ごちそうさん 第43回
「ごめんなすって」
～信じるんも信じへんもあんたの自由
大正12年春。
度を増す和枝のいじめに、
ついに堪忍袋の緒が切れた、め以子でしたが、
大量の鯛を、一時に処理しなければならないという、
魚島事件を経て、隅から隅まで、美味しくいただく、
始末の料理を体得。
悠太郎のために、自分のために、
楽しい食卓を作りたいと、
改めて思っため以子でございました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静） これ、ガスで炊いたご飯？
め以子） はい。食べてみて下さい。
悠太郎） いただきます。
静） いただきます。うん。美味しい。
め以子） どうですか？ お姉さん。
和枝） 味は同じでも、マキの方が美味しゅうおす。
手間ひまかかっとるいうありがたみがありま
すさかいな。
静） 手間ひまかけても、
文句ばっかり言うてはるくせに。
和枝） 文句やない。感想や。
静） ガスの見学のお人も、案内せんといかんなあ。
なあ実際のところ、火ぃ付けんのに、手間かから
へん以外にどこがええの？ ガスって。
め以子） 温め直しが楽なので、あったかいものを
あったかく食べられます。それから火加減
を自由にあんばいできますから、失敗が少
なくなるんです。
静） それちゃ～んと説明せなあかんな。
悠太郎） お静さん、張り切ってますねえ。
和枝） そら綺麗なべべ着て人前に立ちたいですも
んなあ。
静） タンスの奥で出番待っとる子がようけおるから
なあ。
和枝） 分不相応にお子さん作り過ぎなんと違いま
すぅ？
め以子） あっ、お、お姉さん、よかったら、実演な
さいませんか？ お姉さんが見事な手さば
きで料理してみせたら、見に来た方・・・
和枝） 見せもんみたいな真似ごめんだす。
め以子） 希子ちゃん、今度やって・・・
和枝） 希子にそんな恥ずかしい事させんとって！
静） ほな、２人でやろか？
め以子） ああ。そう・・・ですね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静） かまどの温度の調節は、手間のかかるもので
ございます。そこで、このガス！ なんと、火加減
を、このひねり一つ、ひねり一つでよろしおます。
ヨシムラ） あ～いい！
静） カラ～ッと揚がって、美味しおすでぇ。
ヨシムラ） 美味しおすえ。
静） め以子さん、
みなさんにこれ、配ってさしあげて。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ヨシムラ） 西門さんからお話もうた時は半信半疑や
ったんですけど、実際見せると説得力ちゃ
いまんな。
静） うちでよければ、いくらでもご協力しますんで、
なんぼでも言うて下さい。
ヨシムラ） ほなまた近いうち相談さしてもらいますよ
って。お家（え）さん。
静） お家さんやなんて、やめて下さい。
老けこみますわ。
ヨシムラ） お家さん。ハハハハハ。
静） あら、おかえり。一番上の娘の和枝です。
和枝～ご挨拶。
和枝） この度は、お世話になりまして。
ヨシムラ） どうも。
め以子） お・・・お姉さん、おかえりなさい。
和枝） 塩まいとき！
め以子） えっ、塩？ まいていいんですか？
後からもったいないとか仰いませんか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠太郎） 僕の今月の給料です。この金は西門の金
です。せやからみんなで、お金の割りふりを
決めたいと思います。いかがでしょうか？
静） ええんちゃうの？ 公平で。
悠太郎） ほな、家長なんで、
僕から取らしてもらいます。
和枝） そんなに取りはんの？
悠太郎） 僕の小遣いと、ガス代の見込みなどで10
円。借金の返済分で10円。更に、食費として
30円いただきます。
和枝） 食費そんなに要りはらしまへんやろ。
悠太郎） 365日、みんなで美味しいものを食べる事
を、この家の最優先事項としたいと思います。
更に、食卓は、め以子も一緒に囲むことにし
ます。
和枝） おなごしが一緒に食べるなんて聞いた事あり
まへんで。
悠太郎） 皆さんの意見を伺いたいんですが。
め以子） あっ、い、今、その事は、いいから。
お金の事だけに。ねっ。
悠太郎） ほな、姉さんとお静さん、
必要な分を言うてください。
和枝） 25円。
静） 10円。
和枝） あんさん、そんなに要りまへんやろ。
何もしてはらへんのに。
静） ほな、うち、ええわ。
和枝） えっ？
悠太郎） ええんですか？
静） 三味線習いに来はる人も増えましたしなあ。
悠太郎） 黙ってツケで買い物もなしですよ。
静） わかってますよって。着道楽は控えまっさ。
和枝） 何たくらんではりますのんかいなあ。
静） 嫌やわぁ。和枝ちゃん。うち、め以子さんが一所
懸命やってはんの見て、心入れ替えましたんや。
和枝） そもそも、心なんてありましたんかいなあ？
静） 取られんようにだ～いじに隠しとりましてん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静） 糸は３本。
４本は要らん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
源太） お母はんそれ、風読んだんやろ。
め以子） えっ？
源太） ガスも入ったし、給料もだんさん仕切りになっ
て。お前らについた方が得やと踏んだんやろ。
め以子） うち借金だらけだし、取り合うような財産も
ないし。得も損もないと思うんだけど。
源太） そうは思わんから、
10年も嫌がらせし続けとんのやろ。
め以子） 嫌がらせ？
源太） せっせこせっせこ姉さんが貯めた金、ぱ～っ
と使て、着道楽しとんのやろ？
め以子） えっ、ちょ、ちょっと待って。お静さんは嫌が
らせのために、わざと着道楽してるってこと？
源太） いや～知らんでぇ。けど、
そういうことも考えられるんちゃうかって話や。
め以子） そんなこと・・・しないよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
倉田） 何や、おもろなかったか？
初田治（はつだんじ）。
和枝） おもろないのは落語やありまへんわ。
倉田） 何や。何ぞあったんかいな？
和枝） 弟は給料取るようになったら家長気取りで。
芸者上がりは尻馬ん乗って母親面しよるし。
あの非常識な電信柱が来てから、私の調子は
さんざんですわ。
倉田 おっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
め以子） ん～！
源太） おいっ、め以子～！ 忘れもんや。
め以子） ありがとう。ごめんね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
倉田） 何や、肉屋の源太やないか。
和枝） ご存じで？
倉田） うん。天満の商店街の、やんちゃ坊主や。
和枝） へぇ～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
和枝） あれは、肉漬けとりますのん？
トミ） いいえ。人さんのぬか床預かってますねん。
何でも家に置いとかれへんらしゅうて。
和枝） へえ～。何で置いとかりゃしまへんのん？
トミ） きっつい小姑はんがいはるらしゅうて、
ほかされんねんて！
和枝） そんな家、出はったらええのに。
トミ） わてもそう思いますねんけどな、
うちの源太と一緒になったらええって。
和枝） 源太・・・さん？
トミ） もともと、幼なじみらしゅうて、２人でよう一緒に
出かけるし、仲ええんよ～。
和枝） へえ～。
源太） いらっしゃい。
トミ） 源太おかえり。
源太） ただいま。
和枝） そうでっか・・・。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
め以子） ねえ、お父さんとお静さんって、
どういう関係だったの？
悠太郎） ああ、父親がお静さんにえらいこと入れ揚
げて、引かせたんや。
前にも言わんかったっけ？
め以子） お姉さんは、そもそもお父さんが入れ揚げ
たってところが、気に入らなかったのかな？
悠太郎） うん？
め以子） 何か、糸口ないかなって思って。お姉さん
とお静さんが、何とか仲良くなれる。
悠太郎） 世話、かけますねえ。
め以子） いいえ。
ガスのおかげで時間、できましたから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠太郎） 何ですか？ 話って。
和枝） あのなぁ。信じるんも信じへんも、あんたの自
由やけど・・・。
め以子さん、肉屋の男とええ仲みたいやで。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
和枝VS静の戦いが、天敵同士、ハブとマングースの
戦いのようで、そうなると、俄然面白くなってきました。
和枝と非常識な電信柱・め以子相手じゃ、力不足とい
うか、面白みがないので、芸者上がりのお静さんが動
きだしてくれたおかげで、楽しみが増してきた。笑顔の
下で、どんなたくらみが・・・。ガスの実演で、踊りやら
話芸やら、見事な口上手を見せたお静さんですから。
家の事情をペラペラ話すめ以子と、お静の腹黒さを
教える源太。ぬか壺を見つけた和枝の目が光る～！
まあ、普通にありえないから。確か昔は、男女７歳に
して席を～なんてことを言っていたはずのめ以子な
のに、人妻になったら、幼なじみとはいえ、男の元へ
通って人目もはばからず、２人で行動しまくってるし。
状況的には「真っ黒」に見えないこともない状況・・・。
実際、何もなくても、毎日会って仲良くされたら、いい
気持ちはしないかなあと。悠太郎が毎日亜貴子に会
いに行って仲良く話してたら嫌だと思うはずだしねえ。
悠太郎はめ以子を信じることができるのか？
何て、結果は見えすぎてるんで面白みもないのだけ
れど、悠太郎が嫉妬したり悩む姿は見たいかも～ｗ
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～信じるんも信じへんもあんたの自由
大正12年春。
度を増す和枝のいじめに、
ついに堪忍袋の緒が切れた、め以子でしたが、
大量の鯛を、一時に処理しなければならないという、
魚島事件を経て、隅から隅まで、美味しくいただく、
始末の料理を体得。
悠太郎のために、自分のために、
楽しい食卓を作りたいと、
改めて思っため以子でございました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静） これ、ガスで炊いたご飯？
め以子） はい。食べてみて下さい。
悠太郎） いただきます。
静） いただきます。うん。美味しい。
め以子） どうですか？ お姉さん。
和枝） 味は同じでも、マキの方が美味しゅうおす。
手間ひまかかっとるいうありがたみがありま
すさかいな。
静） 手間ひまかけても、
文句ばっかり言うてはるくせに。
和枝） 文句やない。感想や。
静） ガスの見学のお人も、案内せんといかんなあ。
なあ実際のところ、火ぃ付けんのに、手間かから
へん以外にどこがええの？ ガスって。
め以子） 温め直しが楽なので、あったかいものを
あったかく食べられます。それから火加減
を自由にあんばいできますから、失敗が少
なくなるんです。
静） それちゃ～んと説明せなあかんな。
悠太郎） お静さん、張り切ってますねえ。
和枝） そら綺麗なべべ着て人前に立ちたいですも
んなあ。
静） タンスの奥で出番待っとる子がようけおるから
なあ。
和枝） 分不相応にお子さん作り過ぎなんと違いま
すぅ？
め以子） あっ、お、お姉さん、よかったら、実演な
さいませんか？ お姉さんが見事な手さば
きで料理してみせたら、見に来た方・・・
和枝） 見せもんみたいな真似ごめんだす。
め以子） 希子ちゃん、今度やって・・・
和枝） 希子にそんな恥ずかしい事させんとって！
静） ほな、２人でやろか？
め以子） ああ。そう・・・ですね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静） かまどの温度の調節は、手間のかかるもので
ございます。そこで、このガス！ なんと、火加減
を、このひねり一つ、ひねり一つでよろしおます。
ヨシムラ） あ～いい！
静） カラ～ッと揚がって、美味しおすでぇ。
ヨシムラ） 美味しおすえ。
静） め以子さん、
みなさんにこれ、配ってさしあげて。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ヨシムラ） 西門さんからお話もうた時は半信半疑や
ったんですけど、実際見せると説得力ちゃ
いまんな。
静） うちでよければ、いくらでもご協力しますんで、
なんぼでも言うて下さい。
ヨシムラ） ほなまた近いうち相談さしてもらいますよ
って。お家（え）さん。
静） お家さんやなんて、やめて下さい。
老けこみますわ。
ヨシムラ） お家さん。ハハハハハ。
静） あら、おかえり。一番上の娘の和枝です。
和枝～ご挨拶。
和枝） この度は、お世話になりまして。
ヨシムラ） どうも。
め以子） お・・・お姉さん、おかえりなさい。
和枝） 塩まいとき！
め以子） えっ、塩？ まいていいんですか？
後からもったいないとか仰いませんか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠太郎） 僕の今月の給料です。この金は西門の金
です。せやからみんなで、お金の割りふりを
決めたいと思います。いかがでしょうか？
静） ええんちゃうの？ 公平で。
悠太郎） ほな、家長なんで、
僕から取らしてもらいます。
和枝） そんなに取りはんの？
悠太郎） 僕の小遣いと、ガス代の見込みなどで10
円。借金の返済分で10円。更に、食費として
30円いただきます。
和枝） 食費そんなに要りはらしまへんやろ。
悠太郎） 365日、みんなで美味しいものを食べる事
を、この家の最優先事項としたいと思います。
更に、食卓は、め以子も一緒に囲むことにし
ます。
和枝） おなごしが一緒に食べるなんて聞いた事あり
まへんで。
悠太郎） 皆さんの意見を伺いたいんですが。
め以子） あっ、い、今、その事は、いいから。
お金の事だけに。ねっ。
悠太郎） ほな、姉さんとお静さん、
必要な分を言うてください。
和枝） 25円。
静） 10円。
和枝） あんさん、そんなに要りまへんやろ。
何もしてはらへんのに。
静） ほな、うち、ええわ。
和枝） えっ？
悠太郎） ええんですか？
静） 三味線習いに来はる人も増えましたしなあ。
悠太郎） 黙ってツケで買い物もなしですよ。
静） わかってますよって。着道楽は控えまっさ。
和枝） 何たくらんではりますのんかいなあ。
静） 嫌やわぁ。和枝ちゃん。うち、め以子さんが一所
懸命やってはんの見て、心入れ替えましたんや。
和枝） そもそも、心なんてありましたんかいなあ？
静） 取られんようにだ～いじに隠しとりましてん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静） 糸は３本。
４本は要らん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
源太） お母はんそれ、風読んだんやろ。
め以子） えっ？
源太） ガスも入ったし、給料もだんさん仕切りになっ
て。お前らについた方が得やと踏んだんやろ。
め以子） うち借金だらけだし、取り合うような財産も
ないし。得も損もないと思うんだけど。
源太） そうは思わんから、
10年も嫌がらせし続けとんのやろ。
め以子） 嫌がらせ？
源太） せっせこせっせこ姉さんが貯めた金、ぱ～っ
と使て、着道楽しとんのやろ？
め以子） えっ、ちょ、ちょっと待って。お静さんは嫌が
らせのために、わざと着道楽してるってこと？
源太） いや～知らんでぇ。けど、
そういうことも考えられるんちゃうかって話や。
め以子） そんなこと・・・しないよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
倉田） 何や、おもろなかったか？
初田治（はつだんじ）。
和枝） おもろないのは落語やありまへんわ。
倉田） 何や。何ぞあったんかいな？
和枝） 弟は給料取るようになったら家長気取りで。
芸者上がりは尻馬ん乗って母親面しよるし。
あの非常識な電信柱が来てから、私の調子は
さんざんですわ。
倉田 おっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
め以子） ん～！
源太） おいっ、め以子～！ 忘れもんや。
め以子） ありがとう。ごめんね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
倉田） 何や、肉屋の源太やないか。
和枝） ご存じで？
倉田） うん。天満の商店街の、やんちゃ坊主や。
和枝） へぇ～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
和枝） あれは、肉漬けとりますのん？
トミ） いいえ。人さんのぬか床預かってますねん。
何でも家に置いとかれへんらしゅうて。
和枝） へえ～。何で置いとかりゃしまへんのん？
トミ） きっつい小姑はんがいはるらしゅうて、
ほかされんねんて！
和枝） そんな家、出はったらええのに。
トミ） わてもそう思いますねんけどな、
うちの源太と一緒になったらええって。
和枝） 源太・・・さん？
トミ） もともと、幼なじみらしゅうて、２人でよう一緒に
出かけるし、仲ええんよ～。
和枝） へえ～。
源太） いらっしゃい。
トミ） 源太おかえり。
源太） ただいま。
和枝） そうでっか・・・。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
め以子） ねえ、お父さんとお静さんって、
どういう関係だったの？
悠太郎） ああ、父親がお静さんにえらいこと入れ揚
げて、引かせたんや。
前にも言わんかったっけ？
め以子） お姉さんは、そもそもお父さんが入れ揚げ
たってところが、気に入らなかったのかな？
悠太郎） うん？
め以子） 何か、糸口ないかなって思って。お姉さん
とお静さんが、何とか仲良くなれる。
悠太郎） 世話、かけますねえ。
め以子） いいえ。
ガスのおかげで時間、できましたから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠太郎） 何ですか？ 話って。
和枝） あのなぁ。信じるんも信じへんも、あんたの自
由やけど・・・。
め以子さん、肉屋の男とええ仲みたいやで。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
和枝VS静の戦いが、天敵同士、ハブとマングースの
戦いのようで、そうなると、俄然面白くなってきました。
和枝と非常識な電信柱・め以子相手じゃ、力不足とい
うか、面白みがないので、芸者上がりのお静さんが動
きだしてくれたおかげで、楽しみが増してきた。笑顔の
下で、どんなたくらみが・・・。ガスの実演で、踊りやら
話芸やら、見事な口上手を見せたお静さんですから。
家の事情をペラペラ話すめ以子と、お静の腹黒さを
教える源太。ぬか壺を見つけた和枝の目が光る～！
まあ、普通にありえないから。確か昔は、男女７歳に
して席を～なんてことを言っていたはずのめ以子な
のに、人妻になったら、幼なじみとはいえ、男の元へ
通って人目もはばからず、２人で行動しまくってるし。
状況的には「真っ黒」に見えないこともない状況・・・。
実際、何もなくても、毎日会って仲良くされたら、いい
気持ちはしないかなあと。悠太郎が毎日亜貴子に会
いに行って仲良く話してたら嫌だと思うはずだしねえ。
悠太郎はめ以子を信じることができるのか？
何て、結果は見えすぎてるんで面白みもないのだけ
れど、悠太郎が嫉妬したり悩む姿は見たいかも～ｗ
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