「何でしょう?」

 

「私達で駆け落ちするの」

 

「は?何言ってるんです?」

 

「私達だけの世界味わいたいの」ははぁ、拓実君の言った駆け落ちに行っちゃったんだ、裕美さんは。でも相手がどうして私なのか?小田島さんていうBFがいるのに。

 

「その前に裕美さんのお父さんと小田島さん会わせることが先決じゃないですか?」

 

「ううん、もう無理なのわかってる、だからあなたと二人で逃げるの」

 

「気を長く待ってればお父さんも折れてくれますよ」

 

「無理よ、あの人は私の言うことなんてちっとも聞いてくれない、そんな人に期待すること自体間違ってる」

 

「酷いお父さんと思いますが、親なんですから、裕美さんのことも気になるんじゃないですか?」

 

「翔ちゃんにはわかんないよね、ウチの家庭は冷え切ってる、昨日父に挨拶するって言ったけど、元々が無理なことだから私はするつもりないよ。おしまいの家庭に今更何しても無駄だし」

 

「それで裕美さん納得できますか?」

 

「納得するしなかいよ、お互いが暗黙の了解めいたもの持ってるんだし、だからあなたと駆け落ちするの」

 

「本当におしまいですか?」私の返事はまだ保留だ。裕美さんと駆け落ちなんて失敗するに決まってるし、父の悲しむ表情思い出すと踏ん切れなかった。

 

「ええ、おしまい、それでいいじゃん、それと無理な結婚はお断り」

 

「相手の方がハンサムでもですか?」

 

「あのね、見ず知らずの人簡単に好きになれる?」

 

「そうですね、確かに」

 

「だから駆け落ちするの、私が卒業するあたりにね」

 

「で、どこに行くんです」

 

「決めてない、それこそ翔ちゃんの寮とかになるかな?」

 

「近いですね、もっと遠くかなと思ってました」

 

「私だけじゃお金ないしね」

 

「あぁそうか、お金はお父さんお母さんが握ってるか」

 

「そういうこと、翔ちゃんがダメなら兄のところかな、ずいぶんと会ってないけど元気なのかな?」

 

「本郷奏多でしたっけ?」

 

「うん、よく覚えてるね」

 

「まだ会ったこともないんですけどその俳優結構好きなんで」

 

「へぇ、翔ちゃんも変わった人だね、兄の恋人が翔ちゃんだったら大喜びだったろうにな」

 

「会ったことない人急に好きになれませんよ」

 

「だから私の結婚話もわかるよね?」

 

「わかります、裕美さんを悲しませるなんて酷い親父さんですね」

 

「だから父とはもう仲良くなれないの」

 

「わかりました、裕美さん、そろそろ身体洗いましょう、あ、先に頭か」

 

「翔ちゃん先にしなよ、私は後でいい」

 

「わかりました」お風呂から出て頭洗う。でもやっぱり私じゃなく小田島さんが先決に思い、「裕美さん、やっぱり駆け落ちは小田島さんとお願いします」と言うと、

 

「イヤ、私は翔ちゃんがいいの、あなたが私の彼氏だもの」

 

「なら小田島さんはどうするんです?」

 

「どうもしない、ほっとく」