第８週 「止まったままの時計」
キアリス開店、そして坂東営業部の再開
出会いは、
その人の人生そのものを変えます。
（回想）
紀夫） 他人を信じるな。
すみれ） そんな、さみしい事言わないでよ。
紀夫） おやすみ。
絶望を感じさせるのも人ならば、
喜びを感じさせてくれるのも、
また人なのです。
君枝） あっ、おしめとガーゼは、
逆の方がいいかもしれない。
明美） ああ…。
（ショーウィンドーに商品を並べる君枝と明美）
良子） （服が） 出来た！
すみれ） うわぁ～ええなぁ。
良子） 出来た。
君枝） わあ～かわいらしいなぁ。
すみれ） すてきやねえ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ついに、キアリス開店の日を迎えました。
すみれ） 紀夫さんも、喜代さんも来てね。
喜代） もちろんです。
さくらお嬢様を連れてまいります。
紀夫） 僕は分からん。仕事の紹介をしてく
れる知り合いに会うんや。場合によっ
ては、そのまま仕事をするかもしれん。
すみれ） はあ…。
喜代） おめでたい日なんですから、できたら
合間にでも、帰りにでも、ちょこっと寄っ
てあげて下さい。
紀夫） うん…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（花売りの少女から花を買っている明美）
明美） ありがとう。
（すみれに気づき） おはよう。
すみれ） おはよう。
良子） おはよう。
君枝） おはよう、すみれちゃん。
すみれ） おはよう。いよいよやね。
君枝・良子） うん。
明美） 行こか。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すみれ） 表に飾ってある洋服も、
この型紙で作れますよ。
良子） こちらで生地も選べますよ。
女性） うちの子、ほかの子に比べて、
よだれが多いような気がするんです。
明美） まだ、上手に飲み込む事ができない
時期なので、そんなに気にしなくてい
いですよ。できたら、こまめに、濡れた
よだれ掛けは、替えてあげてください。
女性） ありがとうございました。
君枝） よろしかったら、よだれ駆けを…。
すみれ） よだれ掛け、こちらになります。
潔） おお～大盛況やなぁ。
栄輔） 来たで、来たで～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
文） 時子ちゃん、これすてきやなぁ！
時子） うん…。
千代子） こんなんええねぇ。
時子） うん…。
綾子） ええね。買われへんけどええね。
すみれ） 近所の時計屋の時子さん、
ご主人を戦争で亡くされたの。
潔） そうか…。
すみれ） ここにある子供服、
全部型紙売ってますよ。
綾子） えっ！
文） 買う買う！
千代子） ええねぇ、時子ちゃん！
時子） 大人のも、あったらええのにね。
（ため息） おしゃれでもしたいわ！
なあ？ お父ちゃん。
時久） 時子～！
千代子） 時子ちゃん！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
麗子） 来たったで～！
良子ちゃんが苦手な、
常連客の麗子さんが、やって来ました。
麗子） これ、頂戴。
良子） ありがとうございます。
麗子） 何やろ。気分ええわぁ！
良子） どれくらい要りますか？
麗子） そうやなぁ…。
あの服作れるくらいがええかなぁ？
良子） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
当てにしていた仕事を、
断られた紀夫君です。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（拍手）
潔） みんなよう頑張った！
すみれ） ありがとう。
麻田） 型紙が大人気でしたね。
すみれ） 型紙のええところはね、楽しい時間
までついてくるところやと思うんです。
私たちも、ものを作る時、誰かの事を
考える。この型紙は、お母さんが子供
のためを思う時間。それも、ついてくる
んです。
麻田） そうですね。
すみれ） 少しでも少しでも…みんなが
希望を持ってくれたらええなぁ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（さくらを「高い高い」する栄輔）
栄輔） 食べちゃいたいわ。なあ？
さくら） 好き～。
すみれ） さくらはほんまに
栄輔さんが好きやねぇ。
さくら、食べる？
栄輔） パン食べるか？
（店の中の様子を覗いて、帰っていく紀夫）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すみれ） すいません。
ほんまに重いでしょう？
（さくらをおんぶしている栄輔）
栄輔） いやいや。
喜代） 紀夫さん、来られませんでしたねぇ。
すみれ） ありがとう。よいしょ。
（外に飛び出して来る紀夫）
すみれ） 紀夫さん…。
喜代） ああ…！
（いきなり栄輔を押し倒す紀夫）
すみれ） 紀夫さん！ 紀夫さん！
紀夫） お帰り。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
忠一郎） あっ、潔さん！
（転がる忠一郎）
潔） 忠さん！ おい！
忠一郎） えっ…ここはどこ？ ん？ 私は誰？
栄輔） 忠さんや！
忠一郎） えっ？ あっ、きよ…。
栄輔） わしやない。
忠一郎） 潔さん！ お客さんがお待ちです。
潔） お客？
忠一郎） あ～イタッ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
潔） おお～！
３人） 潔さん！
潔） 復員しとったんか！
長谷川） はい！
出征した、
坂東営業部の社員たちが、
戻ってきました。
潔） こいつは栄輔。
長谷川） わしら、また潔さんと
働きたいんですわ。
秋山） 潔さんがまた動き出したって聞いて…。
笹井） 居ても立ってもおられんで…。
潔） うれしい話やけど、
まだ資金も準備も足らんのや。
五十八） 潔君。看板っちゅうのは、
揚げたもん勝ちとちゃうやろか？
小さい商いからで構へん。
こいつらが、働ける場所、
作ったってくれ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
１か月後、潔君は、
大阪に小さな事務所を借りました。
かつて、取り引きのあった方々も集まり、
坂東営業部、改めての船出です。
潔） 紀夫君。わしはこれからは、
婦人服や思うてるんや。
紀夫） 婦人服…。
潔） ああ、紳士服やのうて、婦人服や。
女たちはもっと気軽におしゃれしたい
思うてる。いずれ需要は高まる。わし
は、ゆりがおる近江の麻を使えへん
やろうか思うてるんや。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
長太郎） 麻で洋服を…？
潔） そうです。
サマードレスを作りたい思うてます。
長太郎） サマードレス…。
潔） これから主流は、洋服に変わる思います。
長太郎） サマ―…サマードレス？
ゆり） 今のお話聞いて、
着てみたいと思いませんでした？
サマードレス。
節子） サマードレスて…。
ゆり） これなんですけど。
（デザイン画を見せるゆり）
ゆり） お二人にぴったりのドレスの試作品
をあつらえて、差し上げたい思うてる
んです。
静子） すてき！ あっ…。
節子） ああ…そこまで言われたら、いくら
何でも、断れへんわ。なあ、静子。
静子） お義母さん…。
肇） よかったな、静子。
トク子） 洋服に使える、薄い麻を作って
もらうと思たら、やっぱり、石鍋さん
やなぁ…。
長太郎） いやいや、でも…。
ゆり） 伯父様、私に任せてもらえませんか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
キアリスも、
開店してひとつきが過ぎました。
明美） 型紙は、なんぼか売れてるけど、
ほかがな…。
君枝） 今月のお家賃、払えるかしら。
良子） そうやねぇ…。
明美） 何か、考えなあかんな。
売り上げは、芳しくありません。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
忠さんの転び芸（？）、「ここはどこ？私は誰？」
のすべり芸再び。ひっそりと封印したのかと思い
きや、続けるのね…ｗ ドラマは、泣かせる事より
笑わせる事の方が、何倍も難しいとつくづく思う。
そして…モデルがある人の人生を、ドラマチック
に、より興味深く彩るフィクションを作りあげるこ
とは、簡単じゃないだなぁと。史実にはない物語
を作るならば、史実を超えた面白さをつくりあげ
ないと…。そこを失敗すると一気に醒めてしまう。
夫を亡くしたばかりの時子さんに、おしゃれの話
をさせたのには違和感がありすぎだし（そもそも、
前回、時子さんの目の前で、紀夫とその両親の
涙の再開を見せつける演出も、何だかなぁ…と）、
これ見よがしに、栄輔に何度も「高い高い」をや
らせるのも、さくらに「好き」と言わせるのも、やり
すぎ感以上に不快感を感じてしまって…。紀夫
の孤独を引き立たせるためとはいえ、すみれが
紀夫には不自然に気遣いがないのも気になるし、
何より、ヒロインの魅力が感じられない脚本・演
出が気になり始めて…不安を感じる今日この頃。
ただでさえ、王道ヒロインキャラに近いゆりのパ
ートのほうが朝ドラっぽいし、安心してみていら
れるというのは…ちと、いや、かなり問題かも…。
そろそろ、ヒロインをヒロインらしくしてくれないと。
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