大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第3回~冒険世界 | 日々のダダ漏れ

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日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第3回~冒険世界

 

 

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大正42年(1909)

<熊本>

 

遡ること50年、熊本。

海軍兵学校の身体検査に落ちた、

我らが韋駄天。

 

金栗四三君は、

実家の畑を手伝っておりました。

 

**********

 

<勉強部屋>

実次) いつまで腐っとるとか四三!

四三) 腐っとらん。

 進学ば諦めただけたい。俺はここで

 畑仕事ばするって決めたけん。

実次) 手は足りとるけん。

 気ぃ遣わんでお前の好きにせんか。

四三) そぎゃんこつ言われたっちゃ…。

 これといって、やりたかこつも、

 行きたか学校も…。

実次) ないか?

四三) なか。…ある。

実次) どっちや!?

(募集要項を差し出す四三)

実次) ん…。「東京高等師範」?

 お…ぬしゃ、学校の先生になるとか!

(ページをめくると、校長の挨拶文)

実次) 「嘉納治五郎」?

四三) ごめん! 

 俺は、本当は、嘉納治五郎先生に

 抱っこばしてもらえんだったけんが…。

 五高までは行ったばってん…父ちゃん、

 途中で諦めたけん。ばってん…

 父ちゃん、うそばつきよったけん。

 ず~っと言えんだった。みんな小学校

 しか出とらんとに、俺だけ中学に行か

 せてもろてますます言えんだった。

実次) 四三! 

 そぎゃんこつはとうに知っとうばい。

四三) えっ?

実次) 抱っこばしてもらいに…

 東京に行くとか?

四三) いや抱っこは今更…。

 ばってん、悔いが残っとるばい。あれば

 乗り越えんと、俺は1人前になれんけん。

 いつまでたったっちゃ、体弱か四三ばい。

実次) とつけむにゃあ!

四三) えっ?

実次) 乃木将軍になる夢は断たれた

 ばってん、嘉納治五郎を乗り越える

 っとは、とつけむにゃあ男たい!

四三) いや、兄ちゃん、

 そぎゃん意味じゃなか…。

実次) 何も言うな~。

四三) いや…。

実次) 越えてけ、越えてけ! なあ、四三!

 

**********

 

努力の甲斐あって、四三は、

東京高等師範学校に、見事合格。

 

そのころ、

嘉納先生は何していたかってえと…。

フランス大使館で、

オリンピック参加を決めました。

 

**********

 

<熊本>

(地元の駅のホームに金栗家一同)

四三) 行ってまいります!

シエ) 体だけは気を付けんといかんばい。

四三) うん。

美川) お母さん、僕が、ついてますから。

実次) お~美川君は、何ば越えるとね?

美川) はい?

実次) お~夏目漱石!

 よかよか! 大いに暴れてこい!

 おい車掌さん、こん2人ばよろしゅう頼ん

 ます。何しろ、未来の嘉納治五郎と、

 夏目漱石だけんね! それっ、アハハハ…。

 

**********

 

<列車の中>

美川) 言っちゃなんだが金栗氏、

 君の兄さん、どうかしてるぜ。

四三) そぎゃんね。

美川) 大言壮語がすぎる。

 もはや、誇大妄想だよ。

(鼻水をたらして泣いている実次)

車掌) まもなく、出発しま~す。

実次) 金栗四三君…。

(汽笛)

実次) ばんざ~い!

一同) ばんざ~い!

 ばんざ~い! ばんざ~い!

実次) 四三、しっかりやれ!

四三) はい!

一同) ばんざ~い!

四三) 行ってきます! ありがとう。

実次) 元気でな。

四三) ありがとう!

実次) ああ~! おい、頑張れよ!

シエ) 四三!

四三) 行ってきます。行ってきます!

(四三も鼻水をたらして泣いている)

一同) ばんざ~い! ばんざ~い!

 

明治43年、春。

 

四三) 行ってきま~す!

 

日本人が、

オリンピック出場を夢み始めた頃、

四三は、東京を目指します。

 

四三) 行ってきま~す!

 

**********

 

志ん生) え~熊本から東京までは、

 各駅停車の鈍行列車で、たっぷり

 二昼夜の長旅でございます。

 

**********

 

<列車内>

美川) 金栗氏…見ろよ、あのご婦人。

 まるで、「三四郎」に出てくる、

 美禰子じゃないか。

 人妻か…はたまた未亡人か。

 向こうも気にしてると見える。

 僕の方を、チラチラ見てやしないか?

 

え~見てるとしたら、

こんな田舎者見たことないからでしょうな。

ちなみに彼らが身につけている、

赤い毛布、赤ゲットと申しまして、

お上りさんの代名詞のようなものでした。

 

車掌) まもなく、広島であります。

(降りる様子の女性)

美川) 降りるぞ。僕らも降りようか。

四三) 美川君。美川君、ちょっと…。

 雑誌ば読まんね。

(乗客が置いていった雑誌を手に取る四三)

美川) ばっ! 

 あっ…「冒険世界」じゃないか!

四三) 「冒険世界」?

(雑誌を見る四三)

四三) ばっ! 

 東京には、天狗がおっとね!?

美川) 無知だね~金栗氏。天狗倶楽部は、

 東京の、スポーツ同好会だよ。

四三) ス…スポ…?

美川) 早い話、遊び人さ。

四三) ああ…。

(もろ肌脱いでポーズを取った写真)

美川) おっ…おっ!

四三・美川) 「運動会の、覇王」…。

(三島弥彦の写真)

四三) 「三島弥彦物語」?

 はあ…もう無理。

美川) えっ? 

(乗り物酔いの四三)

美川) あっ…すごい…。

 

東京への不安が募る、四三君でした。

 

**********

 

<芝生のグランド>

本庄) 三島君。まずは、痛快男子、

 十傑、運動部門1位おめでとう。

弥彦) スポーツは、あくまで趣味だね。

 みんなでわいわい楽しく、体を動かす

 のが僕は好きなんだ。

本庄) さすが、

 文武両道のエリート、三島君。

弥彦) 必死になったことなど、一度も

 なくってね。僕は、勝ち負けにはこだ

 わらない。むしろ僕は、一度くらい負

 けてみたいと思っている。

本庄) 負けてみたい?

弥彦) そう。負けた人間の屈辱を、

 味わってみたいね。

 

**********

 

はい、千駄ヶ谷の一等地に、7000坪の

邸宅を構える三島家は、元薩摩士族。

父、三島通庸は、元警視総監。

兄弥太郎は、横浜正金銀行の

副頭取で、後の日銀総裁。

母和歌子は、女西郷と呼ばれる、女傑。

 

(グランドから飛んできたボールを、
 仕込み杖で真っ二つに切る和歌子)

 

**********

 

この三島家をモデルに書かれた小説が、

「不如帰」。当時の大ベストセラーです。

そこで底意地の悪~い姑として描かれ

ているのが、この和歌子さん。

 

弥太郎) モデルといっても、

 所詮は、作り話ですから。

和歌子) シマ、かいつまんで

 話しっくいやんせ。

シマ) は…はい!

弥彦) 大丈夫。

 母上は、字が読めないから。

シマ) えっ?

和歌子) シマ。

シマ) はし。

(震える手でお茶を出す女中のシマ)

シマ) ごめんなさい…。

 海軍少尉の、川島武男は。

和歌子) 川島?

 三島の「三」を、縦にしたっちゅうこつね。

(「漢字、わかってんじゃん」と思うシマ)

シマ) はい。

和歌子) 続けやんせ。

シマ) 川島武男は、浪子という女性と、

 恋に落ちます。浪子が肺病にかかると。

(身を乗り出す和歌子)

シマ) 心優しいお姑さんに、手厚く看病

 され、なに不自由なく暮らしましたとさ。

和歌子) フフ…いかにも凡庸な筋じゃが。

 ハハハハ…。

 

**********

 

<東京新橋>

 

韋駄天、ようやく上京しました。

 

美川) あっ、地図一つ下さい。

男性) はい~毎度~20銭。

美川) ありがとうございます。

(洋風な街並み、行き交う人々)

四三) わあ…。

(駅前を走る路面電車)

四三) わあ…。

美川) う~ん、

 寄宿舎に行くにはまだ早いな。

 金栗氏、市電に乗って、浅草にまで

 足を伸ばしてみようじゃないか。

四三) ばっ。ま~だ電車に乗っとね。

美川) 浅草にはね、十二階という日本一

 高いタワーがあってだね、その展望台か

 ら、東京中ばを見下ろせるんだよ~。

 

**********

 

<浅草>

(十二階建ての凌雲閣を見上げる2人)

小梅) ちょいと、そこの、粋な赤ゲット

 のお二人。遊んでいかない?

 ねえ…ねえ、遊んでいかない?

 ねっ、いいでしょ?

清さん) お疲れですろう。

 どうだい? 車乗って浅草見物。

小梅) 清さん、もう私の客だよ。

 邪魔しないでおくれ。

四三) 美川君、美川君…美川君美川君

 美川君。今日はやめよう。ねっ?

美川) うん…。

(キョロキョロする四三)

美川) うん? どうしたの?

四三) 財布がなか!

美川) ばっ! ようと捜したとね?

四三) えっ…。

美川) ちょっ…えっ?

四三) ここ…ここに、こぎゃんして

 入れとったばってん。

美川) えっ?

小梅) スられたねえ。

四三) ええっ!?

 

(回想・市電の中)

四三) 浅草まで行くには、ぎゃん行って、

 ぎゃ~ん行って、ぎゃ~んって言い張る

 ばってん、ぎゃ~んぎゃ~んぎゃ~んの

 方がよかですよね。

男) おお…。

(揺れと一緒に四三の財布をスる男)

四三) あっ、すんまっせん。

車掌) 懐中物ご注意下さ~い。

 

四三) いやいや、ここ…。

 

志ん生) この出来事で、四三君は

 すっかり、電車嫌いになったそうです。

 

(大道芸のサルが、四三に小銭を投げる)

美川) おっ。サルが…。

 

志ん生) とにかく、ぎゃん行ってぎゃん行って、

 寄宿舎のある御茶ノ水に着いたのは、

 日も暮れた七時過ぎ。

 

**********

 

<寄宿舎>

美川) 国語漢文科予科生、美川秀信です。

四三) 地理歴史科予科生、金栗四三です。

永井) 舎監の永井だ。

 

出ました! スウェーデン体操の永井道明。

まさか彼が寄宿舎の監督係、略して舎監とは。

 

四三) あっ、あの~舎監殿。

 晩飯は何時だろか? いや、財布ば

 スられて朝から何も食うとらんけん。

 腹が減ってフラフラですたい。

 

鬼教官、永井の恐ろしさを、

2人はまだ知りません。

 

(美川の手から雑誌を取る永井)

美川) あっ…。

永井) 「冒険世界」…。こんなくだらん

 もんを読んでおるのか貴様は!

(雑誌で美川の頭を叩く永井)

美川) 眼鏡…。

 

今、知りました。

 

永井) 神聖なる寄宿舎に、

 こんなものを持ち込むとは言語道断!

美川) 僕のじゃないです。金栗君です。

四三) ばっ? えっ…あっ、

 いや…えっ…。すいまっせん!

永井) こっちへ来い、金栗。

 

**********

 

永井) よそ見をするな! 

美川) 美しい川と書いて美川です。

 よろしくお願いします。

四三) はい!

永井) 足は直角!

四三) はい!

永井) 親指は下から通す。

四三) 下…。

永井) そういうことだ!

四三) はい!

(肋木にぶら下がっている四三)

 

**********

 

手紙・四三) 「母ちゃん、ばあちゃん、

 四三は達者で暮らしています」。

実次) 四三ば、手紙よこして来たばい!

シエ) あら。

実次) え~

 「憧れの嘉納治五郎先生とは…」。

手紙・四三) 「憧れん嘉納治五郎

 先生とは、入学式で対面しました」。

 

(回想・東京高師 入学式)

治五郎) 国力とはすなわち、若者の力。

 海の向こうでは、オリンピックという、

 スポーツと平和の祭典が、開催され、

 いずれ、諸君の中に、オリンピックに

 参加する者が、現れるかもしれない!

 

手紙・四三) 「あん日、大人たちん肩越しに、

 そん後ろ姿ばちら~っと見っとがやっとだっ

 た嘉納先生のお姿を、今、真正面から見上

 げております」。

 

(回想)

治五郎) そこで、予科の諸君は、柔道か

 剣道、いずれかの、部活動に所属し…。

四三) え~?

治五郎) 放課後は、共に、汗を流そう

 ではないか! 頑張ろう!

(去って行く治五郎を目で追う四三)

 

手紙・四三) 「朝は6時に起き、冷水浴と、

 乾布摩擦を欠かしません。ごはんは30回

 ずつ噛んで、誰よりも多く食べます。四三

 は、最後ん最後に、寄宿舎ば出ます。

実次) 「そして、走ります」。ハハッ。

スマ) 四三は、韋駄天通学ば続けとるばい。

手紙・四三) 「満員電車は好かんし、乗り

 換えの面倒な市電と違うて、走れば1里、

 20分で着くとです」。

(下駄を手に、裸足で電車を追い越す四三)

 

**********

 

<教室>

教師) おい失敬。

四三) はい。

教師) ナポレオンの名言ば、

 熊本弁で言うてみんか。

四三) 「おっが辞書に、

 不可能の文字はなかばい」。

教師) そぎゃんです!

(笑い声)

 

手紙・四三) 「勉強はもちろん、標準語です。

 歴史の授業が、面白かです。体育の授業で、

 柔道もやっています。柔道部の、とつけむに

 ゃあ男にも、四三は果敢に立ち向かいました。

 柔道日本一の、徳三宝です」。

(巨漢の徳三宝に投げ技を仕掛け、軽く

 持ち上げられ、たたき落とされる四三)

 

随分と威勢のよい手紙を書いてしまったなあ…。

シティーボーイにはなれない四三君、

熊本が恋しくなったようで…。

 

**********

 

<夏>

(川で水浴びをしている素っ裸の四三)

(自転車を止め、橋の上から四三を見るスヤ)

四三) うん? あ~!春野さ~ん!

(裸の四三を見て目をそらすスヤ)

スヤ) ひゃっ。

四三) えっ? ばっ!

 

**********

 

<川原>

四三) おお…春野さん。

スヤ) 久方ぶりです。

四三) なして、分かったとですか?

スヤ) 山の向こうから、「ひゃあ!ひゃあ!」

 って、叫び声のしましたけん。

四三) あら~。

スヤ) フフフ、うそうそ。

 往診に行った父が、お母様から聞いたと。

四三) すんまっせん。便りも出さんで。

スヤ) お元気そうで。東京はどぎゃん?

四三) うん? あ~どぎゃんかねえ…。

 あっ、思ったより、坂が多かね。

スヤ) 地形じゃのうて雰囲気。

 銀座とか、日本橋とか。

四三) ああ、日本橋は石畳の多かけん、

 走りづらか。

スヤ) 四三さん、変わらんね。

 はい、いきなり団子。

四三) わっ! お~ほほっ…。

 ありがたか~! 頂きます。うまか!

スヤ) アハハハ。

四三) うん、うまか! スヤさんは?

 女学校、来年卒業すっとだろ?

スヤ) うちのことはよかです。

 四三さんの東京の話ば聞きたか。

四三) ばってん、学校と寄宿舎の

 往復で、何も…。あ~。

スヤ) 何? 何?

四三) あ~高師で、音楽の授業のあって、

 こっがとにかく苦手ばい。おっが歌うと、

 みんなが笑うばってん。か~悔しかっ

 たけんね~! 放課後たい、こそ~っと、

 線路沿いの神社でね、スヤさんに教わ

 った歌ば練習しとるばい。

スヤ) 自転車節?

四三) そう!

スヤ) フフッ。

四三) だいぶ音痴ば克服したばい。

 ♪逢いたかばってん 逢われんたい

四三・スヤ) ♪たった一目でよかばってん

 あの山一丁越すとしゃが

 彦しゃんのおらす村ばってん

 今朝も今朝とて田のくろで 

 好かん男に口説かれて

四三) ♪ほんに彦しゃんのおらすなら

スヤ) ハイ。

四三) ♪こぎゃん腹も立つみゃあばってん

 千代八千代 どうしたもんじゃろかい

スヤ) アハハハハ!

四三) ズレとう? まだズレとう?

スヤ) ズレとらん。

 四三さんの思うように歌うたらよかけん。

四三) そぎゃんね。

スヤ) フフフ。はいもういっぺん。

四三) はい! ♪あ…

 

**********

 

<金栗家・学校部屋>

(天井に貼り紙)

実次) ふう~…ああ、俺が書いたとばい。

四三) そぎゃんね!

実次) ああ。嘉納先生の、座右の銘たい。

 「順道制勝」。どぎゃん意味だろか?

四三) えっ? え~っと、確か…。

実次) 知っとうばい! 「道に順って勝つ」、

 すなわち、「逆らわずして勝つ」たい。

 そぎゃんとは、常識だろが。ハハハハ…

 なあ、おい。偉い人か~嘉納先生は。

 ロシア人ば、投げなさるとだろ?

 お~四三は、何、投げようかね?

 ええ? ハハハハ…。

 

**********

 

<金栗家・居間>

シエ) あっ! そういえば、

 石貫村の、春野先生の娘さん。

四三) あっ、スヤさんね? 昼間会うたよ。

シエ) 女学校卒業したら、

 見合いばするって言いよんだったよ。

四三) 見合い?

シエ) あっ、聞いとらんとね?

 玉名の、池部さんの跡取り。

四三) あっ、そうね。

 ハハッ、そりゃ、めでたかね。

実次) 池部ちゅうたら名家たい。

 あ~先生! ほら、だご汁、お代わり。

 

**********

 

<畑>

実次) 偉か人は、

 熱中する才能ば持っとるばい。

四三) えっ…何ね? 急に。

実次) そぎゃん話ば、聞いたことあるばい。

 四三、お前もひとかどの人間になるには、

 熱中する、何かば、見つけるこったい。

四三) ばってん、兄ちゃん、俺はここで…。

実次) 何も言うな! 家のことは俺に

 任せて…しっかり学んで来い。

 

**********

 

夏休みは、あっという間に終わりました。

 

(列車に乗っている四三)

(手のひらに出来たマメを見ている四三)

美川) 金栗氏、今回は、見送り、なかったね。

四三) みんな、畑で忙しかけんね。

(窓の外を見る美川)

美川) おっ、見ろよ、あの女学生。

 「坊っちゃん」の、マドンナじゃないか。ええ?

(外を見る四三)

(線路沿いの道を猛スピードで走る自転車)

スヤ) 四三さ~ん!

四三) スヤさ~ん!

スヤ) 四三さ~ん!

美川) 何? 知り合い?

スヤ) 四三さん!

四三) スヤさ~ん!

スヤ) 四三さん、お達者で!

四三) はい~!

スヤ) 「自転車節」ば、歌うてね!

四三) ♪逢いたかばってん 逢われんたい

 たった一目で

スヤ) 今じゃなかよ! 東京で、歌うてね!

四三) はい~!

スヤ) ひゃあ~!

(転ぶスヤ)

四三) スヤさ~ん!

(窓から身を乗り出し、大きく手を振る四三)

四三) スヤさ~ん!

(笑顔で手を振り返すスヤ)

四三) スヤさ~ん! スヤさん!

美川) ねえ誰? 誰ねって。ねえあれ誰!? 

 ねえ誰!? ちょっ…ねえ誰!?

 

**********

 

<浅草・映画館前>

男性) 「不如帰」「不如帰」…徳冨蘆花

 先生の「不如帰」はこちらですよ。

美川) 金栗氏、「不如帰」!

四三) あっ、これ…。

 

**********

 

<映画館>

(シマに手を引かれ、客席に現れる和歌子)

客) わ~!

客) お~三島家だ。

(拍手)

美川) 誰? 有名人?

弁士) 本編主人公、浪子。海軍少尉、川島

 武男と恋に落ち、そのもとに嫁ぐも、武男

 の母、慶は、生来気性荒く、何かにつけて、

 浪子につらく当たるのであった。「何かい?

 わしが生きていちゃあ、迷惑なのかい?

 入りますよ! わしが生きているのがそん

 なに邪魔なのかい。ええ!?」。そして、

 ついに、底意地の悪い姑の策略により、 

 憐れお屋敷を追われたのでありました。

 「私、生きたいわ。千年も、万年も」。

(怒りに震えている和歌子)

 

**********

 

<通り>

和歌子) シマ!

シマ) 奥様! 

 杖がむき身でございます! 危ない。

和歌子) あんモデルがあたいとは…

シマ) すみません。

和歌子) むなくそ悪(わい)か、

 訴えてやろかい!

シマ) あ~危ない!

 

**********

 

四三) あ~東京はどこへ行っても人の

 多かね~。スリやひったくりもおるし、

 物も高かし、熊本に比べたら…。

美川) そんなに熊本がいいなら

 熊本に帰ったらいい!

四三) ばっ?

 

**********

 

押川) 本日のスターターを紹介する!

 三島弥彦天狗!

(歓声)

 

**********

 

美川) 春野スヤさんがおる熊本へ

 帰ったらいいよ。僕はうんざりだね~。

 あぎゃん田舎で、蓮根の穴から阿蘇ば

 眺めて、蓮根の穴にカラシば詰めて…。

 蓮根の穴から世界は見えんばい!

四三) 美川君?

 

**********

 

弥彦) あっ、これ撃てばいいのね?

 はいバ~ン。

(弥彦の号砲で走り出す学生たち)

清さん) おい…いきなりかよ。

 

**********

 

(四三の目の前を学生が走り抜けていく)

(十二階から垂れ下がったのぼりを見る)

四三) 「大競争大会」?

 

**********

 

四三) あの~すんまっせん、すんまっせん。

 向こうで、何か、あったんですか?

清さん) はあ!?

四三) いや、皆さん、

 どこに向かって走りよっとですか?

清さん) どこにも向かってねえよ。十二階と

 ひょうたん池の周り、回ってんの、ぐるぐる。

四三) ぐるぐる回って、どぎゃんすっとですか?

清さん) どぎゃん…どうもしねえよ。

 ただぐるぐる回ってるだけ。

 おめえ、マラソン知らねえのかよ。

四三) マラソン…。

 

これが、四三とマラソンの記念すべき

出会いの瞬間でした。

いくら足が速いとはいえ、四三にとって

「走る」とは、あくまで移動手段。

しかし、目の前の彼らは、

走りたいから走っている。

 

(回想)

実次) 四三、お前もひとかどの人間になる

 には、熱中する何かば、見つけるこったい。

(回想)

スヤ) 四三さんの思うように歌うたらよかけん。

 

四三) 頑張れ…頑張れ…頑張れ~!

 がまだせ~! 頑張れ~!

 

**********

 

生まれて初めて見るマラソン競技。

四三の心に、静かに、しかし確実に

小さな火がともりました。

そのころ、もう1人、

胸を焦がしていた男がいまして…。

 

**********

 

(せんべい布団に横たわっている小梅)

美川) 不浄だ! 君は…こんなことを

 してて恥ずかしくないのか。

小梅) もう…何でもいいから。

 遊ぶの? 遊ばないの?

美川) 遊ぶ。…いや遊ばない。

(汗ばんだ美川の顔がゆがむ)

美川) 遊びたい…。

小梅) めんどくせえの引っ掛けちゃったな。

 

あっ、間違えました。

こいつじゃない。こっちです。

あっ、いやいや間違えました。

こいつじゃない、こっちです。

 

**********

 

(寄席の客席に孝蔵)

志ん生) このころ私も、飲む打つ買うを、

 やめたってわけじゃねえんですが、

 ちょっと控えめにして、あの名人の

 寄席へ通いだしたんです。

 

**********

 

<神社の境内>

四三) ♪逢いたかばってん 逢われんたい

 たった一目で よかばってん

孝蔵) うるっせえなバカ野郎!

(走り抜けていく四三)

四三) ♪あの山 一丁越すとしゃが

 彦しゃんのおらす村ばってん

 

**********

 

<寄宿舎>l

永井) 門限破りは言語道断!

 足は直角! つま先は下に!

美川) はい。

平田) 何でも吉原に行ったらしい。

四三) え~?

永井) しばらく肋木につかまってろ!

美川) はい。

 ハハハハ、参ったよ~金栗氏。

 小梅って花魁に見初められちゃって…。

三郎) 本当に吉原か?

 銘酒屋じゃないのか?

(笑い声)

四三) ちょっと、足ば上げて。

美川) 漱石はね、ロンドンに留学中、

 女遊びをしなかったせいで、神経衰弱に…。

四三) えっ、美川君…

 ちょっと、足…足…。美川君!

美川) はい。

四三) 足は直角!

美川) はい。

四三) はい、足ば開いて!

美川) 足ば開いて…えっ?

 ちょっ…あっ…金栗氏…。

(美川の股の下から向こうを見る四三)

四三) マラソン…全員参加…。

 マラソン…。

(マラソン競走の貼り紙)

 

志ん生) 肋木の間から、

 世界が見えたようでございます。

 

**********

 

女西郷、面白すぎる~!「不如帰」関係の史実

をググると結構面白い。「八重の桜」に出てくる

人物も関わっているので、あああの人か~って

いう関係性が見えてきて、何気に楽しかったり。

歴史の授業で近代は飛ばされがちだったので、

実はあまりよく知らない時代を知ることができる

のが、楽しくて仕方がない。「赤ゲット」なんて言

葉、初めて知ったよ~。それにしても…四三の

股間を巧妙に隠すカメラワークの巧みさよ(爆)。

 

偉か人は、熱中する才能ば持っとるばい。
そぎゃん話ば、聞いたことあるばい。
四三、お前もひとかどの人間になるには、
熱中する、何かば、見つけるこったい。

 

熱中する才能。マッサンも、萬平さんも、まさに

熱中する才能がある人よね。そして四三もまた、

熱中する才能にあふれている人に見えるよ~。

 


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