【Pi坊の音楽塾】公演中止って本当に大変なんです!音響セッティングの舞台裏をフィールドワーク | Pi坊日記ブログ『舞うごつよかばい』

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作曲家・シンガーソングライター・ゴスペル指導・ヴォイストレーナー・食いしん坊
音楽家のPi坊による日々のあれこれや、音楽のお仕事についてのエッセイブログです。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、様々なイベント、音楽公演や舞台が中止となっています。

僕が音楽監督を務めるミュージカルも、2020年は公演中止が決まりました。

主催者は、チラシ印刷に始まり各所への配布告知、チケット販売からの払い戻し、スタッフ確保に伴う人件費の支払い(収入は無いのに!)、公演時のお弁当のキャンセル、劇場のキャンセル費など、数え切れないほどの残務、そして赤字が残ります。

 

今日は、その中でもミュージカルの現場の音響スタッフさんは、どれだけ果てしなく大変な作業をやっているかをフィールドワークで見ていこうと思います。

 

PAとは、Public Adressの略で、音響機器のことを指します。

音響スタッフさんのことを、「PAさん」と言ったりもします。

これは、卓(ミキサー)と言って、簡単に言うと入力された複数の音声を適切なバランスにまとめ、お客にとって聞きやすい音質音量に調整する機材です。

 

ミュージカルの場合は、これに効果音を出す機材もセッティングされます。

裏側のコードの数、すごいでしょう!!
夜店の当たりくじ顔負けの数です。

これを入力、出力するだけでも大変な手間なのです。

 


そのコードたちは、渓流のせせらぎようにさらさら流れ・・このように客席這わせてあるのをご覧になったことはありませんか?

 

舞台上には、キャストの声を拡大して外へと届けるため、このようなフットマイクがセットされます。

マイクとは思えない薄い形状のものですが、指向性が広く、舞台上のキャストのセリフを幅広く集音してくれます。

バウンダリーマイクとも呼びますね。

 

ステージの昇降に使う舞台用階段を使う場合には、その階段周りにも集音マイクがセットされます。

スタッフさんの細かい仕事によって、キャストの声はお客様にまんべんなく届くようになっているです。

 

こちらは、生演奏を担当するバンドさんのブース。

客席をいくつか潰して、舞台が見渡せるように作られます。

 

電子楽器のキーボードやベースなどはコード(ライン)で繋がっています。

 

マイクを繋げない楽器、例えばサックスやトランペットのような管楽器はこのようにマイクで直接拾われます。

 

演奏中でも、自分の鳴らしている音が耳に入るように、通称「返し」と呼ばれるモニタースピーカーも設置されます。

 

ドラムは、逆に会場に響きすぎるので、音量を軽減するためにアクリルボードが設置されます。

これはお手伝いで僕が運んだのですが、軽そうに見えて超重い!

ただ、これでもかなりかなーり小さい部類のものだそうです。

 

舞台裏を見てみましょう。

これは、ピンマイクと呼ばれ、服の襟や口元に直接つけるマイクのことです。

ミュージカルの現場では、ソロの歌唱があるキャストや、重要なセリフを言う人が優先的に付けます。

 

ピンマイクは、数に限りがあるので、公演中もキャストからキャストへくるくると目まぐるしくローテーションさせねばなりません。

何番のピンマイクをどのシーンで付けるかを記載した表のことを、マイク香盤表(こうばんひょう)と言います。

この香盤表を作るのは、本当にたいそうめっぽう骨の折れる作業で、キャストの名前、顔、セリフ、動きを全て把握しているスタッフでないと決して作ることは出来ません。

把握していたとしても、

「ここで何番を使うと、ここのシーンでこのキャストにピンを付けられない・・・ああーどうしよう・・・」

と、まるで巨大なジグソーパズルに挑むばりに神経をすり減らします。

僕はハゲました・・・元からじゃないやい!(笑)

 

ピンマイクは電波で受信され、先ほどのPAの卓へと送られて、声量や音質が調整されるのです。
まるで、銀河鉄道999の機関車部分のようではありませんか。
なぁ、鉄郎や!

 

この日(2020年2月16日に撮影しました)僕は、影コーラスと行って、舞台袖からキャストのアンサンブルの歌をアシストするという仕事をしていました。

場末のBarの入り口ではありません、こちらが影コーラスのブースです。

そして、アタイがBarのママ、ピーボ子よ。


マイクはもちろんのこと、譜面台やモニタースピーカーなども、きちんとセッティングしてくれます。

プロの気配りは、こんな場末の影ブースにまで及ぶのです。

 

音響さんの仕事ひとつとっても、これでも未だ全然一部だけ。

そこへ照明さんも同じように繊細かつ丁寧な仕事が入りますし、舞台監督をはじめとする舞台袖の中の(お客様から見えない)スタッフらだって、幾度となく打ち合わせを重ねて、ようやくの公演なのです。

費やした時間と労力はいかばかりでしょうか。


規模は小さいとて、街中のライブハウスだって、上記とやっている内容は同じこと。

小さくたって、音響を作り照明を作り打ち合わせを重ね、そして(例えキャンセルになろうとも)プロの技術に対する単価というのは、必ず発生するのです。


「ライブハウスなんか必要ない!芸術なんかやっている場合じゃない!」

などと、世間様からの心ない声もあります。

別に今の今、何がなんでも開催したいということはありません。

ただ、このような場所で仕事をし、このような場所で生きている人たちがたくさんいて、コロナに寄って苦しんでいるんだということも知っておいてください。

 

ゴールデンウイークに外に遊びに行きたい気持ち、湘南に行きたい気持ち、パチンコに行きたい気持ち、もちろんわかります。

ただ、そういう方が一人でも増えれば増えるほど、こういった専門職の方々の仕事がまた1日また1日と失われていき、ややもすれば長年培った技術さえも消え去ってしまうかもしれないと認識していただけたら幸いです。

 

音楽家『Pi坊(ぴーぼう)』
熊本市出身、横浜市在住。
作曲家・シンガーソングライター・ヴォイストレーナー。
横浜市民こどもミュージカル音楽監督。

ゴスペル指導者として、NHK学園(国立P&Pゴスペルクワイヤ・市川Vosky Of Soul)・シニアゴスペル横浜ジーバーズ・今宿&笹野台サンライズゴスペル、元町いぶし銀ゴスペル・いそごすぺるの講師を務める。

自身のコンサートや演奏活動も精力的に行う傍ら、ミュージカルの歌唱指導、ワークショップの開催など幅広い分野でマルチに活動中。

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