「あさが来た」スピンオフドラマ~割れ鍋にとじ蓋~(後半) | 日々のダダ漏れ

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「あさが来た」スピンオフドラマ
~割れ鍋にとじ蓋~(後半)


●あらすじ
主人公は、加野屋で中番頭を務める亀助(三宅
弘城)。「加野銀行」開業にむけて、加野屋の面
々は準備に追われていた。そんな中、亀助には、
気になっている事があった。それは、妻であるふ
ゆ(清原果耶)との結婚を、ふゆの父、日野彦三
郎(上杉祥三)に許してもらっていない事だった。
亀助は、ふゆの父に結婚の許しを得る為にある
策を講じるが、大騒動に発展してしまう。そして、
あさ(波瑠)と新次郎(玉木宏)が現れると…。

脚本 : 三谷昌登
脚本監修 : 大森美香


**********

亀助) 大丈夫なんだすか? あない飲んで。
美和) まあ…もうそっとしときまひょ。
    昔からお酒に弱ぁて、
    酒癖の悪いお人だすさかい。
亀助) ほなあきまへんがな!
美和) 大丈夫だす。
    あれ、お酒と違いますよって。
亀助) へ? え~ひょっとして、
    あれ、お水だすか?
美和) へぇ。フフッ。もう分かってはりまへ
    んさかい。昔っから破天荒なお人で。
    そやけど、うちにとっては大事なおね
    えさんなんだす。早うに親兄弟と別れ
    て、芸子の道に入ったうちにとって、
    おねえさんは、たった1人の身内みた
    いなもんなんだす。昔っから、困って
    る人の事ほっとかれへんたちでなぁ。
亀助) そうだすか。
    その、旦那さんゆうのは…。
美和) あ…そや。
    これ言うとかなあかんかったんや。
亀助) 何だす?
美和) おねえさんの旦那さんゆうのは…。
サツキ) ちょっと! さっきから何~2
    人でコソコソ話してはんの?
    うちのけ者にして…。
美和) 別に、のけ者になんてしてまへんで。
サツキ) 亀助さん。
    うちな、ほんまは寂しいんだす。
亀助) はぁ…。
サツキ) うちも、亀助さんの奥さんみたいに、
    うちの人に思われたいんだす。
    どないしたらよろしのやろか?
亀助) ほな、今度は、わてがご相談に乗りま
    ひょ。あ…そや。わてが、旦那さんの役
    回りしまひょか?
サツキ) あんた~!
亀助) ちょちょ、ちょちょちょちょっ!
    いきなり何しよりますのや!
    ほんま酒癖悪い、もう…。
美和) おいでやす。あっ…。



亀助) え? あーっ! お…お…お父さん!
彦三郎) 誰が…誰がお父さんや。
     それはどういう事や!?
亀助) いやいや…! これはあの、あの、
    これは…これは違いますのや!
彦三郎) 何が違うんや!?
     人が遠路はるばる来たいうのに、
     これはこれは…えらい大層なお出
     迎えやないか。説明してもらおや
     ないか? ええ!
亀助) あの、あの…こちらは、サツキさんい
    いまして、あの、このお店の…こちらの
    美和さんの、古くからのご友人だして。
美和) へぇ。うちのおねえさんで、酔うて、
    酔い過ぎてしもて、亀助さんに絡ん
    でしもただけなんだす。
彦三郎) ほんまか?
亀助) ほんまだす!
美和) 旦那さんもいはりますさかい、
    間違うても、やましい事なんて
    あらしまへんよって!
彦三郎) ほんまか?
亀助) ほんまだす!
サツキ) あんた~!
亀助) ちょちょちょっ…やめとくなはれ!
美和) おねえさん!
    もういい加減にしとくなはれ!
亀助) すんまへん!
彦三郎) 「すんまへん」言うたな、お前!
     すんまへんとはどういう事や?
亀助) いや…。
彦三郎) お前が悪い事してるいう事を
     認めたっちゅうこっちゃな?
亀助) 違いますて!
彦三郎) 違う事あらへん!
     ここで会うたが百年目じゃ…。
     覚悟せえよ!
亀助) あ~っ…。

**********

あさ) ただいま~!
新次郎) ただ~いま。
あさ) はれ? 静かだすなぁ。
新次郎) はれ?
     だ~れもいてへんのやろか?
あさ) うめ!
新次郎) お母ちゃん!


**********

美和) あっ、大番頭さん!
雁助) おう、
    あちらさんが噂の閻魔さんだすな。



美和) へぇ。ちょっと、
    誤解が誤解を生んでしもて…。
彦三郎) あんさん。
     わしをどこまでコケにしまんねや?
     お妾さんとあいびきしてるとこまで
     見せつけて…。
雁助) あの…ごめんやす。わては加野屋で
    大番頭をやらせてもろてます雁助申し
    ます。いや~妾いうのはほんま誤解だ
    すわ。この亀助は、そないな事だけは
    でけへん男だして…。
彦三郎) はぁ? 妾だけやのうて、加野屋の、
     お仲間まで呼んでるてどういうこっち
     ゃ? お前男らしないなぁ! 一人で来
     んのが怖かったんかい!
亀助) 違います。わては、お父さんと、2人で
    お話がしとうて。そやさかい、加野屋や
    のうて、こちらにお呼び立てさしてもろた
    んだす。
雁助) また間の悪いとこに来てしまい
    ましたんやなぁ。そやけど、
    ご主人な、この亀助は…。
榮三郎) 亀助! 亀助!
雁助) こらまたもっと間の悪い事に…!
亀助) 何で皆さん来てはりますのや?
榮三郎) 何でて…そら、お前を助けにやな。
彦三郎) おうおうおう。これは、これは…
     加野屋はんの皆さんやおへんか。
     あっ、大奥様まで。お越しやす。
よの) そちらこそ、ご無沙汰でございます。
彦三郎) へえ…。亀助はん!
     これがあんたのやり方でっか?
亀助) すんまへん。わてにも、何が何やら…。
彦三郎) これやったら最初から、加野屋はん
     にお邪魔してんのと同じやないか!
     せっかくわしはこないして…。ええい!
     くそ! もう、こ…こないなったら…。
サツキ) ちょっと待っとくなはれ!
美和) おねえさん、また!
亀助) サツキさん?
よの) サツキはん?
サツキ) ウッ…。
一同) あ~っ。
サツキ) う~ん…。亀助さん。
亀助) へぇ。このケンカ、あんさんが悪い!
亀助) ええっ!
サツキ) 男らしない、寄ってたかって。
    こちらさんはお一人で来てはんのに。
亀助) そないな事言われたかてわてかて…。
サツキ) 言い訳はよろし。とにかくこないなった
    以上、うちは、こちらさんのお味方に
    つかしてもらいます。
彦三郎) わしの?
サツキ) へぇ。どうぞよろしゅう。
彦三郎) えっ…。
亀助) どないなってますのや?
美和) 言いましたやろ? おねえさん昔から、
    困ってる人の事ほっとかれへんたちな
    んだすて。
サツキ) さあ、亀助さん。もう「すんまへん」は
    聞かしまへんで! きっちり落とし前、
    つけてもらいまひょか! おお!
亀助) え~っ…。
彦三郎) (笑い声) 
亀助) はい?
彦三郎) おもろいおなごはんどすなぁ。
     もうよろしわ。はぁ、こないなとこ来てし
     もて、やっぱり時間の無駄やったわ。
亀助) いや…ちょっと待っとくなはれ!
    お父さん。
彦三郎) はぁ? お前にお父さんなんて、
     言われたないて言うてるやろ!
亀助) 皆さん、すんまへんが、帰っとくれやす。
    わては、お父さんと2人でお話さしてもら
    いたいんだす。お話せなあかんのだす!
    このとおりだす。
雁助) それが、ええやろな、
    ほな、帰りまひょか。
榮三郎) へぇ…。
彦三郎) 待っとくれやす。
     どうせ、皆さんとお会いすんのも、
     今生で最後どすさかい。皆さんにも、
     これだけは聞いといてもらえまっか。
よの) はぁ? 何だすやろか?
彦三郎) 確かに、あの時…ふゆに、
     手ぇ上げてしもたんはわしです。

(回想)
ふゆ) 堪忍だす。お父ちゃん。
彦三郎) このアホが!
あさ) 何しはりますのや!


彦三郎) あの時は…せっかく親が見つけて
     きた縁談をメチャクチャにするあの親
     不幸者を、はり倒して、蹴り倒して、
     ほんまに殺したろかと思いましたわ。
     憎うて憎うて、ふゆも、あんさんらも、
     み~んな! ほんで、それから、すぐ、
     あんさんから、初めて手紙もらいまし
     たんや。
亀助) へぇ。勝手を承知で、
    送らしてもらいました。
よの) へえ~。亀助がそないな事を。
彦三郎) 「すんまへん、すんまへん」ばっかり
     書いた手紙でなぁ。何べん読んでも、
     腹が立って、腹が立って、
     しょうのない手紙やった。
亀助) すんまへん…。
彦三郎) そやのにこの男は、何べんも何べん
     も送り続けてきよってからに…。

雁助) あ~あ~あ~。
弥七) またえらい数だすなぁ。



彦三郎) しかも、どの手紙もしょうもない事ば
     っかり書きやがって…。「ふゆは元気 
     にやっております。ふゆの作る料理は
     どれもこれもおいしおます。ふゆは九
     州一のええおなごになりました」。
     九州全部調べて回ったんかい!
     「ふゆに子供ができました。ふゆが産
     んだ子供やさかいに、名前は、ナツと
     付けました」。もうちょっとひねれよ!



彦三郎) 「ふゆは、
     九州一の母親になりました」て…。
よの) はぁ、そうだしたのか。
彦三郎) 腹立ちますやろ?
     もっと腹立つことに…この手紙が、だん
     だん、楽しみになってきてしもたんどす
     わ。それでついつい、のこのこと、やっ
     て来てしもたんどす。そしたら、このざま
     や。フッ…。けど、分かっとるんです。み
     んな…結局、わしが、悪いんです。わし
     の自業自得や。それやのに、加野屋さ
     んばかりか、どこの誰かも分かれへん
     そこのおねえさんまで、巻き込んでしも
     て、ほんま、すんまへんどした。
サツキ) いいや、うちは…やめとくれやす。
亀助) そうだす。「すんまへん」言わな
    あかんのは、わての方だす。
    ほんま、すんまへんだした!
榮三郎) わてらもだす。
     何も知らんと、すんまへなんだ。
一同) すんまへんだした。
亀助) 待っとくなはれ、お父さん!
彦三郎) 何やねん?
     まだ何かあんのかいな?
亀助) これだけ…。お父さん。
    今日はおおきに!
彦三郎) おおきに?
亀助) わては、ふゆさんと一緒にならしてもろ
    て、この世で1番の果報者になれました。
    この世に、ふゆさんを産んでくれはって、
    ほんま、おおきに。そやさかい、今生で
    最後とか言わんと、これからも、ずっと
    ずっと、わてらのお父さんでいててもら
    えまへんやろか?
    このとおりだす。お願いします!
    サツキさん?
サツキ) またまたしゃしゃり出てきてすんまへん。
    あんさん。ここで帰ってしもたら、一生
    後悔しはります。この亀助さんは、
    こないアホなお人やけど…。
亀助) アホて…。
サツキ) 心根の優しい、ええ男はんだす。そない
    な事ぐらい、もう知ってはりますわな?
    娘さん幸せになってはる事も、
    何もかんも。
美和) おねえさん。
彦三郎) 大きなお世話や。
亀助) もっともっと、大きなお世話して、わても、
    お世話になりますさかい。そんで、ふゆ
    さんを、これからも、誰にも負けんように、
    幸せにしていきます!
彦三郎) 亀助はん。
亀助) へぇ。
彦三郎) 一つ聞いてええか?
亀助) 何だす?
彦三郎) 結局、
     このおなごはんは何者なんや?
亀助) え~そやさかい、あの…この、え~…。
彦三郎) うわっ、びっくりした!
     こ…今度は誰やねん!? ん?
     あ…あんさんは!
亀助) はれ? ひょっとして、あんさん…。
    はれ? どっかで見た事あるような…。
    あっ!

(回想)
彦三郎) ふゆとここの若旦が、あいびきしてた
     んを、この、山本様が、見た言うてはり
     ますのや!
榮三郎) はぁ?
平蔵) ああ…ちゃいます、ちゃいます。
彦三郎) はぁ?
平蔵) わてが見たのは、
    このお方やあらしまへん。


彦三郎) 洋傘屋の山本様!
     平蔵はんやないか。
雁助) 亀助。今度は誰や?
亀助) ふゆの、お見合いのお相手さんだす。

(回想)
亀助) あんさんもあんさんだす。
平蔵) は?
亀助) 何でいっぺんは嫁さんにしよ思たおな
    ごが、こないな事なってんのに、ぼ~っ
    と突っ立ってはんのだす?
平蔵) いや、それは…そっちが悪いんで。
亀助) あんさんが惚れたいうのは、
    その程度の事なんか!
    わてやったらな、どないな事があっても、
    惚れた女は必ず守ります!


彦三郎) 平蔵さん、ここで何してはりますの?
平蔵) おった…。サツキ
サツキ) あんた…。
亀助) あんた? ひょっとして、
    サツキさんの、旦那さんいうのは…。
美和) へぇ、そうなんだす。山本平蔵さんだす。
彦三郎) え~っ!
雁助) 何かまたややこしなりそうで、もう嫌。
サツキ) ちょっとあんた離して。
平蔵) 帰るで。
サツキ) 嫌です!
平蔵) 帰ろ。
亀助) ちょちょ、ちょちょちょ!
    あんさん、お迎えに来はりましたのは
    ええけど、無理やりはあきまへんなぁ。
    サツキさん、嫌がってますがな。
平蔵) どけ。わてはあんたらの顔なんか、
    見たないんや。
雁助) まあ、そらそうやろなぁ。
亀助) いや、そやけど…ちょっと、それより、
    手ぇ離しなはれ。離しなはれて!
サツキ) 痛っ。
    おおきに、亀助さん。
亀助) あんさん。このお人を、お嫁さんに
    もらいはりましたんやろ? そやのに、
    何にも変わってはりまへんなぁ。
平蔵) はぁ?
亀助) 何で何も聞かんと、無理やり連れて
    帰ろとするんだす? サツキさんなぁ、
    家出てきはりましたんやで。
雁助) 家出?
亀助) あんさんが、よそにお妾さんつくって、
    なかなか家に帰ってあげはれへんさ
    かいだす。そやさかい何も変わってま
    へんなぁ言うたんだす。惚れた女はな、
    どないな事があっても、
    必ず守らなあきまへん!
平蔵) わて、そないな事してへん。
サツキ) うそや…。
亀助) ほな、何で晩遅うまで帰りはれへんの
    かきっちり説明しなはれ。ほら、早う!
    説明でけへんのだすやろが!
雁助) ちょちょっ、亀助。
亀助) は? 何だす?
雁助) あんたの早とちりかも分かりまへんで。
亀助) 何でだす?
雁助) さっきな、サツキさんが痛い
    言わはった時な。
亀助) へぇ。
雁助) パッとすぐ手ぇ離さはりましたんや、
    このお人。
亀助) ほんまだすか?
サツキ) 何だす? それ。
一同) おお~。



よの) おおっ、ええ絵やこと。
榮三郎) ほんまだすなぁ。えらいべっぴん
     さんが今にも踊りだしそうだすなぁ。



サツキ) あんた、これ…うち?
平蔵) (頷く)
よの) きっと、どこぞの、名のある絵師さん
    に、描いてもらいはったんやろなぁ。
かの) 羨ましい事だすなぁ。あっ、奥様も
    描いてもらいはったらどないだす?
榮三郎) そうだすなぁ。
     これ、どちらの絵師さんだす?
サツキ) これ…あんたが、
    描いてくれはったんですか?
亀助) ちゅう事は、もしかして、家に帰って
    けぇへんかったんは…。
サツキ) これをうちのために、
    描いてくれてはったんだすか?
平蔵) (頷く)
美和) もうすぐ、ご一緒になりはって1年に
    なる、言うてはったさかい、そのお祝
    いだすやろか?
平蔵) (頷く)
雁助) 何か言いなはれな、あんた。うちの
    へぇさんでももうちょっとしゃべりまっせ。
    まあ、「へぇ」だけやけどな。
サツキ) うちの人は愛想あれへんし、
    口下手やし、何考えてんのか
    よう分かれへんお人なんだす。
亀助) けど、手先だけは器用なんだすなぁ。
サツキ) へぇ。
    洋傘作らしたら、日本一だすさかい。
平蔵) 知り合いの、絵付けの職人とこで、
    習わしてもろてたんや。
    えらい、手間かかってしもて…。



サツキ) ほんまに、器用なんか不器用なんか
    分からへんお人や。うちほんまに、 
    何も分かってへんかったんだすなぁ。
    あんた、堪忍しとくれやす。



平蔵) 謝らんといてくれ。
サツキ) けど…。
平蔵) わてが、描きたかったんや。
    あの日見た、日本一の、芸子さんを…。



平蔵) 天女かと思た。
サツキ) 天女やて…嫌やわ。
平蔵) わての憑物、落としてくれた。あの頃の
    わては、亀助さんに見合い相手取られ
    て、亀助さんにくそみそに言われて、亀
    助さんのせえで、もう二度とおなごなん
    かに惚れるかて…そない思てた。おなご
    なんぞ、商売で儲けて、銭金で何とでも
    したるわて、そのために働いて働いて…。
    そやのに…惚れてしもた。なんぼ惚れる
    か思てても、一目惚れいうのは、どない
    しようもあれへんもんなんだすな。
亀助) そうだす。そうなんだす。
    わても分かります。
平蔵) それからのわては、
    暇を見つけては会いに行った。
サツキ) 来てくれはった。雨の日も、風の日も。
    覚えてはります? おととしの夏だした。
    うちが、夕立に降られて、
    雨宿りしてたら…。
    うちを、傘に入れてくれはった。
    その時だしたんや。うちが、あんたと
    一緒になりたいて思たんは…。
亀助) へえ~。相合い傘して、
    惚れはったいう訳だすか。
サツキ) 左肩、ずぶ濡れやった。うれしおました。
よの) はぁ~よろしなぁ。
かの) ほんにほんに。
榮三郎) そないなお人やったんだすなぁ。
平蔵) そやったかな…覚えてへんわ。
サツキ) それやったら、言うてくれはったらええ
    のに…。うち、勝手に拗ねて、やきもち
    焼いてしもて。みっともないなぁ。
    すんまへんだした。
    ほんまに…すんまへんだした。
亀助) サツキさん、
    そこは、「すんまへん」と違いまっせ。
サツキ) あ…。あんた…おおきに。
    こないきれいに描いてもろて。
平蔵) こっちこそ、おおきに。
    わてなんかに、やきもち焼いてくれて。
サツキ) ほんまにおおきに。
    あんたは、日本一だす!
平蔵) ほんまか?
サツキ) ほんまだす。

(平蔵の胸に顔を寄せるサツキ)
弥七) あらあら…。
雁助) (せき払い)
平蔵) あっ、あのお人につかまれたとこ、
    痛なかったか?
サツキ) あ…痛かった。
     折れてるかも分からしまへん。
亀助) いやいや…そんなアホな!

(笑い声) 
亀助) 何や、わて、
    ものすご悪者になってまへんか?
雁助) 何ウロウロしてんねん。大丈夫やて。
    あんたは、何にしても、悪者なんかにな
    らへんて。そういう得な人柄やさかい。
亀助) ほんまだすか?
雁助) わてが言うてますのや。
    間違いあらしまへん。
彦三郎) 亀助はん。
亀助) はい!
彦三郎) 約束でっせ。
亀助) はい?
彦三郎) さっき、あんた、ふゆの事誰にも負け
     んように幸せにする、言いましたな?
亀助) へぇ。
彦三郎) この2人よりも、
     幸せにしとくれやっしゃ。
亀助) へぇ!


**********

美和) さあ、ほなみんなで乾杯致しまひょか。
彦三郎) そらよろしいな。
榮三郎) みんな、丸う収まって
     よろしおましたなぁ。
よの) ほな、彦三郎さんに、
    乾杯の音頭を、頼みまひょか。
彦三郎) いや、ここは、わしやのうて、
     おめでたい山本様に。
平蔵) え…。
美和) 一緒になりはって、
    もうすぐ一年だすさかいなぁ。
サツキ) あんた、お気張り。
平蔵) え~っと…。そやったら、
    乾杯の前に、ひと言、だけ。
亀助) おお…大丈夫だすやろか?
平蔵) 実はわて、加野屋さんのご近所に
    住んでながら、今日まで加野屋さん
    の前の道、よう通りまへなんだんや。
    見つかれへんよう、遠回りして…。
    けど、明日から、頑張って、目つむっ
    てでも、通るように致します。乾杯。
雁助) でけん。
    あの…それでは乾杯でけしまへんわ。
亀助) ほんまにもう口下手いうか、不器用いう
    か、ほんまよう分かれへんお人だすなぁ。
よの) 平蔵さん。今度からは、遠慮せんと、
    通っとくれやす。なぁ? 通るだけや
    のうて、お顔も、出しとくれやす。
榮三郎) へぇ。
     どうぞ、お待ちしとりますさかいな。
平蔵) おおきに。
亀助) …で、結局、乾杯の音頭、
    どないしまひょ? 誰か…。

(歓声)
うめ) こないに皆さんいたはりましたんやなぁ。
美和) やぁ、おいでやす!
よの) あささん! あっ、新次郎も。
榮三郎) さちまで何で?
あさ) こらまた皆さんおそろいで。
    びっくりぽんだすなぁ。
亀助) サツキさん。本家本元だす。



新次郎) あ~こらこら、
     確かふゆのお父さんだしたな。
彦三郎) ご無沙汰でございます。
あさ) あっ、こちらは確か、
    洋傘屋の山本様だすなぁ。
雁助) さすがおあさ様や。よう覚えてはるわ。
平蔵) その節は、ご迷惑、おかけしてしもて…。
あさ) こちらこそ。お元気だしたか?
平蔵) へぇ、おかげさんで。
サツキ) お初にお目にかかります。
    妻のサツキと申します。どうぞよろしゅう。
あさ) ああ、そうだしたんか。
    あさでございます。どうぞよろしゅう。
新次郎) わては、新次郎いいます。
     どうぞよろしゅう。
サツキ) へぇ、新次郎様。ご無沙汰しております。
新次郎) は? あれま…。
     いや…どこぞでお会いしましたやろか?

(笑い声) 
あさ) ふ~ん。旦那様は、ほんまにいろんな
    おなごはんとお知り合いだすものなぁ!
新次郎) はぁ~またやきもちだすな。
あさ) 焼いてまへん!
新次郎) 焼いてますがな!
あさ) 焼いてまへんて、もう!
亀助) まあまあ、まあまあ! やきもちいうん
    は惚れてるさかい焼けるもんだす。
    そうだすな? サツキさん。
サツキ) ほんまに。
榮三郎) ああ、やきもちいうたら…なぁ、亀助。
     さちに分かるように話したってぇな。   
     わてとふゆは、決して怪しい事は
     あらしまへんて!
亀助) なんだすて!?
新次郎) はぁ?
     そない楽しい噂、ありますのか?
あさ) 旦那様ゆうたら面白がって…!
さち) そうだす。旦那様。
    うちは旦那様が思てるより、
    旦那様の事よう分かっております。
榮三郎) え?
さち) なにもそないな事、
    本気で心配したり致しまへん。
榮三郎) さち!
あさ) そうだす、榮三郎さん。さちさんは榮三
    郎さんにお話があって来ましたのやで。
よの) おっ、話?
かの) 何だすやろなぁ?
さち) 先ほど、お医者様に診てもろたん
    だすけど。子ができましたのや。
新次郎) ハッハハ。やりましたなぁ。
     おめでとうさん! 八代目。
あさ) おめでとうさんでございます。
よの) やぁ、どないしよう!
かの) ほんにほんに!
    おめでとうございます。
亀助) おめでとうございます!
弥七) おめでたい事や!
榮三郎) (泣)
新次郎) 何泣いてますのや、榮三郎。
雁助) そうだす。
    これでいよいよ加野屋も安泰だすがな。
榮三郎) おおきに、雁助。
     おおきに、お兄ちゃん。
亀助) やっぱり、 
    「おおきに」はええ言葉だすなぁ。
美和) ほんまだすなぁ。ほな、改めて
    みんなで乾杯致しまひょ。
新次郎) 乾杯? そらよろしおますな!
     ほれ、あさ。
あさ) へぇ、是非。ええ時に来たこと。
雁助) ほんまだすがなぁ。お2人とも肝心な時
    にはどこにもいてんと。今までどこ行って
    たんだすか?
あさ) いや、それが…。
新次郎) 実はな、亀助が九州戻る時、
     お土産、探し行ってましたのや。
亀助) え? わての?
    そりゃ気ぃ遣てもろて、おおきに。ほんで、
    何、買うてきてくれはったんだすか?
あさ) それが、まだ選べてまへんのや。
新次郎) せや。迷てしもてなぁ。
亀助) 何だす? それ。
サツキ) あっ! それやったら、うちらにご用意
    さしてもらわれしまへんやろか?
    日本一の洋傘を。なぁ、あんた。
平蔵) へぇ。ほな…。これを、どうぞ。
亀助) ああ…。
雁助) 用意よろしなぁ。雨も降ってへんのに。
サツキ) いつも持ち歩いてはるんだす。
    いつ雨が降ってもええように。
    この人の口癖だす。傘屋が…。
平蔵・サツキ) 雨に濡れる訳にはいかしまへん。
美和) まあ。
亀助) こら、ふゆも喜びますわ。
サツキ) 一本ですんまへん。
亀助) 一本でええんだす。わてら2人で…
    いや、3人で入りますさかい。
新次郎) よっしゃ。いろいろ、おめでたい
     いうことで、乾杯しまひょか。
亀助) へぇ!
榮三郎) 結局乾杯の音頭はお兄ちゃんが
     一番よう似合うてはりますわ。
亀助) そうだすなぁ。
新次郎) ほれほれ。皆さん、よろしおますか?
     ほな、いきまっせ。乾杯!
一同) 乾杯!

**********

亀助) お父さん、ほんまに、
    よろしいんだすか?
彦三郎) 大丈夫や。
     人を年寄り扱いしなはんな。
     わしはまだまだ、元気でっせ。
亀助) へぇ。ものすご~お元気やったて、
    ふゆに伝えときます。
彦三郎) うん! ほな、またな。
亀助) へぇ。お気を付けて。
彦三郎) 今度はなぁ…。
亀助) はい?
彦三郎) 今度は、京都においで。
     家族みんなで。
     うまいもん食わしたるさかいに。
亀助) へぇ、おおきに!

(頭を下げる彦三郎))
亀助) あ…。
(頭を下げる亀助)
亀助) お気を付けて。
(帰っていく彦三郎)
榮三郎) (さちに) 大丈夫か?
新次郎) 亀助~!
亀助) へぇ。
新次郎) ほなわてら、先行きまっせ。
亀助) へぇ。
よの) 平蔵さんがな、榮三郎とさちさんの
    お祝いに、うちらみ~んなにも、
    洋傘くれはりますのやで。
かの) ほんにおおきに。
あさ) 後できっちり
    お支払いさしてもらいますさかいな。
サツキ) 何水くさい事を。こないして、仲よう
    なれたんだすさかい。なぁ、あんた。
平蔵) へぇ、「雨降って。地固まる」だす。
榮三郎) 洋傘屋さんだけに?
新次郎) うまい!

(笑い声) 
亀助) サツキさん、おおきに。
サツキ) 亀助さん、おおきに。
    ほな皆さん、行きますで。
一同) へぇ。
新次郎) ほなな。
亀助) へぇ。


**********

榮三郎) はぁ~あ、男の子だすやろか?
     女の子だすやろか?
さち) さあ、どないだすやろな。

(笑い声)

**********

亀助) 「雨降って、地固まる」か。
美和) 亀助さん、お帰りやす。
亀助) 今日は、いろいろ、すんまへんだした。
美和) こっちこそ、うちのおねえさんの事、
    おおきに!
亀助) いやいやいや…。あれ? 雁助さん、
    まだいてはったんだすか?
雁助) 待ってたんやがな、あんたの事。
亀助) わての事? へ? 何だす?
雁助) 何だすやあれへんがな。あんた、
    わてに何か言う事あれへんか?
亀助) 言う事…?
雁助) うん。
亀助) へ? えっ、何だすやろ? え~…。
    あかん。分かりまへんわ。
雁助) 亀助。あんたな…。
亀助) へぇ。
雁助) あんだけみんなに「すんまへん、すんま
    へん」、「おおきに、おおきに」言うといて、
    わてにはひと言もあれへんのかいな。
亀助) えっ、言うてまへなんだか?
雁助) 言うてへんわ。
亀助) ほんまだすか?
雁助) 言われてへん本人が言うてますねん。
    ほんまだす。
亀助) そうだすか…。けったいやなぁ。
雁助) ………。
亀助) ………。へ?
雁助) 「へ?」やあれへんで。
    お前わざと言えへんのやろ?
亀助) 違いますて! ほな言いますて。
    はいはい、はいはい。すんまへん。
    はい、すんまへん。
    おおきに。あ、おお~きに。
    はいはい、はいはい。
雁助) お前はもう…
    両手両足、いっぺんに捻挫せぇ、お前は。
    何やそのええ加減な!
亀助) 照れくさいんだすがな。
    改まって雁助さんに
    そないな事言えますかいな!
雁助) もうよろしわ。
亀助) そのかわり言うたら何だすけど…。
雁助) 何や?
亀助) 雁助さんの時も、わてが稽古
    相手になりますさかいに。



雁助) わての時?
亀助) へぇ。
雁助) 何や? わての時て。
亀助) そやから、雁助さんが、いつか誰か、
    嫁はんもらう時か、逃げられた奥さん
    迎えに行きはるかの稽古だすがな。
雁助) そないな時は、けぇへん。
亀助) そないな事分かりまへんやろ。
    あっ、ちょっと、やってみまひょか。
雁助) やらんかてええ。
亀助) ほな、いきまっせ。
雁助) やらんかてええ言うてます!
亀助) あら! お前さんやあらしまへんか。
雁助) 気持ち悪っ。
亀助) どないしましたん?
雁助) 何やそれ!? お前。
亀助) 急に。
雁助) それ誰やねん。
亀助) 寂しかった。
雁助) うわっ、気持ち悪い。
亀助) 寂しかった。
雁助) どういう設定やねん。
亀助) うちな、寂しくって…。



雁助) 亀助。
亀助) 雁助さん。何だすか?
雁助) あんたこそ何だす?
亀助) いや…雁助さんから。
雁助) あんたから言い。
亀助) いやいや、ここはやっぱり…。
雁助) もうよろしわ。あんたと遊んでる
    暇なんかあらしまへん。
亀助) そうだすか。ほな、わてから…。
    明日、九州に帰ります。
雁助) さよか…。まあ、達者でな。
亀助) へぇ、雁助さんも。
雁助) うん…。
亀助) ほんで、雁助さんの番だすけど、
    何だす?
雁助) もう言うた。
亀助) は?
雁助) 言うたがな! 今。達者でなて。
亀助) ああ…。
雁助) いろいろ、面白かったわ。
亀助) こちらこそ、いろいろ、おおきに。
雁助) またな。
亀助) へぇ。




雁助) 何や怖い怖い怖い。危ない。
亀助) シ…シェッハンいうらしいんだす。
    奥さんから聞きました。
    友情の、証しだす。
雁助) 友情の、証し?
亀助) へぇ。






あさ) あっ、シェッハンや!
    亀助さんと雁助さんが、
    2人仲良うシェッハンしたはる!




雁助) 何もしてまへんで!



亀助) あっ、あ…あ~っ!





**********

ふゆの父親彦三郎と洋傘屋の平蔵さん。本編
では悪い人というか、良くない印象のまま終わ
った2人が、このスピンオフで人となりがわかっ
て、好印象のキャラで終わらせてくれた脚本に
感謝。みんな、何だかんだいって悪い人はいな
い世界が「あさが来た」ワールド。それでいいの
よ、朝ドラは。みんなを好きになりたいんだもの。

そして、「あさが来た」での重要ワードでもある、
「おおきに」が大活躍。そうそう、「すみません」
より、「ありがとう」が気持ちがいい。謝られると
悪い事をしたかのようで、居心地が悪い。素直
に感謝される方が気持ちがいいし、嬉しいもの。
最後は新次郎の乾杯でめでたしめでたし~♪

名場面をコンパクトに編集したプチ総集編もよ
かった。ここだけ永久保存してもいいって感じ。
最後の最後まで、亀助&雁助の漫才で終わっ
たのも嬉しい限り。「あさが来た」のスピンオフ
ドラマ、十分に堪能させて頂きました~(*^。^*)


スピンオフドラマ~割れ鍋にとじ蓋~(前半)

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