「BORDER」 第9話(最終回)「越境」~石川安吾最後の決断 | 日々のダダ漏れ

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「BORDER」
警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係

「BORDER」(9)

第9話
「越境」~石川安吾最後の決断


人は死んだらどこに行くんだろう?
僕はある事件に巻き込まれ、
頭に弾丸を撃ち込まれた。
頭の中を半周した弾丸は、
脳底動脈のスレスレで止まり、
奇跡的に命を取り留めた。
ただ、その弾丸を取り除く手術は困難で、
僕はしばらくこの弾丸と共に生きていく事になった。
その結果、僕は…
死者と話せるようになった。


**********
 
安藤) どうやってあなたが私にたどり着いたのか、
    いまいちよくわかりませんが、なんにせよ、
    あなたは間違っていなかった。
石川) 何が目的だ?
    どうやったらあんな無垢な子供を殺せる?
安藤) あなたが、あの子を無垢だと思ったのは
    なぜですか?
私に殺されたからでしょう?
    あの平凡な子が、無垢な存在になれたのは、
    私のおかげですよ。言うなれば、私があの子
    に光を与えてやったんです。

    それに、世の親達にモラルを与えてもやりま
    した。
しばらくの間は、私のおかげで、買い物
    の時、我が子の手を離す親が減る事でしょう。

    闇があってこそ、光があるんです。
    悪が存在してこそ、正義も存在する…。
    どちらか一方しかない世界なんてつまらない
    ですよ。そうでしょう?
    私がいるからこそ、あなたは輝けるんです。
    もし、それが気に入らないなら、あなたもこち
    ら側に来るといい。髪の毛を置くなんてみみっ
    ちいまねをしないで、私を直接罰すればいい。
    それは出来ないでしょう?  
    でも、それが正しいんです。私が絶対的な悪
    をなす。そしてあなたは、中途半端な正義を
    実践しようとして、常に私に敗北する。
    これからも正しい関係でいましょう。
石川) いつから悪に染まった? 何がきっかけだ?
安藤) さあ? いつからでしょう。
    ところで…あなたが正義に染まったのはいつ
    ですか? 何がきっかけですか? わかったで
    しょう? 実は、正義や悪に大した違いはない
    んです。あるとするなら、実際に行う者の違い
    だけです。つまり、私が有能で、あなたが無能
    ということです。私は絶対的な悪をなすために、
    これまで長い準備期間を費やして、あらゆる
    犯罪を研究しつくしました。無能なあなたに、た
    やすく捕まるわけにはいかないんです。ちなみ
    に、アルファベットのAは、私の名前、安藤の
    頭文字です。これからも私は、いろいろな死体
    にサインを書き続けるつもりです。誘拐殺人は
    完成したので、次は違う犯罪に手を染めようと
    思っています。そのための求職活動中なので、
    これ以上邪魔をしないで下さいね。

 
**********

石川) 絶対的な悪は、この世に存在すると思うか?
赤井) 随分と哲学的な問いかけですね。
    即物的な私にはよくわかりません。
石川) 茶化さないでくれ。本当に知りたいんだ。
赤井) 存在するでしょうね。
    これまでの人生で何度か、絶対的な、
    悪と呼べそうなものを見てきました。
石川) それに勝つためにはどうすればいい?
赤井) 私ならそもそも戦いません。
    絶対的な悪に勝つためには、絶対的な正義に
    ならなくてはいけない。つまり…コインの裏表
    になるという事です。端から見れば、同じもの
    に見えるという事です。
石川) じゃあどうすればいい?
    黙って見逃がすのか?
赤井) 相手がしくじるのを待つんです。じっくり、腰を
    据えて。その間に、戦う知恵も必ず増えてきま
    す。とにかく、焦らない事です。
石川) その間に、幾つもの命が消えていってもか?
赤井) 消えていくものを、必要以上に儚んではいけ
    ません。あなたの魂がすり減ってしまいますよ。
    運命だったと思って、諦めるんです。
石川) フッ…。俺が撃たれて生き返ったのも運命だ
    ろう…。だとすると…それに従わなきゃならな
    い。ありがとう。
赤井) 石川さん! 近々、ビジネスは抜きにして、
    酒を酌み交わしましょう。
石川) ああ。楽しみにしてるよ。

 
**********

石川) 怖いか? 死にたくなかったら自白しろ。
    証拠を差し出せ!
安藤) 本当に何もわかってないですよ、あなたは。
    あなたは正義のためなら死ねると思ってるで
    しょう? 私も同じです。悪をなす為なら死ねる
    と思っています。でも…あなたと私には決定
    的な違いがあります。私は、悪をなすためな
    ら人を殺せます。でも、あなたは殺せないでし
    ょう? この差は…永遠に縮まらないんです。
    それがわかったんなら、もう私のことは諦め
    て、さっさとコソ泥でも捕まえに行ってください。
    また私の勝ちですね。


**********

安藤) こちらの世界へようこそ。

**********

うわ~こう来たかって。この結末は、アリだと思うけど、
テレビでやるのは勇気あるなぁっていうのが、最初の
感想。映画なら普通にありそうなラストかなとも思うし。

古来から、死者と関わった人間の物語は、その精気
を奪われたり、死に至る物語が多く、石川が死者と関
わるようになって、どんどん消耗していくように見えた
のが、ドラマを観ていて印象に残った部分。くしくも赤
井が言ったように、「魂がすり減って」いくように見えた。
知らずに済んだはずの真実、聞こえなかったはずの
声、そもそも見えるはずのない死者の姿と関わること
が、生きている人間に、いい影響を及ぼすとは思えな
い。死者の世界と生者の世界は、本来交わるべきで
はないような気がして…。死は、誰にでも訪れるもの。
消えていくものを、必要以上に儚んではいけない。赤
井の言葉は、石川にはもう既に届かなかったのか…。
 
私が絶対的な悪をなす。
そしてあなたは、
中途半端な正義を実
践しようとして、
常に私に敗北する。


絶対的な悪を実践する安藤に、
中途半端な正義と言われてしまう石川。
そして、絶対的な悪に勝つために、
どうすればいいのかを赤井に問う石川。
 
絶対的な悪に勝つためには、
絶対的な正義にならなくてはいけない。
つまり…
コインの裏表
になるという事です。
端から見れば、
同じもの
に見えるという事です。

いつから悪に染まったのか?
いつから正義に染まったのか?

私は正義をなすためなら死ねる。
私は悪をなすためなら死ねる。

悪をなすためなら、人を殺せる。
正義をなすためなら…

何度も何度も繰り返される絶対的悪と絶対的正義。
そして、その、
「BORDER(境界線)」を分けるもの。

ずっと、生と死、正義と法、情と非情の「BORDER(境
界線)」
で揺れ動いてきた石川ではあったけれど、き
っと、最後の一線は越えられないだろうと思っていた

境界線を彼はあっさり(そう見えるように)越えてしま
った。まさに、「あっ!」という声なき悲鳴が聞こえそ
うだった一瞬。石川の目からあふれだす涙があまり
にも痛々しくて、戻れない境界を越えてしまった彼を
待っていた、「こちらの世界へようこそ」の声に、震撼。

小栗君、ホントいい役者になったなあと、しみじみ…。
たとえフィクションでも、死者に関わる物語はちょっと
辛かったのだけれど、最後まで観続けて…よかった。



●「BORDER」HP
 
●「BORDER」関連ブログ↓
第1話「発現」~一家惨殺事件重なった赤い足跡
第9話(最終回)「越境」~石川安吾最後の決断

BORDER 贖罪


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