久しぶり!

野口) あっ、福田先生ご無沙汰してます。

 わざわざ新潟から?

福田) ああ。

橋本) もうまる2日、

 部屋から一歩も出てないそうです。

福田) 俺が行くばい。

橋本) こちらです。

辛作) そっとしといてやんなって!

野口) よし、今夜は泊まり込みだな。

清さん) おう、ハハッ。

辛作) 何で清公まで行くんだ。

 おいちょっと…おい! 勝手にしろい!

 

**********

 

(ふすまを突き倒す徳三宝)

徳三宝) んっ!

清さん) うん?

野口) 金栗さん!

橋本) 金栗君!

清さん) あれ? …わっ!

一同) わっ!

(部屋の隅に四三)

清さん) もう…何だ何だもう閉めきって。

 元気出せよ、韋駄天! 気晴らしに

 走ろうぜ、付き合ってやるよ。なっ?

四三) な~し?

清さん) な…「な~し」って?

四三) オリンピックののうなったとに、

 な~し俺は走っとですか?

清さん) 立て。ほら、立て! ほら!

 

**********

 

<播磨屋>

スヤ) こんにちは。主人は?

男性の声) あっ! ああ、ああ…。

(階段を転がり落ちる音)

スヤ) ばっ…四三さん?

清さん) ぜいたく言ってんじゃねえよ!

野口) 清さん…。

清さん) 自分で行き先も決められねえんだ

 ぞ俺たちは。客が新橋っつったら、新橋行

 くしかねえんだよ。読み書きも力仕事もで

 きねえから、走るしかねえんだよ!そんな

 俺たちの代表だろ? 日本代表ってのはよ。

 お前がそうやって腐ってたら、日本人みん

 な腐っちまうんだよ。しゃんとしろしゃんと!

四三) ばってん!

清さん) ばってん何だよ? 「ばってん」っつ

 ってから考えんじゃねえよ! 卑怯だぞ!

四三) 俺はもう走れんです! 4年だけ、

 ベルリンまでっちゅう約束で家族の援助

 ば受けて走っとっとです。そりゃ、国と国

 の戦いに比べりゃ小さか問題かもしれん

 ばってん、これ以上迷惑かけられん!

(四三を井戸端へ引っ張るスヤ)

(井戸水を頭から四三にかけるスヤ)

一同) わ~!

スヤ) 違います。こん人は水ばぶっかけ

 るとおとなしゅうなりますけん。

清さん) 誰?

 

**********

 

<四三の部屋>

(いきなりだごを食べている四三)

スヤ) うまかですか?

四三) (頷く)

スヤ) どぎゃんします?

 食べたら、熊本帰りませんか?

(目を合わさず、団子を頬張る四三)

スヤ) することなかでしょう?

 オリンピックののうなったし。帰る?

四三) (首を横に振る)

スヤ) そぎゃんね。ほんなら田植えの

 ありますけん、私は一人で帰りますね。

四三) ダンケシェン。

スヤ) えっ?

四三) ドイツ語ばい。

(座り直し、くしゃくしゃの日の丸の

 ユニフォームを畳むスヤ)

スヤ) うちはオリンピックがのうなっても

 構わん。どっちみち連れていってもらえ

 んけん。金メダルも要らん。ばってん、

 四三さんが金メダルば取ったら、どぎゃ

 ん顔して喜ぶか…。そん顔が見たかけ

 ん、応援ばしとります。

四三) さみしゅうなかですか?

スヤ) ばってん、そばにおったら

 邪魔になりますけん。

四三) 俺は…さみしか。

 きつ~か練習ばした夜は、必ず、

 スヤさんの夢ば見ました。

 ♪逢いたかばってん 逢われんたい

 歌いながら、自転車ばこぐスヤさんば

 追いかける夢でした。起きて走って…

 寝て走って。もうクタクタで。それも、あ

 と1年の辛抱て言い聞かせてきました。

 金メダルば取って、しまいにしようと思

 うとりました。ばってん…。悔しか。

 な~し戦争せんといかんとだろか?

 悔しか。

スヤ) だったら帰りましょうよ。

 終わったと思えば、帰れますか?

四三) 終わった?

スヤ) はい! オリンピックは

 終わりました。帰りましょう。

四三) おるは、何等でしたか?

スヤ) もちろん金メダルたい!

 おめでとう、金栗選手!

 フロム ニッポン! ゴールドメダルばい!

(団子を差し出すスヤ)

四三) ハハハ…。

スヤ) フフッ…。駄目ばい。

四三) はっ?

スヤ) そぎゃんもんじゃなか。

 四三さんが本当に金メダルば取ったら、

 もっともっと笑うばい!

四三) あっ…ワッハッハッハ…。

スヤ) もっともっと!

(四三の頬を引っ張るスヤ) 

スヤ) こぎゃん口角ば上げて、

 えびすさんのごつ笑うばい!

 「終わった~! 終わった~!」って。

四三) そら終わっとらんけん。

スヤ) そぎゃんたい。

 始まってもないもんが、終わるわけなか。

(頬を引っ張るスヤの手を握る四三)

四三) (泣)

(子どものようにスヤにしがみつく四三)

(やさしく背中を撫でるスヤ)

 

**********

 

(一階の土間で靴を履くモンペ姿のスヤ)

スヤ) 大家さん、自転車ばお借りします。

辛作) どうぞ。

(人知れず二階から降りてきて、

 土間で足袋を履く四三)

ちょう) あら! 金栗さん、どうしたの?

 どこ行くの?

四三) 走ってきます。

辛作) やる気になったか!

四三) お願いします。

辛作) 行ってこい。

四三) はい。

辛作) 行ってこい行ってこい!

 行ってこい! アハハハ…。

ちょう) よかった~!

辛作) よかった~!

 あれ見たかね? これ、これ!

ちょう) 見た、これ。

 

**********

 

(自転車で伴走をするスヤ)

四三) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ…。

スヤ) ほら、早うせんと置いていくばい。

四三) はい! スッスッハッハッ、

 スッスッハッハッ…。

**********

 

清さん) 誰も知らねえの?

野口) 熊本弁でしたよね?

一同) ああ…。

福田) いや、いきなり団子ば

 持ってきたっちゅうことは…妹?

野口) いや…。

清さん) う~ん、それか…これか?

一同) いやいやいやいや…。

橋本) 女の影といったら、

 賄いのおばちゃんぐらいだよな。

野口) 50歳以下の女としゃべってる

 とこ見たことないですもん。

清さん) あのマラソンバカが

 結婚できたら、世も末だぜ。

(笑い声)

 

**********

 

<四三の部屋>

(並べた布団に寝た2人)

四三) スヤ。こん前は…すまんかった。

 いきなり追い返して。これからは、時々、

 会いに来てよかけん。いや…来てくれ。

スヤ) 本当? 

 おりたいだけおってよかですか?

四三) うん。もう、帰れとは言わんけん。

 ばってん、先のことも考えんといかんな…。

スヤ) そぎゃんたいね。

四三) 韋駄天も、いつまっでん走れるわけ

 じゃなかし、引退後の事も考えんといかん。

スヤ) 今はよかばってん、

 子どもの生まれでもしたら…。

四三) 俺が走れんごつなったら、

 誰が後ば引き継ぐか…。日本マラソン界

 の未来ば第一に考えんといかん。

スヤ) えっ? いやいや…えっ?

四三) うん、実際、日本全国におる、

 韋駄天の卵ば、俺一人で見つけて、

 満遍なく指導すっとは、至難の業ばい。

スヤ) 金栗四三が50人おったら

 よかばってんね。

四三) うん。幸い、高師ん卒業生が、

 全国の中学に散らばっとる。

 野口君は、松本…。

(スヤを見る四三)

四三) うん?

(眠っているスヤ)

 

(回想)

スヤ) 金栗四三が50人おったら

 よかばってんね。

 

四三) 50人…。

(50人の四三と走る四三)

四三)  ばっ! ハハハ~!

 ばば~!

スヤ) 何?

四三) あっ…あっ…。

(立ち上がる四三)

スヤ) 何ね?

四三) 50人…。

 

**********

 

<校長室>

(ストックホルム大会の写真を見ている治五郎)

(ノック)

四三の声) 失礼します!

 校長先生…校長先生、決めました。

 決めました、決めました!

 俺は、指導者になります!

治五郎) それは、教職に就くということかね?

四三) はい!

治五郎) そうか…よく決心したね、金栗君。

四三) あら? びっくりせんとですか?

治五郎) びっくりは…せん。

 高師は、教員を育てる学校だからね。

 君以外はもうみんな、とっくに先生だ。

四三) あっいや、続きがあっとです。な~し

 そぎゃん考えに至ったかといいますと、

 あの…。座ってもよかですか?

治五郎) おお…座れ。

四三) はい。もし今、予定どおり、ベルリン

 大会の開かれたら、俺は、金メダルば取

 れる自信のありました。

治五郎) うん。私もそう思う。実に惜しい。

四三) はい、悔しかです! 俺が50人

 おったら、金メダル50個取れたとに。

 

(拍手と歓声)

(金メダルを首にかけた50人の四三)

 

治五郎) おい…どうした? 金栗君。

四三) はっ! すいまっせん。想像ばしてし

 もうて。50人の、金栗君が、スウェーデン

 体操ばしたら、壮観でしょうな~。

 

(スウェーデン体操をする50人の四三)

 

四三) いかん…たまらん。(笑)

治五郎) 何だ? 何しに来た、金栗。

四三) あっ…すいまっせん。もし俺が、

 50人おったら、50倍の距離ば走れます。

治五郎) いや、君じゃなくても、

 50人の選手がいれば…。

四三) 一人10km走れば500km。東京から、

 大阪ですよ。一人じゃ無理ばってん、50人

 おったら走れるとです。

治五郎) なるほど。喜びも50人分だ。

 いや~実は、マラソンが広く普及せん理由が、

 そこにあるんじゃないかと思っていたんだ。

 40kmもの距離を走るのはあまりにつらく、孤

 独だ。だが…団体競技と考えたらどうだ? 

 助け合い…励まし合う仲間がいれば!

四三) 大阪から、東京までも走れます!

治五郎) そこだよ、そこ! 面白い!

四三) はい! いつの日か、東京から大阪

 まで走破すっために、そん50人ば育てる

 ため、俺は、教員になります!

治五郎) 見つかったな…オリンピックに

 代わる、新たな目標が!

四三) はい!

治五郎) いや~!

(四三を抱き上げる治五郎)

 

**********

 

志ん生) そのころ、浜松では、後に

 東京オリンピックを呼ぶ男、田畑

 政治君が、やさぐれておりました。

 

孝蔵) 何が楽しいんだかよ。

政治) あ~どうも。

孝蔵) これが酒なら喜んで飛び込むけど

 もよ、ただ水にプカプカ浮かんでるだけじ

 ゃねえか。死にかけの魚じゃあるめえしよ。

 バカの骨頂だな、こりゃ。ヘッ。

政治) 分かってねえら。見てみな。

(桟橋の先のやぐらに上がる政治)

政治) あれが内田さんでぇ。

 わしら浜松中のエース。ああして

 涼しい顔で、10kmも泳ぐだに。

孝蔵) へえ~。てえしたもんだ。

政治) 弁天島で引き潮に飛び込んでやぁ、

 流されんように死に物狂いで泳ぐっちゅう

 気持ちよさったら…。

孝蔵) じゃあおめえも見てねえで

 泳げばいいじゃねえかよ。

政治) 医者に、止められたで…。だから、

 見てるだけだで。ついでに言うけえが、

 「バカ」じゃねえに、「愚」の骨頂だに。

 おっ…あっ、うわっ!

(政治を海に放り込む孝蔵) 

政治) 何するで!?

孝蔵) 医者の言うこと鵜呑みにする

 なんざ、愚の骨頂だに!

 

志ん生) 身に覚えがございません、

 でもまあ、謝っとくか。

 田畑さん、どうもすみません。

 

**********

 

昭和35年(1960)

 

政治) (咳き込み)すいませんじゃないよ!

岩田) すいません、火、消しました。

政治) ちょっと貸してみ。

岩田) はい。

政治) おい…おい!

 こんなの重くて走れないよ、岩ちん。

 これどのくらいもつんだい?

岩田) 3時間は燃え続けますね。

政治) 3時間も走れないよ。

岩田) あ~そうか。

東) いや重いんじゃ駄目だ…。

政治) 駄目だ駄目駄目…。

東) 聖火リレー…駅伝だね、これは。

政治) 岩ちん資料! 駅伝の!

 

**********

 

大正5年(1916)

 

大正5年、四三は、

神奈川師範に教員として勤務。

 

四三) おはよう!

生徒たち) おはようございます!

四三) はいおはよう。

 え~今日から諸君に、地理ば教える、

 金栗四三っちゅうもんばい。

学生たち) えっ?

学生) 体育じゃないんですか?

四三) 体育は放課後。おう、授業始めっぞ。

 

**********

 

四三の新たな挑戦が始まりました。

指導者として、

練習法や足袋の改良を模索し…。

寸暇を惜しんで、後輩と共に走ったのです。

 

そしてついに、

東京大阪を大勢で走りつなぐという

夢に向かって、動き出しました。

 

**********

 

治五郎) さあ、どうかね?

四三) はい。え~山岸君、秋葉君、そして

 井手さんは、参加を快諾してくれました。

 東京・大阪間ば走ると聞いて、

 闘志ば燃やしとります。

治五郎) コースの下見をせんといかんな。

 大阪の、どこからたつか。

四三) あっ、そぎゃんですね。

大村) 京都じゃ…駄目ですかね?

四三) はっ?

大村) お話中すいません。

 金栗四三さんですよね? マラソンの。

 先ほどから興味深く拝聴しておりました。

 あっ、私、読売新聞の…。

治五郎) 記者かね?

大村) わっ! 嘉納治五郎!?

土岐) 何!? これはこれは。

 私、土岐(とき)と申します。

大村) 大村です。ちょうど、我々も

 同じようなことを考えておりまして。

土岐) 日本の首都が、京都から東京へ移

 って、来年でちょうど50年になるんです。

 何か画期的な、運動会ができないかと。

大村) これから浅草で、我が社の

 運動部の、ご意見番に会うんです。

治五郎) 行こう行こう。

 

**********

 

<浅草・凌雲閣>

大村) 相談役!

吉岡) おう! よっ!

 お~久しぶりじゃないか、金栗君!

四三) えっ…誰?

吉岡) 俺だよ俺! これこれ…ほれ!

(髭のように箸を鼻の下につけてみせる)

四三) あっ、吉岡さん!

吉岡) ハハハハハ!

治五郎) 何だ~天狗のヤジ将軍か。

吉岡) これはこれは嘉納天狗!

 背負い投げ、かけてくれよ!

 (投げかけられ) おっ! アハハハ…。

土岐) お知り合いでしたか。

治五郎) ああ。決してよい印象は持っ

 ておらんがね。なにがご意見番だよ。

 着替えて損した。

吉岡) 天狗はやめて新聞社に入った。

 今日は、富士山がきれいですぞ!

 さあ…ほれ!

(眼下に広がる東京、その先に富士山)

大村) 京都は更に、先ですな。

土岐) どうせなら、東海道五十三次を、

 たどったらどうかな?

(景色の中に何かを見つける治五郎)

土岐) 関東、関西…東海道を、

 京都から、東京まで走るレース。

大村) 弥次さん喜多さんのルートですね!

四三) そぎゃん壮大なレースは日本初…。

 うんにゃ、きっと、世界初ですね!

吉岡) フッフッフ…

 ヤジなら、俺に任せとけ! お~!

四三) ハハハ…。

吉岡) T N G! T N G!

四三) 体協も、協力して

 下さるとですかね? 校長。

土岐) いかがでしょう? 嘉納さん、

 東海道マラソンレース。

治五郎) ああ。大いにやりたまえ。

 私も見つけたよ金栗君。次なる目標を。

四三) はっ?

土岐) えっ?

治五郎) いつの日か、

 東京でオリンピックを開くために、

 世界に誇れる、競技場を造る!

四三) こ…校長?

治五郎) 私は悔しかった。

 戦争でオリンピックが中止になった時、

 東京に競技場さえあれば、手を挙げる

 ことができたのにと。金栗君、ストック

 ホルムのスタジアム、立派だったよな!

四三) はい。門ばくぐった時の興奮、

 一生忘れんばい。

治五郎) スポーツは、国力の、証しだ。

 スタジアムは、そのシンボル! 招か

 れるのを待ってるだけじゃつまらん。

 各国の選手を、迎え入れるんだ!

大村) えっ、どこにですか?

治五郎) あれだよ。あそこ。

 遊んでる、土地があるだろう。

土岐) いや、遊んでるわけではなく、

 目下建設中です。

吉岡) あれは、明治神宮ですね!

治五郎) 何? あんなに広いのか?

 ちょっと貸せ。

(双眼鏡をのぞく治五郎)

土岐) 外苑と内苑があります。

 かしこくも、先の天皇陛下を…。

治五郎) 知っておる! そんなことは。

 嘉納治五郎だぞ!?

吉岡) ハハハハハ…羽田の次は

 明治神宮にスタジアムですか?

 さすが嘉納治五郎! 大風呂敷は

 健在だ! よっしゃ、乾杯しよう! 

 乾杯だ、乾杯だ、乾杯だ! ハハハ…。

治五郎) よ~し! 

 早速、理事会を招集しよう。乾杯!

一同) 乾杯!

(拍手)

四三) とつけむにゃあ。

 

**********

 

<体育協会>

四三) では、全体ば、23区間に分けまして、

 関東、関西、中部の、23人のランナーで、

 京都から、東京まで、516kmを、走り継ぐ

 レースです。

岸) そんなに走って、何になるんだね?

四三) さあ?

岸) 「さあ?」って…。お話にならんな。

四三) あっ、一人では、

 走れん距離ば走れます。

岸) だからそんなに走って何になるんだ?

四三) さあ?

吉岡) 1回のレースで、大勢のランナー

 が参加できる。マラソン人口の拡大にも

 つながります。

永井) 大勢関わるという事は、事故や、

 ケガ人が出る可能性も高くなるという事だ。

治五郎) 久しぶりに集まったのに反対意見

 ばかりだな! やめるか。解散するかね? 

 体協、永遠に。

永井) あっ、いや、それは…。

岸) まあ、読売さんが主催なら、

 反対する理由はない。

四三) ありがとうございます。

武田) なら、名称を決めねばいけませんな。

治五郎) 東海道オリンピック!

永井) 反対!

男性) 大勢で走り継ぐという

 画期的なアイデアを…。

土岐) 英語だと、リレーだがね。

吉岡) 富士山のような壮大な計画…。

治五郎) 富士オリンピック!

永井) 反対!

武田) 駅伝は、どうだろう?

岸) えきでん…。

武田) ああ。東海道には、53の宿場、

 つまり、駅がある。その駅を伝って

 走る大会だから、駅伝。

 東海道五十三次駅伝競走。

(黒板に書く四三)

四三) これよか…。よかです。これよか!

 駅伝! うん! こっでいきましょう!

吉岡) よし、決まりだ! どうですか?

治五郎) いいね! 駅伝!

四三) おお~!

吉岡) よし、駅伝だ!

四三) よろしくお願いします。

 

**********

 

<ミルクホール>

(新聞記事を見る四三)

四三) お~駅伝!

吉岡) ハハハ! 最終ランナーは、是非とも

 金栗君にお願いしたい。川崎から、日本橋

 を通って上野。大々的に宣伝すれば、東京

 中の人々が、集まりますぞ! お~!

シマ) ゴールは何時ごろですか?

治五郎) やってみないと分からんよ。

 前人未到の大レースだ。

吉岡) 恐らく、丸2日はかかるでしょうな。

シマ) 女子の参加選手はいないのですか?

吉岡) 女子?

シマ) はい。

吉岡) 冗談言っちゃ困るな、君。遊びじゃ

 ないんだよ。こっちは真剣勝負なんだよ。

女子だって真剣に走れば負けません!

吉岡) フン。真剣に走ってる女子を

 見て何が楽しいかね?

四三) あっ、すいまっせん。シマさんは、

 ランナーに憧れとったけん。

シマ) でも、授業は体操と肋木ばかりで、

 徒歩部もないし。

治五郎) シマ君、女子の体は

 走るのには向いとらん。

シマ) そんな…試してもみないで!

吉岡) 見苦しいよ、女子の走りは、不細工だ。

治五郎) 君たちはいずれ、健やかな子どもを、

 産まないといかん。無理したら、壊れるぞ。

 ミルクちょうだい。うん?

シマ) はい。

 

競技スポーツ推進派の嘉納治五郎でさえ、

今から見れば、女子スポーツに対する

考えは、まだまだ保守的でした。

 

四三) あの~二階堂先生に

 相談してみたらどぎゃんね?

 あっ、いや…おんなじ女性として、

 理解ば示してくれるかもしれんけん。

 

(回想)

(肋木にぶらさがるシマ)

トクヨ) 恥を知りなさい、この不良少女!

シマ) はい。

トクヨ) マラソンなど西洋では時代遅れ。

 貧乏人の競技です。

学生たち) はい!

トクヨ) 無理、めちゃ、無謀!

 マラソンなど、野蛮、残酷、不要!

 

四三) そぎゃん言い方せんでも

 よかでしょうが!

治五郎) 落ち着きたまえ。

 あくまでもトクヨの私見だ。

四三) な~しあんおなごは! な~し

 そぎゃんラソンば毛嫌いすっとだろうか!

 あ~伝わっとらん! マラソンの魅力

 いっちょん伝わっとらんばい!

 

**********

 

<播磨屋の2階>

(木のバトンを眺める四三)

(物干し台で洗濯物を干すスヤ)

四三) それだ…それだ、それだ…。

 おっ、でかしたぞ、スヤ!

スヤ) 何? どぎゃんしました?

四三) そる、そるそる…そっば、貸して!

スヤ) たすき、ですか?

四三) うんうん…。

 

**********

 

<熊本・金栗家>

(仏壇に向かい手を合わせる実次)

幾江) スヤが東京に行ったっきり帰ってこん。

実次) ばっ! 幾江さん、いつの間に!?

幾江)) 来たか時に来ておりたいだけおって

 よかって、あんバカがそげん言うたそうじゃ。

 そぎゃんこつば言うたら、

 スヤは東京に行ったっきり、帰らんばい。

 池部ん家はしまいじゃ! お前のせいばい!

実次) 落ち着いて下さい!

幾江) 実次! 実次!

実次) 落ち着いて下さい!

幾江) 実次!

 

**********

 

<播磨屋>

四三) バトンば握ったまま、20kmも

 走っとはきつか~って話しとったけん。

辛作) よし分かった。たすきは作ろう。

 だが、足袋はな~。

四三) 全国が、注目する、大レースで、改良し

 た播磨屋の足袋ば、お披露目したかです!

辛作) だけどひもで結んだらもうそれ

 足袋じゃねえよ。靴だぜ。

スヤ) 足袋です! 辛作さん。

 あなたが作れば、靴も足袋です。

辛作) そうかい?

 

**********

 

志ん生) さて、大正6年4月27日、日本初の

 駅伝レース、東海道五十三次駅伝が開幕

 します。午後2時、京都三条大橋に号砲が

 とどろき、関東中部のトップランナーが、走

 り出した。そこから、草津、水口、四日市、

 桑名から、名古屋へと抜けまして、岡崎、

 豊橋、浜名湖を渡って、はま…あれ? 何

 であんな、でっけえ湖…。一体どうやって

 渡ったんでしょうね? これは。

 どうなってんの? 田畑。

 

**********

 

昭和35年 1960

 

政治) 俺、見てたよ。

岩田) まさか、泳いだんですか?

政治) 本があっただろう、

 確か、土岐さんの。

岩田) 本? あっ、これかな?

 「彼等は走る。彼等は走る。日が落ち、

 夜が更け、朝が来る」。

政治) その日は暴風雨でね、俺もどう

 やって渡るのかなと思ってたら…。

東) えっ、船で!?

岩田) はあ~。

 

(回想)

政治) 頑張れ~! 

 

政治) 一応みんな応援したけど、船こいで

 るのは船頭さんで、乗ってる選手は何に

 もしてないからね。申し訳なさそうにして

 たよ。非常に、間の抜けたものだったね。

東) あっ、中部軍よく見たら、愛知一中の

 生徒だけで編成されてるね。

岩田) 「現地の大村記者が各宿場町に

 電報を打つ。関東軍選手がアキレス腱

 を切り…」。

 

**********

 

土岐) 大変です! 関東軍の吉積君が

 アキレス腱が切れて棄権と!

四三) はあ!?

治五郎) 区間は?

四三) はい、13区見附です。

治五郎) どうする?

四三) 14区の秋葉ば、13区へ戻します。

岸) でも、2区間も走るとなると、

 一人40kmだぞ。

四三) あ~心配なか! 

 秋葉は、俺の弟子です。

 

**********

 

東) え~? 「詰めかけた観衆が街道の旅

 館に泊まり、選手はたすきを渡したあとも、

 ランナーと一緒に東京を目指した」?

岩田) 何だ? いろいろ変だぞこのレース。

岸) 関東軍のアンカーは?

政治) そりゃもちろん、金栗四三だよ。

 

**********

 

スタートから44時間

 

志ん生) 最終走者の、金栗四三が、

 川崎を出たのが、29日午前10時5分。

 

四三) 井手さ~ん! ご苦労さんでした!

 行ってまいりま~す!

(たすきをかけ、走る四三)

 

**********

 

<日本橋・停車した市電の中>

男性) すいません、今ここでマラソン

 やってて、ちょっと通れないんです。

スヤ) ありがとうございました。

(電車を降りるスヤ)

 

志ん生) 日本橋には、史上初の駅伝を見よ

 うと駆けつけた大観衆が、10万人を超えた!

 

土岐) すごい人だ!

大村) まさか、こんなに集まるとは。

一同) 駅伝! 駅伝!

武田) 駅伝って言っとるぞ!

吉岡) これは、後世に残りますぞ!

スヤ) ちょっとすいまっせん、すいまっせん。

(人混みをかき分けるスヤ)

吉岡) お~い、さあみんなで…。駅伝!

一同) 駅伝! 駅伝! 駅伝!

吉岡) そりゃ!

一同) 駅伝! 駅伝! 駅伝!

吉岡) そりゃ!

一同) 駅伝! 駅伝! 駅伝!

スヤ) すいまっせん…すいまっせん…。

一同) 駅伝! 駅伝!

男性) あっ、来た~!

男性) 金栗だあれ!

四三) すいまっせん、すいまっせん。

 道ば空けて下さい。すいません、

 すいません、道ば空けて下さい。

 すいません!

 

土岐) 「彼等は走る。午前11時、

 日本橋は、歓迎の大観衆が、沿道

 いっぱいに繰り出し、電車は立往生」。

清さん) どいたどいた! 道空けろ!

 空けろ! 空けろ! 韋駄天のお通りだ。

シマ) 頑張れ!

一同) 駅伝! 駅伝! 駅伝!

(人々の肩越しに背伸びをするスヤ)

スヤ) 金栗~!

(スヤを見つける四三)

(スヤの目の前を走る四三)

(四三を目で追うスヤ)

 

(回想)

スヤ) おめでとう、金栗選手!

 ゴールドメダルばい!

 

土岐) 「世界的快挙、運動史上未曾有

 の計画。ここに無事実現。516kmを、

 46人の韋駄天が、駆け抜けた」。

 

**********

 

(記者に乗ったスヤ)

(窓の外に浜名湖)

(少年たちが泳いでいる)

 

**********

 

<熊本・金栗家>

幾江) 実次! 起きれ~実次!

実次) ばっ! 

 どぎゃんしました? 幾江さん。

幾江) 四三の帰ってくるばい。

実次) ばばっ。な~し?

幾江) よう聞け。東京から帰ってから、

 調子ん悪かけん、スヤば医者に見せ

 たったい。

実次) どっか、悪かとですか?

幾江) 鈍かね~こん男は。

 ご懐妊たい!

実次) ご…ご懐妊!?

シエ) スヤさんが?

幾江) そうたい!

シエ) たまがった~!

キヨメ) わ~!

シエ) す~ぐ電報ば打たんと!

実次) ああ、ああ…。

幾江) こっで池部ん家は、安泰じゃ~!

実次) わ~めでたかめでたか!

 

**********

 

四三) でかした~!

シマ) わっ! ええっ?

四三) あ~すいまっせん。独り言たい。

 でかした~!

(四三に水をかける勝蔵)

勝蔵) 本当だ!

 水かけたらおとなしくなった。

四三) でかした~! でかした~!

(勝蔵を抱き上げる四三)

四三) やった~! やった! 

 やったばい! やった~!

 

**********

 

スヤさん…素敵すぎ! 四三をよく分かってる。

 

こん人は水ばぶっかけると

おとなしゅうなりますけん。

 

やっぱり四三にはスヤさんが必要。スヤさん

と一緒に走り出す四三。よかった、よかった。

50人の四三シリーズに爆。面白いけど怖い。

そしてあの駅伝の由来が…知らなかったわ。

ためになるし面白いし、韋駄天最高~(^_^)v



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