グレーテルのかまど (6月7日放送)
はちみつ色のクマのハチミツ
はちみつ色のクマのハチミツ
イギリス生まれの、世界一有名なクマ、プーさん。
そのポテっとしたお腹一杯に詰まっている、大好物
といえば、そう、とろーり甘いハチミツ。プーさんは、
誰よりもハチミツを愛しているんです。こんな風に。
なぜ、世のなかに、ミツバチなんか
いるかっていえばだね、そりゃ、
ミツをこさえるためにきまってるさ。
それで、なぜ、ミツをこさえるかっていえばだね、
そりゃ、ぼくが、たべるためにきまってる。
「クマのプーさん」(石井桃子訳)より
いつも、ハチミツのことばかり考えているプーさん。
今日は、ハチミツ色のクマの物語を通して、ハチミ
ツの魅力を、紐解きましょう。
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ハチミツ色の、クマのプーさんが主人公の物語。
今から、80年以上も前に書かれた、イギリスの
児童文学。世界中で愛されています。
百町森と呼ばれる、広大な森で、少年と動物達
の日常が、20の短編として描かれています。
森の中に家を持ち、人間と同じように暮らす
プーさん。もちろん、主食はハチミツ。
食べるのに夢中で、あらあらこんな風に、
壺に頭を突っ込んで取れなくなってしまった
こともありました。
プーさんは、いつもハチミツを食べては、
笑いを巻き起こすんです。
そうそう、こんな事件も。
ある日の11時のお茶の時間。
うさぎの家で、パンをごちそうになった時のこと。
パンには、ハチミツをつける?
それとも、コンデンス・ミルク?
りょうほう。
欲張りなプーさん。ハチミツも、コンデンス・ミル
クもすっかり食べつくし、帰ろうとしたその時・・・
あ、くるし!
食べ過ぎて、
うさぎの家から出られなくなっちゃった。
どうしてこんなにハチミツが好きなのでしょう?
それはねえ・・・後のお楽しみ。
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クマのプーさんには、実はね、モデルがいたん
です。それは、ある男の子が大切にしていた、
クマのぬいぐるみ。その男の子とは、クリストフ
ァー・ロビン。原作者、ミルンの息子です。
プーさんの好物がハチミツなのも、クリストファ
ーが、動物園のクマにハチミツを与えたことが
あったからとも言われています。
ミルンは、そんな動物に接する息子の姿をヒント
に、純粋無垢な、子供の世界を描こうとしました。
プー、きみね、
世界じゅうでいちばん、
どんなことをするのがすき?
ぼくはいちばん―
(中略)
ハチミツをたべることは、
ずいぶんいいことではありましたが、
たべるよりちょっとまえに、
ほんとにたべているときより、
もっとたのしいときがあります。
でも、プーは、それを
なんと呼んでいいのかわかりません。
「プー横丁にたった家」より
プーさんは、大好物を食べる満足感よりも、
食べる前のワクワクした気持ちこそが、
一番の喜びだと、言いたかったのです。
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イギリスの児童文学を研究する、安達教授。
そんなプーさんたちの純粋さが、
この物語の、本質だと考えています。
(聖心女子大学 教授 安達 まみさん)
自分の子供時代の素晴らしさ、子供時代がか
けがえのない時代である、という事を、物語を
通して、読者達に言いたかったのではないか
なあと思います。同時に、息子の遊びの世界
というのが、ミルンのインスピレーションになり
ましたので、ミルンはおそらく、子供とそういっ
た世界を共有したかった。一緒にその世界に
遊びたかったのかなあと、思います。
ミルンが伝えようとしたのは、あっという間に
過ぎゆく子供時代。その一瞬の輝きです。
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その一つ、
プーさんが、ハチミツを取りに行くお話。
もしかして、あなた、
風船なんてもの、もってないかなあ。
風船、なんにつかうの?
ハチミツ!
なんとプーさん、風船につかまって、空にのぼり、
ミツバチに気づかれないよう、木の上の蜂の巣に
近づきます。
しかし、作戦は失敗。落っこちてしまうんです。
あらら、残念。
でも、大好きなハチミツを求め、
無我夢中になれる時が、最も輝く瞬間なのです。
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こんにちは、コブタ。きみ、なにしてるの?
ぼくね、どんぐりまいてるの。
大きなカシの木になってね、
家のすぐまえのとこに、ドングリがなるようにさ。
じゃ、ぼく、ミツバチの巣を一まい、
ぼくの家のまえにまいとけば、
大きなミツバチの家になるね?
「プー横丁にたった家」より
プーさん、今度はハチを育てるつもりかしら?
ミツバチが、一生の内に集めるハチミツは、わず
か、ティースプーン一杯程度とか。その中には、
150を超える栄養成分が含まれているんですよ。
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旬のハチミツをたっぷり使った、プーさん好みの
スイーツ。しっとり焼き上げた、ハチミツ入りのス
コーンと、森の恵みのフルーツソース。食べる前
のワクワクを、楽しんでみてね。
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1928年、クマのプーさんは、多くのファンに惜しま
れつつ、幕を閉じます。それは、ミルンが、息子ク
リストファーのために決めたことでした。
クリストファーは、学校に入学する時期を迎えて
いました。ただ、無邪気に遊ぶだけの、幼い子供
の世界から卒業させよう。ミルンは、新しい世界
へ、息子を送り出そうとしたのです。
ぼく、もうなにもしないでなんか、
いられなくなっちゃったんだ。
何もしないでいることが、許された森。
でも、学校に行くため、
森の仲間たちとはお別れです。
そして、プーさんとの、最後の約束。
ぼくが、なにもしないでなんかいなくなっても、
ときどき、きみ、ここへきてくれる?
あなたも、ここへきますか?
ああ、くるよ、ほんとに。
プー、ぼく、くるって約束するよ。
プーさんとの再会を匂わせ、
物語は終わります。
この、森での思い出が、
息子の胸に、永遠に息づくように。
プーさんのハチミツ。
それは、子供時代の、一瞬の輝き。
無邪気な心を思い出させてくれる、
スイーツだったのです。
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クマのプーさん、大好きなキャラクターだけど、実は
ちゃんとその物語を読んでいなかったりします。なん
だろう? なぜか、ずっと知っているような、わかった
ような気になってしまうというか、お話を知らなくても、
なんとなく昔から友だちのような、ずっとそこにいるよ
うな、勝手に友だち認定してしまっているような存在、
それが私にとっての、「クマのプーさん」なのでした。
プーさんの好物のハチミツが、それはそれは美味し
そうで、あの、金色に輝く液体は、魔法の食べ物のよ
うに感じられたっけ。でも、実際には、夢の食べ物の
はずのハチミツは、あまり美味しいとは感じられなか
ったのでした。(子供の頃だったから、あまり質のい
いハチミツじゃなかったせいかも?)今では、色んな
花のミツがあって、いろんな味のハチミツがあること
を知って、改めて美味しいと思うようになりましたが。
きっと、はちみつ色のクマさんのハチミツは、特別な
ハチミツで、子供の頃からの、心の中にある夢の味。
プーさんも、ハチミツも、心に必要な存在であり、栄
養なのかもしれません。そう、食べる前のワクワクが
一番楽しいように、プーさんのハチミツを想像してい
るときが一番幸せで、美味しそうに思えて。プーさん
の存在そのものが、私にとっては、無邪気な子供の
心につながる、ワクワクやキラキラしたものなのです。
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