池波正太郎のホットケーキ | 日々のダダ漏れ

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私はコーヒー派!


食後は、大人になってからは、コーヒーを選びます。胃腸の
具合が悪い時以外はコーヒー。最初は、なんとなくコーヒー
を飲むのが大人っぽい気がして、好きじゃなくてもコーヒーを
飲んでいた時期もあったけれど、今では、香りも好きだし、味
も好き。甘いスイーツのお供にはコーヒーが欠かせません♪
大好きなホットケーキやパンケーキにも、もちろんコーヒー!


グレーテルのかまど (アンコール放送)
池波正太郎のホットケーキ



「剣客商売」などの時代小説を生みだし、食通としても知られ
る作家・池波正太郎。池波が生涯愛したスイーツが「ホットケ
ーキ」 である。卵とバターの香りがする「たとえようもなくハイ
カラな味」 と称したそれは、父の記憶の味。幼いころ父は母
と離婚し、その後数えるほどしか会わなかった。そんな父が
食べさせてくれたホットケーキは、池波にとってどんな味だっ
たのか。ふかふかで和の香り漂う池波流ホットケーキのレシ
ピも紹介。

**********

幼かった私の、正月のたのしみは、先ず、この立版古だ
った。なぜなら、父が年末から新年にかけての休みに、
立版古を造ってくれたからである。  
 エッセイ「立版古」より



絵を切って立体的に組み立てるおもちゃ、立版古。そこに
書かれた歴史や物語を語ってくれる父が、幼い池波さんは
大好きでした。

後年、私が劇作家となった遠因は、この幼児体験にある
のかもしれない。

**********


映画を観てから父が私に 「何が食べたい」 と尋いた。
そこで「ホットケーキ」というや、父が「そうか。それなら、
ちょうどいい」と、電車通りを向う側へわたると、そこに
「万惣」があった。

「へえ。果物屋にホットケーキがあるの?」「あるどこ
のさわぎじゃない。万惣のホットケーキは天下一品だ」
 「むかしの味」より 




卵とバターの香りがする焼きたてのホットケーキ。

香りのよいシロップをたっぷりとかけまわして食べ
る旨さは、たとえようもなく、ハイカラな味がした。

 「ル・パスタン」より

のちにこの日の思い出を絵に残した池波さん。それ
は、心に強く刻まれた、「記憶の味」だったのです。


**********

27歳で結婚。母を引き取り、3人暮らしを始めた池波
さん。作家になってからもホットケーキを好み、ちょっ
と変わった食べ方がお気に入りでした。

ホット・ケーキの間へ生焼けのベーコンをはさみ、
シロップをかけて朝に食べるのは、大好きである。
 「食卓の情景」より



旅先のホテルでの朝食はこれが定番でした。そして
もう一つ好きだったのは老舗ホテルの小さなホットケ
ーキ。一口で食べられるのが気に入り、自宅でも真
似て作らせたほどでした。


このホットケーキを一人応接間で頬張っていた池波さ
ん。実は、家でとる食事はすべて、こうして一人きりで
食べていたといいます。妻と母は台所の脇で食事。40
年間自宅で食卓を共に囲むことはありませんでした。
そのこだわりには、かつて父と共に。ホットケーキを食
ベた時の記憶が、影響していたのかもしれません。


離婚したからといって、父も母も幸福になったとは
おもえなかった。(略)
なぜ大人たちは、自分からもとめて不幸になるの
だろうと思った。  「ル・パスタン」より


池波さんが、家庭であえて一人食事をとっていたのは、
妻と母の揉め事をやめさせる為の、彼流の工夫でした。


人それぞれに、わが「巣づくり」に努力しているわけだ
ろうが、私の場合は、母と家内の「共同の敵」となるこ
とによって、姑と嫁を接近せしめた。叫び、怒鳴り、叱
り、脅し、全力をつくして「悪者」となったのである。
 「食卓の情景」より

生涯、たった一人で食卓に向かう。そこには、自分の
家族を壊したくないという強い想いがあったのです。


**********

ホットケーキとパンケーキ、この二つ、材料は同じ。
日本では、厚めのものをホットケーキ、薄めのもの
をパンケーキと呼ぶことが多いそう。世界には、そ
んなパンケーキの仲間がたくさんあります。

☆ ロシア 「ブリヌイ」


いくらをパンケーキ風の生地で巻いて食べるのが
ロシアの定番。

☆ オーストラリア 「カイザーシュマーレン」


卵白を加えて、食感はふんわり。砂糖をふりかけ
ても美味しいんだって。

☆ インドネシア 「スラビ」


生地に混ぜ込んだココナツの風味がたまらない、
屋台で人気のおやつ。

**********

作家・池波正太郎の父であることを隠し、一人養老院
で暮らしていた富治郎。亡くなるまで、息子と撮った写
真を大切に持っていたといいます。


その後、人気作家となった池波さんの中で、失った
父の存在は、消えることなく大きくなっていきました。


それにつけても、私が年毎に、父に似てくるのに
は、我ながらおどろいている。(略)
酒は父ほどではないにせよ、一日も欠かせぬし、
几帳面でいながら怠け者のところなぞ、そっくり
だとおもう。体つきもよく似てきた。

 「私の中の日本人ー池波富治郎ー」より


あのホットケーキを口にするたび、
よみがえるのは、父の姿。


万惣のフルーツパーラーで、ホットケーキやフルーツ
カクテルなどを口にしながら、わずかに、むかしの面
影をとどめている須田町の交叉点の風景をながめる
とき、私の脳裡に浮かびあがってくるのは、二十二年
前に死去した父の顔や姿だ。父と母と離婚してから、
ついに再婚をしなかった。


ホットケーキ、それは池波さんにとって、切なくて大切
な、父の記憶がつまった、特別なスイーツでした。

**********

家庭を壊したくないからと、生涯たったひとりで食事を
することを選んだ池波さんというのは、ずいぶん「男」
の考え方というか、幼少時のトラウマに支配されてしま
ていた人なんだなあというのが、一番の感想。食事こ
そ、「家族の象徴」のようなものなのに、家族的な行為
を放棄して向き合うことから逃げてしまったような・・・。
こどもができていたら、どうしていたのかなと思ったり。
少しだけ勇気を出して、家族を信じて、一緒に食卓を
囲んでほしかったなあと。家族と一緒に食事をする楽
しさを味わってほしかったなあと。ずっと一人でいた父
親のことを思っていたからなのかもしれないけれども、
それじゃあちょっと寂しいというか、悲しいなあと。

「記憶の味」・・・いつまでも覚えている味って、子供の
頃の幸せな味の記憶につながるような。単純に、うれ
しかったり、楽しかったり、美味しくてニコニコしていた
時間の記憶。それを思い出させてくれる味なのかも。

家庭で作れるスイーツなのに、ふわふわで、ほっくり
していて、その出来上がりにいつもワクワクしてしまう
スイーツ。それが、私にとってのホットケーキです♪


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ホットケーキパーラー Little Tree (リトル・ツリー)

 東京都世田谷区松原6-1-11
 (梅ヶ丘駅より徒歩2分、赤堤通りぞい)
 営業時間 :(平日) 11時~19時
        (土日祝) 11時~18時
 定休日 :毎週木(ツリー)曜日
        第2・第4水曜日
 (ブログ) http://ameblo.jp/littletree-hotcake/


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