小椋佳さんの「もういいかい」と対になって発表されたのが、林部智史さんの「まあだだよ」というアルバムです。
ラストの「まあだだよ」を除いて、全曲小椋さんの書き下ろし。更にそのラスト曲は、小椋さんリスペクトで林部さんがお作りになったとのこと。
若い世代の歌からいつの間にか遠のいていた私は、「もういいかい」の情報が入るまで林部智史さんのお名前を存じ上げませんでした。ただ、1度テレビでチラッと、女性のお客さんがみんな泣くので「泣き歌の貴公子」と呼ばれている人がいる、というのを見た記憶があり、この人がどうもそうらしい・・・とは思いましたが。
小椋さんは、自分の声と似ていて歌が上手いので、後継者にと考えてらっしゃるようですが。
・・・似てるかなぁ・・・私にとってはどうなんだろう?・・・と思って、他の若い世代の歌を聴き、また林部さんの歌をいろいろ聴いてみました。オリジナルも、どちらかといえばフォーク系みたい。カバー曲は中島みゆきさんの「糸」、スターダストレビューの「木蓮の涙」を始め・・・。
「希望」、岸洋子さんの歌。岸洋子さんは、私、若い頃にシャンソンも聴いてたので、アルバムも数枚持っていました。
「駅」・・・うーん、確かに誰かの歌で流行ってたんだけど、思い出せません。
「奇跡 ー大きな愛のようにー」・・・これは、さだまさしさんの歌で。さださんと同等かそれ以上とお見受けします。
ふとディスクグラフィを眺めたら、抒情歌も持ち歌になっているようで・・・。
琴線歌
~はやしべさとし 叙情歌を道づれに~
この中に「青葉城恋唄」「知床旅情」「遠くへ行きたい」がある!これはぜひとも聴かなくてはと思いました。ところが、このアルバム、発売がもう2年前でファンクラブでも手に入らない。諦めかけていたところ、ライブ配信時に通販で売られているのを見つけて、聴くことが叶いました。
他に「卒業写真」もあるのですが、フォークソングが「抒情歌」と同じに扱われる日も、もしかしたらそう遠くないのかもしれない。
「青葉城恋唄」・・・私にとっては1つの指標なんです。この歌、実はドミソ・ドファラ・シレソという基本的なコード進行で出来ていて、1番2番3番それぞれ楽譜通りにしか歌わないと単調になるという点で難しい歌なんです。さらに、私は20年前までは作者のファンでもあったため、思い入れが強い。今では、その人さえ失ってしまっている微妙な『間』が私は好きだったんです。
それを林部さんの歌で聴いて私がどう感じるかということは、私にとっては重要な鍵になる。また、聴きながら、ダークダックスの歌とも比べてました。
ダークダックスと同じように譜面通りではあったけれども、決して嫌らしくはない・・・。それが私の印象です。
今後「この人ならファンになっても良いかな」と思うのは、歌選びのセンスも含めてだろう・・・と、今は考えています。林部さんのことは、そういう意味で分岐点になっているのかもしれない。
オリジナル作品と共に抒情歌も歌ってくれる歌い手は、そうそうはいなそうですし。
若い頃はそんなこと別に考えてなくて、小椋佳さんも「心の襞」の歌声で本格的に聴き始めたのですが。(他のたくさんの歌の作者であったことは、後からつくづく噛みしめて・・・。聴いてみたら、流行らせた歌い手さん達より、小椋さんのほうが良いじゃん!となった。)
で、「まあだだよ」を改めて聴き直す。
・・・良いじゃないかー・・・。
小椋さんがぜひ自分の歌をと望む気持ちが分かろうというもの・・・。でも、できれば、小椋さんの「もういいかい」のほうにも、もう2、3曲「まあだだよ」、の歌を入れて欲しかったなぁ。あちこちの映画の主題歌ばかりではなくて。そうしたら、アルバム全体の雰囲気がずいぶん変わったのではなかろうか。
ただ、これからも大切なのは林部さんや周りの方々の『作品を選ぶ目』『歌い方も突き詰めていく感覚』です。私はその点をこれから見ていきたいですね。