「わろてんか」 第52回
第9週 「女のかんにん袋」
ついにかんにん袋の緒が切れた!
藤吉) ちょっと、今から出かけるわ。
てん) へ? また!?
藤吉) しゃあない。仕事のつきあいや。
てん) ああ堪忍! また長い事面倒見て…。
リリコ) し~っ! 今寝てるさかい。
隼也、藤吉っつぁんにそっくりやなぁ。
なあ、そんなに忙しいんやったら
夜も預かるで。
てん) ああ…おおきに。そやけど、できる
だけ自分で面倒見てやりたいさかい。
藤吉) 頼んだ方がええんやないか?
隼也もすっかり懐いてるようやし。
リリコ) 隼也、
うちの事好いてくれてるみたいや。
藤吉) ホンマにたすかるわ。なあ?
てん) ああ…。
藤吉) ほな、行ってくる。
てん) おはようお帰りやす。
藤吉) 何や。あとちょっとで寄席
譲ってもらえそうなんや。てんも
楽しみにしててや。
てん) へえ。
藤吉) うん。
てん) あっ、初節句のお祝いは…。
言うても無駄やな。
**********
トキ) リリコさん、
何や勘違いしてはりません?
てん) 勘違いしてるんは藤吉はんの方や。
歌子) 大変やなぁ、休み時間やのに。
これおむすび。仕事しながら食べられ
るやろ。
てん) おおきに。
歌子) 隼ちゃん、リリコが見てるんやて?
てん) 藤吉はんが勝手に頼まはって。
歌子) ホンマにっぶいなぁ!
トキ) そやろ?
歌子) ホンマ男っちゅうは
アホばっかりや、ホンマ!
てん) 万丈目さんの事?
歌子) 案の定、
京都に行ったきり戻ってこんわ。
そばにおったらおったで仕事行け
って追い出してしまうけど、おらん
と寂しいもんや。何で男はそういう
女心が分からんのかなぁ、ホンマ。
てん) ホンマやわ。そうや。
(巾着袋を歌子に差し出すてん)
てん) 歌子さん、どうぞ。
歌子) えっ?
てん) かんにん袋です。
トキ) この袋に愚痴言うたら
すっきりするさかい。
風太のアホ! こそこそやって
一体何してんのや!
ついでにおいどを触るお客さん、
ええ加減にしいや~っ! どうぞ。
歌子) あんた~っ、浮かれて調子こいて、
もし向こうでおなごに色目でも使てたら、
はっ倒すで! どアホ~!
すっきりするわ、これ。
てん) もうこれパンパンで破裂しそうや。
歌子) ちょっと! アハハハハ。
**********
藤吉) あの小屋手放す気あるん
やったら、ぜひうちに、譲ってく
ださい。お願いします。
(頭を下げる藤吉とキース)
キース) 席主はん、ええ飲みっぷりですわ。
どうぞどうぞどうぞ。あっ、そや! 景気
づけに何か、芸でもお見せしまひょか?
それか、芸妓でも呼びまひょか?
席主) そやなぁ。
藤吉) 何なりと言うてください。
できる事は、何でもやりますさかい。
席主) ほな、一つ頼みがあるんやが。
藤吉) はい。
**********
(巾着袋を手に取るてん)
てん) 何が寄席をもう一軒や! 毎日遊び
歩いて、この、アホが! 隼也の子守を
リリコさんに頼んだからええ? ちゃいま
すやろ! うちは…うちはただあんたと
家族三人で、藤吉のどアホ~!
(袋の口を閉め、振り返ると伊能の姿)
てん) イチ…
お客さんやったら、そう、言うてえな。
イチ) すんまへん。
てん) 伊能さん、あの…。
これは、その…。
(微笑む栞)
**********
栞) 落語の「堪忍袋」か。
てん) 忙しすぎて、
つい文句言いとうなって…。
栞) 忙しいからじゃなく、
寂しいからだと聞こえた。
隼ちゃんの世話もできず、
藤吉君も話を聞いてくれない。
あ~。仕事が面白い時期なんだよな。
男の言い分だけど。
てん) 寂しいて、言うてもよろしいんで
すやろか。言うたら、何や、歯止めが
きかんなるような気ぃして。
栞) たまにははっきり言わないと。
男は鈍い。
てん) そうか。言うてもええんや。
(戸が開く音)
藤吉) ただいま!
てん) 藤吉はん、お帰りやす。
藤吉) 喜べてん! 通うた甲斐あった。
ええ小屋が手に入りそうや。
おお、来てたんか。
栞) この間のお礼にね。
てん) おいしそうなお菓子、
ぎょうさん頂きました。
藤吉) そうか、おおきに。
(金庫の中から通帳や現金
を取り出す藤吉)
てん) え?
藤吉) これで、手付け打ってくるわ。
てん) ちょ…ちょっと待って下さい。
これは芸人さんに渡すお給金で…。
藤吉) 今すぐ払わなアカンのや。
てん) そんなむちゃくちゃな…。
これがないと困るんです。
藤吉) 大丈夫や。悪いようにはせん。
みんなの給金は、ちょっと待っても
らおう。な! 栞君、また今度のもう。
ほな、行ってくる!
**********
アサリ) 大将に金持ってかれた!?
キース) 何やねんそれ。
岩さん) わしらの給金どうなんねん?
てん) 皆さんすんまへん!
アサリ) そらないで。
てん) 新しい寄席の手付けを
打たなアカン言うて…。
キース) そう言うたら、今日行った先の
席主がどこぞに借金してて、今すぐ
金が欲しい言うてたわ。
てん) 皆さんのお給金はなんとか
明日中には用意しますんで。
アサリ) どないすんねん!
質入れするもんありまんのか?
キース) 俺らは2、3日食わんでも
生きていけるわ。
アサリ) は?
キース) いっつも世話になってる、
ごりょんさんの頼みやで。
岩さん) しゃあないな。
てん) おおきに。申し訳ありません。
**********
てん) すんまへん。お構いもできんと。
栞) これ、少し足しにしてくれ。
てん) とんでもない。伊能さんから
お借りする訳にはいきまへん。
栞) そんな水くさい事…。
てん) いいえ。伊能さんにお金の事で
甘えてしもたら、これからええおつき
あいができんようになります。それに、
これは、うちら夫婦の問題ですさかい。
**********
(すき焼きを食べている風太)
寺ギン) どや、うまいやろ?
風太) はい。
寺ギン) で、オモロイ芸人見つかったか?
風太) う~ん、俺には、まだよう分かりま
せん。みんな大して変わらん。あっ、寺ギ
ンさんは、何で坊主やめはったんです?
寺ギン) 坊主はつまらん。死人に念仏唱
えるばっかりや。生きてる奴救わんでど
ないせえっちゅう話や。落語はどっかの
坊さんが、説教話をオモロしたんが始ま
りらしいが、それやったらはなから落語
聴かしたったらええ。笑いの方が、現世
で迷てる奴らの救いになるわ。ここにも、
迷い人がおるようやが。お前は何のため
にわしんとこおるんや?
風太) え? 頂きます。
**********
藤吉) 帰ったで。隼也は?
てん) もう寝ました。座っとくれやす。
藤吉) 何や、改まって。
そや、俺も、話があるんや。
新しい小屋な、手付け打ってきた。
あとは本契約して…。
てん) なっさけない。手付けか何か知
りまへんけど、大事な芸人さんたちの
お給金を、あんなふうに取っていかは
るやなんて。哀しいわ。
藤吉) お前ら家族のためや。
もっと儲けて、お前ら楽させたい…。
てん) そんな事が、うちらのためになる
て、本気で思てはるんですか? あん
さんがこの一年、うちらのために汗水
流して、働いてきたのは知ってます。
そやけど、今のあんたは、自分のした
い事だけに夢中の、どアホや!
父親でも、夫でもありまへん。うちや
隼也の事、どない思てはるんですか。
節句の兜の事も忘れて。
藤吉) それは…。
てん) あんさんにとって、兜はただの言
いつけられた買い物かもしれまへん。
そやけど、それ囲んで、一緒に隼也の
成長を祝う事が、大事なんとちゃいま
すか?
藤吉) 分かった。
兜買うてきたらええんやろ?
(破裂する巾着袋)
てん) もう、何も話しとうありまへん。
藤吉) てん!
**********
藤吉) おはようさん。
(無言で味噌汁を運ぶてん)
藤吉) 飯、よそってくれるか?
(無言でご飯をよそうてん)
藤吉) しょうゆ、取ってくれ…。
(無言で醤油さしを置くてん)
(タスキを外すてん)
てん) 頂きます。
藤吉) 頂きます。
ついにかんにん袋の緒が切れて、
口をきかないてんでした。
**********
おてんちゃん、ついにかんにん袋の緒が切
れたってよ!…という訳で、ついでに私も。
調べてみたら「まれ」は第59回、「とと姉ち
ゃん」ではなんと、第41回から「華麗にスル
ー」表示」登場していたよ~!…あらまw
「わろてんか」を楽しくご覧になってる皆様
は、この先は華麗にスルーでお願いします。
もう少し辛抱できそうな気がしていたのだ
けれど、今週に入っての、平成妻全開の
ヒロインに、ウンザリしてきてしまって…。
平成の今ならね、ヒロインの言い分に頷く
ところだけれど…。明治時代だし、そもそ
も、藤吉君は仕事をしているわけだしっ!
なんかね、今さら感がね…。今までさんざ
んボンクラぶりを惜しげもなく披露してくれ
ていた藤吉君。見限る機会はたくさんあっ
たはずなのに、どこがいいのかいまだに
わからない男に執着し続けたのは…誰?
芸を見る目も、商売を見る目も、人を見る
目もない。嘘はつくし、何度も騙されるし、
実家の家業は潰すし、いいとこまるでナッ
シング。しかも何が哀しいって、本人的に
はいつも一生懸命のつもりだってところ。
中の人の演技の資質のせいもあって、ど
うにも物悲しいというか、腹が立つよりも、
何だか可哀想になってくるのよね。その
アホなところもボンクラなところも、可愛げ
には結びつかなくて、ひたすら物悲しい。
まあ、一番悪いのは脚本と、イケメン俳優
を客寄せパンダ扱いという無駄遣いに終
始させてしまってる制作側の態度だけど。
いちいち指摘するのが面倒くさいのでカッ
ツアイしちゃうけど…話に矛盾がありすぎ。
事件の起こし方がわざとらしいし、解決法
がこれまた見え見えで、それを何度も繰り
返すだけという、芸のなさ。バカなの!?
いい加減、脚本も演出も、ちゃんとして!
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