「あまちゃん」第49回～ＥＴ・・・そしてアキは「いろりちゃん」になる

「あまちゃん」 第49回（完全版）

第９週 「おらの大失恋」

ＥＴ・・・そしてアキは「いろりちゃん」になる

アキ）　バカ野郎～～～～！
 

天野アキ、17歳。
生まれて初めての失恋です。

（回想）
種市）　ずぶん、ユイが好ぎなんだ。
　…つうかもうつぎあってる。
　正式につぎあって。

　バリつぎあってる。
　遠距離恋愛だ。
 

考えもしなかった。
種市先輩に、好きな人がいたなんて。
しかも相手は、アキの親友、
ミス北鉄のユイちゃんだなんて。

アキ）　うわ～～～～！

（自転車ごと海に落ちるアキ）

この日の水温、７度です。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜漁協＞



かつ枝）　ほれほれほれ！

　いやいやいやいや…。

（アキの回りにストーブを置き、

 あたためてやる長内たち）

アキ）　（泣）
かつ枝）　ほらほらほらほら自分で拭げ！

花巻）　「E.T.」かよ！
かつ枝）　うん？



花巻）　「自転車で空が飛べるど思った

　か？ 」、という意味の例えツッコミだ。

　笑え。



アキ）　（泣）



かつ枝）　ほら泣いたよ。



夏）　アキ！ 

　アキ、大丈夫か！？ 大丈夫が？

　早く着替えろ！ 風邪ひくぞ！ ほれ！

アキ）　ほっといてけろ！ 

　おらなんて、風邪引いで、
　鼻詰まって、死んじまえばいい！

夏）　何言って…アキ！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜天野家＞

春子）　振られた！？

夏）　んだ。例の…ほれ、潜水土木の。

春子）　えっ種市君！？ 本当に？

　この間デートしたばっかりなのに。

夏）　男と女の事だからな、

　こればっかりは。

春子）　だからってバッカじゃないの。
　海に飛び込んだりするなんて…。

　ねえ、熱は？

夏）　寝てたら下がるべ。

春子）　いやいやちょっと見てくる。

夏）　あ～ちょっとちょっと、

　そっとしておいてやれよ。

春子）　駄目よ。元々暗い子なんだから…。



  春子）　東京で暮らしてた時はね、地味で、

　暗くて、向上心も協調性も存在感も個性

　も華もないパッとしない子だったの！

夏）　よくもまあそうスラスラと…。

春子）　本来は、取扱い注意の子なんです。

　裏と表があるの。何かの拍子にひっくり

　返ってこう裏の顔がまた出てさ、地味で

　暗くて向上心も協調性も存在感も華も…

　やっぱ見てくるわ。  

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜２階の部屋＞

（ベッドに入り布団をかぶるアキ）
春子）　アキ？ あんた、具合どう？ 

　おなかすいてないの？ あのさ、

　ママ今日ずっと起きてるから、
　しゃべりたくなったら呼んで。
（出て行く春子）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜駅舎＞
大吉）　アキちゃん学校休むってよ。
ユイ）　えっ？
大吉）　聞いでねえか？ 風邪だと。

　さっきウニ丼積みに寄ったが、

　出てこねがった。
ユイ）　そっか。

　だから返信返ってこないんだ。
大吉）　まあ、ユイちゃんも気ぃ付けてな。
　いよいよ今週末、お座敷列車だからよ。
ユイ）　はい。
大吉）　まあ、ユイちゃんは海さ

　落ちたりしねえだろうけどよ。
ユイ）　えっ！？
大吉）　え？

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜喫茶リアス＞
美寿々）　失恋か～。甘酸っぺえなあ…。
　私なんかもう…毎日失恋した～い。

（水口を見る美寿々）
水口）　そうですか？



美寿々）　だって、失恋しなきゃ、
　新しい恋は、生まれないじゃん。



春子）　ごめん。という訳で今日

　これであがらせてもらいますね。
　この話、くれぐれもみんなには
　これ（内緒）でね。勉さんもね。



（ドアベル）
ヒロシ）　アキちゃん振られたって

　本当ですか！？



春子）　早えな…。
美寿々）　しかもうれしそう！

　誰から聞いたの？
ヒロシ）　大吉さんから、一斉メールで。



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜天野家＞

（掃除機をかけている夏）

（トレーナーを着たアキが来て、

 ぼんやり玄関へ向かう）
夏）　アキ…。そんな薄着で、どこさ行く？
（上がりがまちに座るアキ）

（アキに半纏をかけてやる夏）

夏）　風邪ひくよ。

　今な、火おこすからな。
（半纏を払いのけるアキ）



夏）　アキ…。アキ！ 

（出て行くアキ）

夏）　アキ！ ほれ！ほれ…。

（半纏を着せる夏）



夏）　中さ入って、温まれ、なっ？

（アキを連れ戻す夏）

夏）　アキ！ 

（また出ていくアキ）

夏）　アキアキ…。
（半纏をアキに着せる夏）
夏）　ほら、なっ、腹減ったか？ 

　おかゆさん食うか？
アキ）　（頷く）
夏）　すぐ…よっこいしょ。
（半纏を脱ぐアキ）
夏）　アキ！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜漁協＞
花巻）　ジェームズブラウンがよ！

（意味が分からず花巻を見る夏たち）
花巻）　まっ、例えツッコミだ。
　わがる奴だけわかればいい。



ちなみにこれです。

（舞台の上でマントを払いのける

 ジェームズ・ブラウン）

かつ枝）　確かに、かなりの重症で

　ある事は、間違いねえべ。

夏）　普段がうるさすぎっから、

　静かでいいんだが。

かつ枝）　しかしあの…種市っていう

　わらしはよ、今どき珍しい好青年だ

　と思ったが、とんだタヌキだな。

弥生）　締めてやんねえとな。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜駅舎＞

ユイ）　待ちなさいよ。

種市）　ユイ。

ユイ）　気安く名前で呼ばないでよ！
　ねえ何したの？

種市）　え？

ユイ）　とぼけないでよ！
　アキちゃん学校休んだでしょう！？

種市）　ああ、風邪だって聞いたけど…。

ユイ）　何で風邪引いたと思う？

種市）　海さ飛び込んだって聞いたけど。

ユイ）　何で海さ飛び込んだと思う？

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（リアスから見ている大吉たち）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜駅舎＞

種市）　若さ？

ユイ）　…んな訳ないじゃん！

吉田）　すいません。ごゆっくりどうぞ。



（リアスへ入る吉田）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜喫茶リアス＞
大吉）　何だ？ 何の騒ぎだ？
吉田）　ユイちゃんが種市締めてます。
美寿々）　なるほど～

　女同士の友情って訳だな。
大吉）　さすが潮騒のメモリーズ！ 

　これで一安心だ。
ヒロシ）　それはどうかな？
大吉）　ん？
ヒロシ）　そんな、友達思い

　じゃないですよ、あいつ。
勉）　いや、ユイちゃんはいい子だよ。



水口）　僕も足立さんと同意見だな。



水口）　芸能界目指すような子は、他人

　のために怒鳴るとか、そういう無駄な

　カロリー使わないと思いますよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜駅舎＞

種市）　だから、もう彼女いるし、
　天野とはつきあえないって

　はっきり言ったよ。

ユイ）　待って。えっ？ 彼女って、誰？

種市）　いや誰って…。

ユイ）　私…？

種市）　ほかにいねえべ。

ユイ）　やだ。まだ付き合ってないよね。

　いやいやいやいやいや…
　ないからないからないから！ 
　いや怖い怖い怖い怖い！
　鳥肌鳥肌鳥肌鳥肌！

種市）　この間つぎあおうって言ったべ。

ユイ）　この間のは予約です！

種市）　予約？

ユイ）　予約っていうか、予告！？

　来週から２人はつきあうでしょう

　っていう！



種市）　来週からつきあうなら

　今週からでも…。

ユイ）　よくない！ 逆になぜ、

　その１週間が待てないかな～！？



種市）　１週間後に彼女ができるって

　わがってて、天野とつきあう訳には

　いかねえ。大事な後輩裏切れねえべ。

ユイ）　結果的に裏切ったじゃん。

種市）　じゃあ、別れんのか。

ユイ）　だからまだつきあって

　ないって言ってんじゃん！！



吉田）　すいませんでした。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜天野家＞

春子）　ただいま～。

（薄暗い板の間で、背中を丸め、

 アキが座っている）
春子）　はあ～よいしょ。
　えっ！？ 何よ、気配消さないでよ。



アキ）　お帰り…。
春子）　おばあちゃんは？
アキ）　…漁協。
春子）　そう。熱は？ 

　…っていうか、何か食べた？
アキ）　おかゆとクラッカー。
春子）　おいで。焼きそば作ってあげる。
（いろりの前へ行くアキ）

春子）　あんたさ、

　ヒロシ君の事笑えないよ。

アキ）　…え？

春子）　ヒロシ君がストーブさんなら、
　あんたはいろりを離れられない、
　い…い…いろりちゃんだよ。



アキ）　ウヒッ。



春子）　アハハッ、やっと笑った。

アキ）　…笑ってねえ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜駅舎＞

（ヒロシが来て、

 一人座っている種市に気づく）
ヒロシ）　よう。
種市）　どうも。
ヒロシ）　おいおいちょ…ちょっと待てよ。
種市）　えっ、何すか？
ヒロシ）　マネージャーとして、いや、

　ファン第１号として、いや、一人の、

　男として…。いや、やっぱり、マネ

　ージャーとして言わせてもらう。
　アキちゃん泣かせるようなこと

　すんじゃねえ。
種市）　お兄さんは関係ないでしょう。
ヒロシ）　お…お兄さん？

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜天野家＞

春子）　美味しい？
アキ）　（頷く）
春子）　つらい時も、悲しい時も、腹は

　減るんだよね。…で、焼きそば食べ

　ると、歯に青のりが付くんだよね。

　早く元気になんなきゃ。
　週末は北鉄のイベントでしょ。

アキ）　やりだぐねえ。

春子）　えっ？

アキ）　お座敷列車どが、無理。
　歌ったり踊ったり、

　今そんな気分じゃねえ。

春子）　そっか。まあ、無理にやる事で

　もないしね。元々ママは反対だしね。

　うん、気分が乗らないなら、いいよ。

　やめちゃえば？ 

　でもあれだよね。楽しみにしてる人、
　いっぱいいるんだろうね。

アキ）　種市先輩さ、告白した。

春子）　うん。

アキ）　遠距離でもいいがら、
　おらとつぎあってけろって。

春子）　うん。

アキ）　そしたら…「ほかに好きな女がい

　る」って言われだ。ずっと前がら…おら

　と知り合うずっと前から好きだった女だ

　って。もうつきあってるって。

春子）　…誰？ 

（戸が開く音）

（玄関を見る春子）

春子）　ユイちゃん…。
 

アキ）　んだ。

　だから、お座敷列車さ乗りだぐねえ。
（アキに合図を送る春子）

（玄関を見るアキ）

（ユイが立っている）

（驚き、ユイを見つめるアキ）



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

アキが振られたことを一斉メールする大吉って！
もう、おっさんデリカシーなさすぎ。ありえないっ！

そして、もう一人女心がわかっていない男、種市。
まあ、わかるけどね、君の気持ちもわかるけどさ、
先走りすぎというか、わかってないというか、わか
らないってのもわかるけど・・・。そういう、男と女
のすれ違い、勘違いが青春にはつきものだから。
「まだ付き合ってねーべ！」ってツッコミは、ユイ
本人がしてくれたけれど、「まだ」と「もう」の違い
は天と地ほどに違うこと。予定も予告も、それは
あくまで「未定」のことであること。その重要性が、
種市先輩にはまったく伝わっていなかった・・・。

好きだと先に言ったもん勝ちということはないと
思うし、結局は、それぞれの気持ち次第の問題
だと思うけど、説明の順番というか、事実関係は
正確じゃないとねえ・・・「もう」付き合ってるのか、
「まだ」付き合っていないのかは、とっても重要！
でも、そういうことを上手くやれないのも若さなん
だよね～とも思う。気持ちは「モノ」じゃないから。
アキとユイが親友同士だからって、種市先輩が
ユイを好きだという気持ちは変えられないし。そ
の気持ちもまた尊重されていいと思うし。なんて
大人は思うけど。それぞれ泣いて怒って、落ち
込んで、暴れていいと思うよ～。青春だものっ！

空飛ぶＥＴから、囲炉裏ちゃんへ。地味で暗くて
向上心も協調性も存在感も個性も華もない・・・
裏のアキに戻ってしまうのか？ と続くのでした。


2015年の再放送時の感想はこちら↓
あまちゃん日記（49）～第９週「おらの大失恋」

2023年の再放送時の感想はこちら↓
第49回～第９週「おらの大失恋」

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