「ふくが来た！」
～おせちに願いを、おむつには呪いを
岩淵） お久しぶりです。
正蔵） あの…あの、え～、むさ苦しい所ですけど、
まあ、どうぞ、ちょっとお入り。
め以子） あ、私、お茶でも入れましょう…。
正蔵） いや、ええ、ええ…。いや、積もる話もあるさ
かいな。ええわ。おおきに。さっ、どうぞ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
岩淵） いつも、先頭に立っていた長田さん、覚えて
らっしゃいますか？
正蔵） よう覚えてます。
岩淵） 先日、お亡くなりになりました。あなたに渡し
てくれというのが遺言だったそうで。会社の方
に送られてきました。
それでは。お渡ししましたんで。
正蔵） ちょっと！ ちょっと…。あの…あそこ、
あの村はどうなってますのやろう？
岩淵） あの時のままですよ。あなたが放り出した、
あの時のままです。失礼します。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠太郎） 僕かて知りませんよ。
あの人の仕事の話なんて。
め以子） それ、何かおかしくないですか？
みんな知らないなんて。
悠太郎） 勤め人の家ってそんなもんちゃいます？
年に何回かしかおらんような人やったし。あ
なたかて、僕が今、何やってるかなんてよう
知らんでしょう？
め以子） 知ってますよ。小学校でしょ？
悠太郎） 来月には、生まれるんですよね？
め以子） この子に、何か関係あるんですか？
悠太郎） いや…この子かて、
小学校に通うやないですか。
め以子） えっ、えっ。この子の小学校、悠太郎さん
が建てるんですか？
悠太郎） いや、ちゃいます。ちゃいますけど。小学校
いうんは、小さい子供が通うとこでしょ？ ごっ
つい安全に、頑丈に造ったらなあかんやない
ですか。
め以子） 責任重大ですね。
悠太郎） そうなんです。そんな大切なものやのに、
今までの計画を白紙にして、コンクリート造で
僕が設計し直す事になってしまったんです。
め以子） えっ？ え、それって凄い事じゃないですか。
え…えらい事やないですか。お祝いしないと。
悠太郎） まだ、始まったばっかりなんで、うまくいくと
は限りませんから。
め以子） でも、よかったですよね。
そういうお仕事ができて。
悠太郎） えっ？
め以子） 自分の手で、子供達に安全な学校を造って
あげられる機会ができたってことでしょう？ 悠
太郎さんの夢が叶えられるってことじゃないで
すか。
悠太郎） まあ、前向きに捉えると、そうなりますよね。
…頑張ります。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
め以子） 大抜擢だと思うんですけど…。
大喜びっていう風でもないんですよね。
正蔵） まあ、大仕事やさかいな。
気ぃが張り詰めとんのやろう。
め以子） こう…やったるでぇってならないんですか？
正蔵） んな、人によるわいな。ハハハ。
め以子） あっ、そういえば、昨日の方、何のお話だっ
たんですか？
正蔵） うん。あの…
昔の知り合いが亡くなってな、その報告や。
め以子） そうだったんですか。
正蔵） それを…聞きにきたんかいな？
め以子） あっ、あの、それもあるんですけど…
よいしょ。あのですね、西門のおせちを教えて
いただきたくて。
正蔵） おせち？
め以子） その…お正月に、卯野の家族が来るので、
食べさせてあげたいなって。
正蔵） みんな、来はるんかいな。
め以子） あ…お父さんも呼ぼうって、私たちは言った
んですよ。言ったんですけど…その…息子さ
んが。
正蔵） いや、もう期待はしてへんさかいに。それに、
わしはわしで、用事があるしな。よし、わかった。
おせち、教えたろ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
藤井） もう、この方向でええんとちゃう？
もう、これで大事ないやん。
悠太郎） もっかいだけ、もっかいだけ、この部分を、
考えてみませんか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
め以子） おせち、教えていただいて、ありがとうござ
いました、師匠。あっ、お父さん。
正蔵） ほなまあ、師匠として言わしてもらうけどな、
おせちって何や思う？
め以子） おせち？ お重に詰めたお正月のお料理で
すよね？ お正月早々、お台所に立たなくて
済むっていう。…違いますか？
正蔵） まあ、暇があったら、考えてみといて。
め以子） はい。
正蔵） ほな。
め以子） あっ、ほな、おおきに。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
希子） あのね、あの…ちい姉ちゃん宛てにお姉ちゃ
んから小包届いてんねんけど。
静） ちょっと、開けてみてえな。…うわ…。
め以子） これ、産着。おむつも。
静） あ、これホンマに、和枝ちゃんが？
（和枝からの手紙）
もうじき必要になるかと思い、用意致しました。
一針一針、祈りを込めて縫い上げました。
希子） お使いいただければ幸いです。和枝。
静） へえ～。
め以子） お姉さ～ん。
静） なんや、人変わったんかいな？
希子） ねえ。
…ん？ これ、糸の端、留まってませんよ？
め以子） えっ？ あっ…。あ…。
お母さん、どうしたんですか？
静） ちゅうかな…糸を留めてへんのって、確か、仏
さんに着せる経帷子の縫い方やったような…。
ちゃうかった？
め以子・希子） ああ…。
静） いや、ああ…あかん！あかん、これは呪いや！
和枝ちゃんに、呪いかけられとる。
ちょっと、塩、塩！ 塩持ってきて！ 塩！
見たらあかん、見たらあかん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
桜子） んで、どうしたの？ それ。
め以子） 要は、糸が留まってたらそれでいいんじゃ
ないかって話になって。ちょっとほどいて、足
りないとこ縫い直して、で、使うことにした。
桜子） たくましいというか、ケチくさいというか。
馬介） ハハハハッ。まっ、おせちに願いを、おむつ
には呪いをってとこやな。
め以子） 願い？
馬介） おせちは、願いを込めた料理やんか。
め以子） えっ？
馬介） 黒豆は、今年も、まめまめしく、働けますよう
にて、いう事やろ？ 数の子は、子孫繁栄。叩
きゴボウは、根を張って、生きていけますよう
にて。昆布は、よろこんぶ。にらみ鯛は、めで
たいの語呂合わせ。エビを使うんは、長寿。腰
が曲がるまで、いう事や。きんとんは、金やな。
お金。儲かりますようにて。昔の人はな、いろ
んな願いを、年の初めの料理に込めたんや。
め以子） へえ～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
源太） ええ習慣やなあ。
年の初めから、日本中の人が願うて。
め以子） そうよね。
願いたくなる事、今年いっぱいあったもんね。
源太） せやな。
め以子） あっ、源ちゃん、お正月どうしてるの？
源太） えっ？
め以子） お父ちゃんとお母ちゃん、こっちに来るから。
源太） へえ～。
染丸） 源ちゃんは、うちとお伊勢さんに行くんですぅ。
２人の行く末を、お願いしに行くんですぅ。
源太） ああ…えっ？ 行く末？
染丸） そうやもんなあ…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠太郎） 今、鉛筆食べてませんでした？
め以子） いいえ。ちょっとおせち考えてて。
悠太郎） おせちって、
そんなに考えるもんなんですか？
め以子） う～んまあ、ちょっと、私なりのおせちに挑
戦してみようかと。
悠太郎） 料理ってええですねえ。
料理は人を傷つけへんやないですか。
め以子） まあ、食べるものですからねえ。
め以子のおせち作りは、
着々と進んでいましたが…。
最後の一つを、まだ、決めかねておりました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
久々に和枝の手の込んだイケズいただきました～！
相変わらず、真面目に労力をかけたイケズやわ～ｗ
呪いだろうが、め以子がメンドクサがっていたように、
産着もおむつも、たくさん縫うのは大変なのにね～。
素直に祝ったら和枝ちゃんらしくないし、ほんの少し
の手間をかければ済む話…というわけで、結局はち
ゃんと使えて、イケズ健在もアピールできるという…
さすが和枝ちゃん、お茶目な呪いじゃないですか！
今日はようやく、食がテーマの名に恥じない、おせち
の由来が語られたし、お正月に向かっていい感じ♪
昔はおせちが好きになれなかったけど、最近のもの
は美味しいし、自分が好きなものだけ集めたおせち
でもいいし。近頃は、結構おせちを見直してきている
というか…。今年は何か一つぐらい、願いを込めた
料理を作ろうかなあ、なんて思ったりして…(*^。^*)
正蔵さんのトラウマが小出しにされていくのはよしと
して、相変わらずのめ以子の無神経ぶりも健在で、
作者はホント、ヒロインに対してイケズだなあと思う。
ついでにぼやいちゃうと、話のセンスが悪すぎる～。
ヒロイン絡みはイライラするから、早く他の人たちに
合流してほしいなり～。卯野家のみんな、カモ～ン！
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